エピローグ -Journey-
森の中はすでに冬を越え、春を迎えていた。
雪を掻き分けて花々は芽を出し、動物たちは冬眠から目を覚ます。
春、それは始まりの季節。当然人間にとっても――――
森の中には一台の馬車が止まっていた。
「ふう、こんなもんかな」
銀髪の少女は馬車の荷台へと荷物を積み込む。
「少し積みすぎではないでしょうか?」
隣にいる黒髪の少女は心配そうな面持ちで荷台を見た。
「いいんだって、長い旅になるんだから」
「それならば現地調達でいいのかと……」
「あ~。ダルクちゃんは心配性なの」
「そうでしょうか。それよりもダルクちゃんとは」
黒髪の少女は不思議そうな顔をする。
「だって、ダルクちゃん。私より年下でしょ?」
「はい、4ヶ月目ですので」
「だったら、いいよね?」
「……命令とあらば」
その言葉を言う前に時間が開いたのは明確だった。
「あと、敬語とか礼儀も禁止ね!」
「分かりました。エレン様」
「だから様付けは無しだって!」
エレンは銀の髪をブンブンと振り分けて、ダルクへと注意を喚起する。
「私たちは家族なんだから、ね」
エレンの笑顔にダルクは黙って返事をするしかなかった。
荷物も積み終わりダルクは黒馬の手綱を取る。
荷台にはエレンが乗り込んだ。そこには水や食料、そしてこの森で取れた花々の種が大量に乗せてあった。
「それでどこへ向かうのですか?」
ダルクは聞く。
「うーん。決まってないや」
エレンはそう答える。
幸先不安になる答えだったが彼女の表情は楽しそうであった。
「まあ、目的は決めてるんだけどね」
「目的?」
「うん、もちろん世界征服でしょ!」
馬車は2人を乗せ、森の中を抜けていく。そこからは美しい歌声が響く。
その後、世界各地で唄を歌う魔王の姿がたびたび目撃されたらしい。
それはまた別のお話である。
「魔王の歌姫」をご愛読して下さった皆さん。
この場を借りて感謝を述べたいと思います。
皆さんのおかげで連載を最後まで続けることができました。
ありがとうございました。
続編予定など詳しいことは活動報告にてお伝えしたいと思うので
今後も”千ノ葉”をよろしくお願いします。




