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新駅の名前

「北南電鉄が作る新しい駅の名は、ぜひ亀木田としてもらいたい!」

 亀木田選出の県会議員である俺は、声高に県議会で叫んだ。

が、・・・、

「いや、あそこは兎沢役場に近い。利用者の事を考えれば、兎沢駅とするのが一番だ」

 そう反論したのは兎沢町選出の県会議員だった。

「亀木田だ!」「いや、兎沢だ!」


 互いに譲らない俺達の議論に割って入ったのは、隣接する鶴ヶ山村の県会議員だった。

「亀木田市も兎沢町も駅名を名のる資格はない。新駅は鶴ヶ山にしようじゃないか」


 そう、亀木田市も兎沢町も財政破綻寸前である為に、すでに市や町の命名権を企業に売っており、それぞれマ○ド○ルド市、モ○バーガー町となっていたのだ。

さらに・・・、


周辺の鹿之郷しかのごうや猿面村といった自治体からも、駅名に加えてもらいたいという要望や、歴史的にはこの地域は『古刹こさつ桐の森』だったという学者の意見も出る中、別の議員が立ちあがった。


「新駅の主な利用者は、我が狐池市にある聖ヒラリウス学園の生徒達。ならば駅名も『聖ヒラリウス学園前』でいいではないか」

 なんとなくこの意見が通りそうな雰囲気になったので、俺は強硬に反対した。

「駅が旧亀木田市にある以上、駅名は絶対に譲れない! 駅前の整備だってうちの市が行っているんです!」

「それもそうか・・・」と納得する議員も出始めた時、傍聴席から声が上がった。


「熊尾原は、駅の移転そのものに反対している事をお忘れなく」

議場がハッとして静まり返った。


 元々北南電鉄の駅は、隣の熊尾原市の旧芝松電業・工場前にあった。

 それが円高で工場が海外に移転してしまった為、乗降客が見込めず移転する事になったのだ。

 工場移転に加え、駅まで閉鎖されるとあって、旧熊尾原駅・商店街では反対運動が起きていた。


 とはいえ、北南電鉄も少しでも収益の見込める場所に駅を移転するのは当然のことだった。


「ではこうしましょう」

 議長が新たな提案をした。


「新たな駅名は『亀木田鹿之郷、兎沢鶴ヶ山、猿面古刹桐の森、熊尾原・旧芝松工場前移転、聖ヒラリウス学園前駅』。ずいぶん長い名前ですが、それが町興しにもつながるのではないでしょうか」

「なるほど、それは名案かもしれない」議場のあちこちから賛同の声がもれた。

 

 現在、日本で一番長い名前の駅は、『南阿蘇水の生まれる里白水高原駅』もしくは『東京ディズニーランド・ステーション駅』と言われている。


 もし『亀木田鹿之郷、兎沢鶴ヶ山、猿面古刹桐の森、熊尾原・旧芝松工場前移転、聖ヒラリウス学園前駅』が認められれば、日本一長い名前となり、その名は全国に轟くだろう。


 採決により県議会は、この名を北南電鉄に提案することにした。

 ところが・・・、


「申し訳ないんですが、新しい駅名はすでに決まったんですよ」と電鉄側から残念な回答があった。

 なんでも北南電鉄もこのところ大赤字だそうで、駅の命名権を企業に売ってしまったのだそうだ。


 買い取ったのは、最近業績を伸ばしている食品会社の『(株)田舎餅本舗』。


 というわけで、俺達の市にできた新しい駅の名は、田舎餅本舗を代表する人気商品にちなんで、

『ビックリ! きな粉餅駅』と決定した。




   ( おしまい )


        

    ※・・・・・・この物語はフィクションです。

 この物語はフィクションであり、ここに登場するいかなる市町村や企業等も実在の物とは関係ありません。(^^;)

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