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最強無敵のユーミルファナー  作者: 王国民
1章 英雄誕生
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初めての冒険

 冒険者ギルドを出たレオンハルトとフィーリアの2人は、意気揚々と街の外に駆け出そうとする。

 それを慌てて止めるダレンとピア。2人の腕の中に収まったレオンハルトたちは、不思議そうな表情で見つめる。


「ぼっちゃま、リア様。お外に出る前に準備をしましょう」


 ピアの背中のリュックには、弁当や着替えなどが入っているが回復アイテムなどがない。


「若、お嬢。請ける仕事によって必要な物が違ってきますから、依頼を請けてから必要な物を買い足すんです。例えば必要な食料は距離などで変わりますし、場所によっては厄介な状態異常を引き起こす魔物も居ます」


 ダレンの説明を真剣な顔で聴いている。


「今回はゴブリン退治ですから大した物は要りませんけど、ゴブリンの好物のネズミの肉や、魔物を引き寄せる魔誘香(まゆうこう)を持って行くと便利ですよ」


 ゴブリンは知能が低いので、ネズミの肉を放ってやれば飛び付いている間に倒せる。

 魔誘香は魔物を無差別に集めるので使い所が難しいが、お目当ての魔物がくれば時間短縮になる。


「鼻の利かない魔物には効果は薄いですけどね」


 スライムなどはそもそも鼻がないし、知能の高い魔物は警戒してやって来ない。



 魔道具店では魔法の回復薬や、錬金術に必要な材料も売っている。

 そこでポーションなどを説明するダレンに、熱心な様子でアレコレ(たず)ねるレオンハルト。


「この青いのがポーション? ……こっちのピンクのはリアのかみの色といっしょでキレイだね!」


 レオンハルトが綺麗と誉めると、フィーリアが真っ赤になる。


「レオ君、はずかしいよぅ……2人きりの時に言ってほしいな」


 女の子はマセている。


「若、青いのが傷、ピンク色は魔力回復、黄色いのが万能薬です。普通の薬は薬屋で売ってるんで、お金のない人はそっちに行きますね」


 普通の薬と違うのは即効性だ。

 ポーションだと瞬時に回復するし、傷の種類も気にしなくていい。

 万能薬も毒の種類や症状を気にせず使えるので高くなる。錬金術で作るので魔道具扱いだ。

 キャンプや生活に使える魔道具もあるが、1度に説明しても子どもには理解できないので、少しずつ教えることにしたらしい。


 どのみち王立養成学校で習うことなので、焦って覚える必要がないのだ。

 入学試験は入学可能な年齢ならいつでも受けられるので、勉強が充分だと感じたら受ければいい。入学自体は春からだ。



「それではぼっちゃま、リア様。準備は終わりましたので出発しましょうね」


「やった~! 冒険だぁぁぁ!!」


「えへへ。レオ君がうれしいとリアもうれしいな」


 店から出ると、ピアが出発の合図を出す。

 ようやくの出発にレオンハルトは飛び上がって喜んだ。

 フィーリアもそんなレオンハルトをニコニコしながら見ている。



 街の正門では行商人がチェックを受けていた。

 禁制の品や危険物のチェックは厳しく取り締まられて時間が掛かる。

 旅人や冒険者は身分証を見せて、簡単な荷物チェックだけで通れる。

 なので、正門には男性兵士と女性兵士が詰めているのだ。指名手配犯は当然捕まる。


 レオンハルトたちは有名な家柄なので、ノーチェックで通れる。

 エルネストがこの街の領主に近い扱いなので、優遇されている。

 仕事は武術指南だが、この辺りは領主が決まって()らず、代官が国から派遣されているので相談役も兼ねているのだ。


 領主が決まっていない理由は、国王がエルネストを指名したのだが断られたからだ。

 しかし国王は諦めていないので、王都に行くたびに勧誘されている。

 国としても、戦争が終わって数年しか経っていないため、敵国との国境には強力な味方を置きたいのだ。

 他の貴族も危険な場所の守備には就きたくないだろう。

 ザッカート王国は賠償金を払い終わり、交易が盛んなので実入りは大きいが危険も大きい。


「街の外なんて初めて見るよ! 街よりスゴく広いんだね!?」


 門から出たレオンハルトは、初めて見た外の景色に大興奮で走り回る。


「いいニオイがする~」


 フィーリアは風が運ぶ花の香りを、目を閉じて嗅いでいる。

 猫耳みたいなリボンが揺れて楽しそうだ。

 すれ違う行商人や旅人、冒険者たちも微笑ましく見ていた。

 冒険者は自分の初めての冒険を思い出しているのか、懐かしむような視線を向ける。


「それじゃ若、お嬢。森に向かいましょうか? 森も初めてでしょう?」


「あの、木がいっぱいある所だね!?」


「リスとかウサギがみたいです!」


 レオンハルトは探険に、フィーリアは可愛い小動物に興味があるらしい。

 走り出そうとする2人の手をピアが繋ぎ、ダレンが先導する。


 道を外れ森に入ると、レオンハルトとフィーリアは木洩れ日に目を奪われた。

 見上げても天辺(てっぺん)が見えない木が立ち並び、深緑色の葉の間から(こぼ)れる陽光は身体を暖め、暗い森に光をもたらしてくれる。

 その光を浴びて育つ植物が、森の命を育んでいるのだ。

 小動物が食べ、それを肉食獣が食べる。

 薬草などは人間を怪我や病気から守ってくれる。

 2人はその美しい光景に圧倒されて、いつの間にか手を繋いでいた。


「自然ってスゴいんだね」


「……きれい……」


 2人は、もっともっといろんな景色を見たいと思い、改めて冒険者を夢見た。

 そのキラキラした幼い瞳に未来を映し、冒険に想いを馳せた。


 そんなレオンハルトたちを邪魔しないように見守るピアは、幸せな顔とはこんな表情だと言わんばかりの顔で微笑(わら)っている。

 ダレンは邪魔する者は(ゆる)さないという、鋭い眼で周囲を見回していた。


 いつの世も大人の役目は、汚いものを何も知らない子どもを守ることなのだ。

 子どもが夢を見ていられるように。

 それに気付いた子どもが大人になるのだろう。

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