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最強無敵のユーミルファナー  作者: 王国民
1章 英雄誕生
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試験開始

 冬の寒さも厳しくなった頃、レオンハルトたちは試験の会場である王立養成学校に来ていた。

 同行者は2人の母親と、護衛のダレンにお世話メイドのピアの4人だ。

 父親2人は政務で忙しくて来られなかった。部下たちと一悶着(ひともんちゃく)あったものの、(おおむ)ね納得して仕事に出掛けて行った。

 駄々を捏ねるような父親の姿が、2人の子どもたちにはカッコ悪く映ったのだ。

 子どもたちのビミョ~な目を見た瞬間に、自分の城まで飛んで行った。


「おっきい学校だね~!? オレの家よりスゴく大きいよ」


 王都の大きさにも驚いていたが、学校も王立だけあってかなり大きい。

 リンフォード王国の未来を担う人材を育成する学校なので、金を掛けたらしい。


「デカイですよ。王都の20分の1ほどの面積を使っているそうなので」


 ダレンの説明に、レオンハルトとフィーリアは目を丸くしている。


「試験がんばろうね、レオ君!」


 この日のためにフィーリアも努力したので、前の日から随分と張り切っていた。


「オレたちなら大丈夫だ! 2人で一緒に学校に行くんだから!」


 レオンハルトの力強さが、繋いだ手からフィーリアに伝わり元気付けた。


「レオ! 本気を見せなさい! みんながビックリするからね」


「イヤイヤ、姉御。魔法剣(アレ)だけは隠さないと。若が強くなるまでバレたら困りますよ」


 息子以上にやる気を見せるセレスティーナを(たしな)めるダレン。


 2人の家族と使用人たちで話し合って決めたことだ。

 レオンハルトが強くなり、自分の力だけで他者の干渉をはね除けられるようになるまでは、人前で使わないようにする。

 もしバレた場合は魔剣の能力ということにして誤魔化すつもりだ。

 そのため、レオンハルトは魔剣ストレイヴを父から貰っていた。

 冒険者時代にさまざまな宝を手に入れたエルネストの、自慢のコレクションの1つである。


 魔剣はブロードソードタイプで、まだレオンハルトには大きい。

 背中に背負っているが、しゃがむと地面に当たってしまう。

 貰ってからは、大喜びで肌身離さず持ち歩いていたので、食事時などに老執事のロベルトに叱られている。


「そう言えばそうね! 私の息子の天才ぶりを隠さないといけないのは嫌だけど」


 冒険者の頃に魔法姫セレスと(うた)われていただけあって、ツンとした表情は未だに魅力的だ。


「はしゃぎ過ぎよ、セレス?」


 ニコニコしながらも妙な迫力で迫るフィーリアの母、エステルの雰囲気に周囲がザワついた。


「ぼっちゃま。このピアが応援していますから頑張って誤魔化してくださいね」


 普段から2人の奥様方と接しているだけあり、ピアは呑気にレオンハルトの応援をする。

 レオンハルトなら誤魔化しながらも合格すると思っているのか、誤魔化すほうを頑張るらしい。


「心配ないよ! ピアはオレを信じて待ってて」


「はい! ピアはぼっちゃまのことを誰より信じていますよ~」


 メイドとは思えない馴れ馴れしさだが、レオンハルトたちの家ではこれが普通だ。


 周囲から浮いていたが、滞りなく試験会場まで到着した。今日の参加人数は200人ほどだ。

 試験自体は受付可能な年齢ならいつでも受けられるが、大抵は入学式がある、春の1月より前の、冬の1月から3月に受けに来る。


 保護者と別れた6歳から8歳の子どもたちが、巨大な教室の机に座り、試験開始を待っていた。

 やはり8歳が最も多く、年齢が下がるにつれて少なくなっていく。

 レオンハルトたちも案内に従い、席に着く。隣同士だが席の間隔は2メートルは離れている。


「レオ君、ドキドキするね? どうしよう」


「オレとリアなら大丈夫って言ったろ? あんなに勉強したんだから2人で入学できるさ!」


 励ますレオンハルトも、フィーリアと少し離れているせいか不安げだ。

 2人は試験開始まで、他愛ない話で緊張を誤魔化しながら、卒業してからの冒険を話し合った。


 試験内容は筆記試験から始まる。

 文字が書けるのが大前提の条件なのだ。

 一般常識や計算などが問題に出る。

 この試験だけでは決まらず、受ける科によって違う実地試験の成績が良ければ、筆記試験の成績が低くても入学可能な場合もある。


 実地試験は騎士科なら武術や礼儀作法を見られ、文官科なら更に難しい筆記試験を受けなければならない。

 魔法科は古代魔法文字の習熟度と魔力操作を試験される。

 商業科なら物価の相場などの筆記試験、練金科ならポーションを実際に作る。


 レオンハルトとフィーリアが受ける冒険科では、薬草の知識や魔物の知識を試される。

 そのあとに、実際に試験官と戦って戦いの実力を見る。

 戦う力のない者は、それぞれパーティーを組んだ時の役割に沿った試験を受ける。

 フィーリアの場合は神聖魔法の知識と魔力操作を試験される。

 現状で魔法を使える者は、まず居ないのでフィーリアが高い評価を受けるのは確実だ。


「さて、諸君! 試験開始の時間だ! 遅刻した者は今回は失格となる! 難しい試験だが成績だけでは決まらないので頑張ってくれたまえ!」


 試験官の文官のような格好をした年嵩(としかさ)の男が試験内容を説明する。

 他の子どもたちも、特に8歳で(あと)がない子どもたちの緊張がひどい。

 レオンハルトたちは、お互いの目を見詰めて1つ頷くと、配られたテスト用紙に視線を移した。


「全員受け取ったな? 試験開始だ!」


 一斉に用紙を捲る音が響き、インク壷を開けた。

 レオンハルトたちの初めての試験が始まった。

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