3話
とりあえず、新しいバイトを探すの巻
大学3年になって、1,2年のころより授業が減った。
自然と友達A,B,Cと合う回数も減っていく。
A,Bは暇さえあれば、それぞれ飲み会だのクラブだのバーなどに行って夜通し騒いでいるらしい。
最近はもっぱらダーツバーに行っているらしいが、酒の飲みすぎで、過ごしている間は楽しいのだが記憶はないらしい。
体が楽しいということを覚えているから何度でも足を運んでしまうらしいが、木綿子からすればかなり滑稽な話である。
Cは空いた時間にバイトをするか、彼氏といるかのどちらからしい。前にも一度聞いたことがあるが、1人でいることがさみしいので、常にだれかと過ごしているらしい。
彼氏もいないし、酒も飲まない木綿子は空いた時間をバイトをするか、本を読むか、散歩するくらいしか時間の使い方が思い浮かばなかった。もっとよく考えればいいことなんだけれども。だが、今まで週2,3日だったバイトを4,5日に増やすのは気が引ける。
女子大生で週4,5日も同じ店でバイトするのはなんとなく惨めな気がした。A,Bなんかに話したら笑われるだろうし、馬鹿にされる気がした。
“バイト増やそうかな。今とは違うやつで簡単そうなやつ。”
思いついて、バイトの休憩時間に携帯でアルバイトの求人サイトを見たが特にピンとくるものはなかった。
“何をすればいいんだろう……。”
バイト中、客の流れが途切れたところで同じ大学生アルバイトの女の子に相談した。
「大学生で掛け持ちやるんだったら、やっぱ塾講師じゃない?私もやってるけど意外とできるよ。解説見てれば思い出すし。」
“なるほど。”
バイト帰りの電車内で塾講師のアルバイトを求人サイトで検索した。家から2駅以内という条件で。
個別指導塾、集団指導、進学塾、補習塾と塾にも種類があって、【スーツ着用】と書かれている求人が多い。
とりあえず、適当に1つ私服可の塾で応募してみることにする。
『寺子屋 “濱”
週1,2日勤務、1日3時間~、時給1,000円、大学生歓迎。
自習形式の補習塾。私服可。
担当:浜本』
【自習形式】というお手軽そうな言葉に惹かれ、場所も隣駅なので通いやすいと思った。
軽い気持ちで携帯画面をスクロールし、【アルバイト応募】のボタンを押す。
アルバイトの採用担当者からメールで連絡が来たのは、次の日になる少し前だった。
『朔田 木綿子 様
この度は、アルバイトの求人に応募いただきありがとうございました。
早速、面接を行いたいと思います。
顔写真を貼った履歴書、身分証明書、印鑑をお持ちの上、
月~金曜日の12~16時にいらしゃってください。
寺子屋“濱” 浜本
東京都○○市△□3-16-4
TEL 042-000-0000』
面接はいつでもいいということらしい。
“大丈夫なのかな。この塾。”
メールも適当なら、きっとこの担当者も、仕事も適当なのかな。いい暇つぶしになるかもしれないなんて、そんな軽い気持ちもまだ持ち続けられる木綿子も、なかなか適当な人間である。
“ちょうど、明日は1限だけだし、A,Bの誘いを断る口実にもなりそうだし。”