第一話 入学
四月十日、おれは三月の入学試験に無事に受かり私立悠聖高校の入学式にいた。
中学生のころはいろいろあったので、高校では何の問題を起こさずに穏便に過ごしたいと思う。
しかし、高校の入学式というものはかなり暇なものだ。
ほとんどの生徒が話をしている。大丈夫だろうかこの学校……
まあ、おれは少し人見知りなので、初めて会ったその日から仲良く話すことはない。
でも、おれの後ろにいる幼馴染の桜城明香里は違うようで、もう周りの人と仲良さそうに話している。
そして、おれに気付くと小さく手を降ったので俺も同じように手を振った。
暇だ……
入学の資料でも見るとするか
悠聖高校は私立なので、お金はもちろんのこと総生徒数もかなり多い。
資料によると
今年度の新入生は一二〇〇人
総生徒数は約四〇〇〇人
だから、入学式だけでなく卒業式などにもかなり時間がかかる。
しかも、寮や剣道場などはもちろんのこと体育館と校舎が四つもあるので面積がめちゃくちゃでかい。
これは建物の配置を覚えるのが大変だな。
ただ、校舎が職員と各学年と会議室や視聴覚室などと分かれているので、悪い先輩たちに絡まれることはあまりないだろう…
しかし、それによりきれいな先輩と会うことも減るけれどそこはしょうがないだろう。
物事にはメリットとデメリットが一緒に付いてくるものだ。
そんな風にこれからの高校生活を考えていると入学式がいつのまにか終わった。
一人で教室に行こうと体育館の出口へ向かっていると
「遥斗ー 一緒に教室に行こうぜ」
「私も一緒に行く」
と、後ろから明香里と我が親友、山宮栄太がおれに話しかけてきた。
「いいよ」
明香里と栄太は小学校からの長い付き合いだ。
明香里はもともと幼馴染だったし、栄太はいろいろと気が合いすぐ仲良くなった。
小学校の時のクラスは三人とも一緒だったが、中学校では二年の時に栄太が急に転校した。
親友のおれも明香里も知らなかったことだった。
先生によると突然決まったことらしいが詳しくはわからなかった。
しかし、去年突然、栄太から手紙来た。
そこに書いてあったことを簡単に言うと、突然転校して心配をかけてすまなかったということと、来年は遥斗たちと同じ高校に通いたいから行く予定の高校を教えてくれというものだった。
手紙がきた時には、びっくりしたがすぐにまた三人で学校に通えると思うとうれしかった。
翌日、学校で明香里にそのことを伝えると、おれと同じように喜んでいた。
その後三人とも悠聖高校に受かり、入学が決まった。
入学が決まったので、おれと明香里は栄太に会いたかった。
だから、栄太に手紙を出したが返事は入学式までは会えない、ごめんというものだった。
そんな、出来事があり今日を迎えた。
「おーい、おーい遥斗ー」
隣から栄太が話しかけてきた。
「うん、なんだい?」
「いや、ずいぶんと考え事をしていたように見えたからさ、心配になって」
「ほんとすごい顔だったよ」
自分ではそんなつもりではなかったが、ふたりからそういわれたのだからそういう顔をしていたのだろう。
「たいしたことじゃないよ」
「本当?」
「ただ、この高校に入学する前のことを思い出していただけだよ」
と笑いながらおれは答えた。
「そうか、ならよかったよ。でもすまないな、二人に言わないで急に転校しちゃって」
「大丈夫だよ、こうしてまた三人で学校に通えるのだから」
「そうだよ。でも私も遥斗君もあの時はびっくりしたけどね」
そして、栄太が悲しい顔で
「あの時はいろいろあったからさ……」
それを見た明香里は
「まあ、いいじゃない。まあとにかく、また三人でいろいろなことができるんだからさ!」
「そうだな」
「だな」
そんな風に約一年ぶりに三人で話していると、あっという間におれたちの教室に着いた。
おれたちのクラスは一年八組だ。
この学校は普通科九クラス、農業科七クラス、工業科七クラス、商業科七クラスに分かれている。
黒板に貼ってある座席表を見ると、予想どおり出席番号順だった。まあ、最初は普通こうだろう。
それを見た明香里が
「みんな、バラバラだね」
「まあ、そうだろうな」
キーン コーン カーン コーン
そこで、チャイムが鳴ったので三人とも自分の席へむかった。
しばらくして担任の先生が入ってきた。
「みなさんこんにちは、悠聖高校へようこそ。これから一年間一緒に過ごす担任の照井日和です。みなさんよろしくお願いします! じゃあ、まずは恒例の自己紹介をしましょう。荒田くんから出席番号順におねがいします」
ほう、照井先生というのか、しかしあの先生は一体何歳なんだ?身長からしたら中学ぐらいの身長だ。
まあいいや先生をやっているのだから、成人はすぎているはずだ。
そんなことよりいまのうちになるべく多くのクラスの人の名前と顔を覚えなくては。
おれの自己紹介が終わり明香里のも終わり、しばらくしてから栄太の自己紹介の順番が来た。
そして、その時、俺はなぜかわからないが教室の空気が張りつめているような気がした。
今日は午前中にこれからのことなどの軽い説明し、午後には下校できる。
授業やその他の説明は明日からだ。
よし、今日は明香里と栄太と一緒に久しぶりに三人でどっかに遊びに行こう!
そして、下校の時栄太と明香里に声をかけたところ二人とも同じこと考えていたらしく、とりあえず近くのファミレスでお昼を済ませることにした。
そのあとカラオケなどに行ったりして久々に三人で過ごした。
夕食の時間が近づいてきたので、それぞれの家に帰った。
そして、四月十一日。一度きりの高校生活。今日から本格的に授業が始まる。
思いっきり青春を楽しもう!
そう意気込んでいた時、インターホンが鳴った。
「遥斗、明香里ちゃんと栄太君がきたわよー。早く支度して降りてきなさい」
「はーい、今いく」
そう言って急いで下に降りて行った。
「おはよう、ふたりとも」
「ああ おはよう」
「おはよう 遥斗君」
昨日のうちに明日は三人で広い敷地だから迷子になるかもしれないということで、早めに学校に登校しようと決めていた。
学校からはそんなに離れていないので、歩いて二十分ぐらいで着いた。
早めに学校に来たので、生徒はあまりいない。
いたとしても朝練をしている人たちばかりだ。
結局迷子にならず無事、一年八組に着いたが誰もいなかった。
「俺、トイレに行ってくるわ」
「おう、わかった」
「やっぱり、誰もいないよね」
「まあ、この時間だしな」
そんな感じで、明香里と二人で話していた。
そんなとき、突然地響きがした。
「えっ、何なの?」
そう明香里が言った直後
ドォォンという轟音がなった。
そして、校舎が急に傾き始めた。
当然おれたちは突然の出来事に反応できるはずがなく、傾いていくほうへ流され、壁にぶつかった。
「きゃっ! 遥斗君の変態!」
「えっ?」
突然そう言われて、自分の手元を見てみると明香里の胸を手が掴んでいた。
「うわぁ! ごめん!」
おれは慌てて手を離した。
明香里は赤面しながら、軽蔑の目でこっちを見ていた。
「ごめん! あれは不慮の事故だ!」
しかし、当たり前だか謝って済む問題ではなく、いまだ軽蔑の目で見ていた。
ここは、話題を変えて、気をそらすしかない
「明香里、けがはないかい?」
「別にけがはないよ、だけどさっきの……」
そう明香里が言っているとき、明香里に向かってまた机と椅子が流れてきた。
「危ない!」
「きゃっ!」
おれはとっさに明香里をかばった。
「いたた……明香里は大丈夫?」
「私は大丈夫だけど遥斗君は?」
「おれは大丈夫だよ。それより早く外に出よう。栄太も心配だ。」
「そうだね」
だいぶ傾いた一年八組のクラスを出ると栄太が上から滑ってきた。
「遥斗、明香里大丈夫か?」
「ああ、なんとか大丈夫だ。栄太も大丈夫か?」
「大丈夫だ」
それにしてもいったい何があったのだろう。
「とりあえず、ここの窓が空いているし、ここから外に出ようよ」
「そうしよう」
おれたち三人は外に出て、唖然とした。
一年生校舎付近を中心として地面がくぼんでいた。
一体どうして……
「あっ、山宮君に桜城さんに神崎君おはようございます。無事でしたか。よかったー」
「照井先生、これは一体なんですか。何があったのですか」
「えっとですね、詳しく調査してみないとわかりませんがおそらく地盤崩壊がおきたものかと…」
「地盤崩壊!?」
三人とも声をそろえていった。
「はい、ここら辺の地域は、昔に地盤崩壊があったのでこの学校を建てるときに対策をしたのです! でも、いままでこんなことなかったのにおかしいですね。あっ! こんな風なのでしばらく学校はお休みですので家でしっかり勉強してくださいね」
と、言って照井先生はほかの先生方のところへ行ってしまった。
「……帰るか」
「そうだね。栄太君もそんな難しい顔しないで帰ろうよ」
「うん? ああ、そうだね」
「栄太、大丈夫か?」
「うん、大丈夫さ」
本当にそうなのだろうか。
栄太がとても悔しくて悲しい顔をしていたように見えたのだが、気のせいだったかな。
まあ、本人が大丈夫と言っているのだから大丈夫なのだろう。
急いで書いたので、字の間違いがあるかもしれませんが気にしないでいただきたいです。
15/3/4に修正を行いました。
15/8/26に修正を行いました。




