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そういや、俺のことを紹介しなくてはいけないだろう。
俺の名前は、ベルモーネという。略称ベルだ。この天界で神官学校の学生をしている。
好きなものは抹茶だ。爺くさいといわれるがそんなの知らん。
逆に嫌いなものは納豆だ。あれを食べ物というのは万物に対し無礼だろう。
ちなみに俺が通う神官学校ってのは、神様候補や神官候補の卵が通う学校だ。一人前になるため日夜すし詰めで勉学に励む。
俺もここで神様候補として、まぁ楽しくもない毎日を過ごしている。
カツ、カツ。
静まり返った広間に床を叩く靴音が聞こえる。
音のする方に顔を向けると、遠くから人影が見えてくる。
シルエットが徐々に広がってきて、やがて人影がはっきりしてきた。
人影は女だった。
まっすぐ俺に向かって歩いてくる。
そして俺の前まで来たところで立ち止まり俺を一瞥する。いぶかしげに俺を見定めしているようで、非常に気分が悪い。
「貴方…こんなところで突っ立って何してるのかしら?」
上から目線で女が言い放つ。なにこいつ?
「俺は大神皇様に呼ばれてここにいるんだよ。そういうアンタは何なんだよ?」
「あたしも大神皇様に呼ばれたのよ。なにやら一大事みたいだから急いで来たのだけど。まだいらっしゃらないみたいね。
…でも、なんで貴方みたいなのが大神皇様に呼ばれるのかしら?」
「そんなの知らん」
こいつの言動は頭に来るが、言っていることは的を得ている。俺みたいな一般人に何の用なのだろうか。
隣の女…自分では名乗らないがおそらく上級神族だろうな。佇まいからも分かるし、何よりこいつから異常なまでの神力を感じるのだ。
あ、神力ってのは俺らみたいな神族のトータルの能力値だな。人間でいう知力や体力みたいなもんだ。
その神力がひしひしと俺に伝わってくるんだ。
明らかに俺より上手だ。…認めたくはないが。
俺が思いに耽っていると、正面の扉がギギギと音をたてて開く。
「大神皇様のおなりである!! 面を下げよ!」
扉から最初に出てきた近衛兵が叫ぶ。
すかさず俺と女は片膝をつき、頭を垂れる。
やがて、ゆっくりと大神皇様が登場なさった。