迫る足音
綿貫家の屋敷では、静寂を裂くように
霊気がざわついていた。
その異質な気配が、屋敷中に四つ。
まるで灯火が同時に燃え上がったかのように
広がっていた。
「 ……完全な人型の式神だと? 」
「 そんなもの、記録にない。まさに禁忌だ… 」
「 レイヤを処刑対象にするべきだ 」
レイヤの父は険しい表情で書物を閉じた。
その書物にはこう記されている。
「 式神の気配は人でも妖でもない "異質" なもの 」
「綿貫の名を守るためだ。
娘もろとも式神を処分する」
母は震える手を胸示で組みながらも、
瞳は冷たく、揺れなかった。
「 あれはもう人の手に負えるものではないわ… 」
「 バケモノ…人の形をした、バケモノだわ… 」
親族たちがざわめき、決定はあまりにも
容易く下された。
その頃、地下牢では。
「 今日のご飯、ちょっと美味しかったね 」
私が笑うと、シラユリが柔らかく微笑んだ。
「 レイヤ様が笑ってくださるなら、
それだけで幸せです 」
「 まぁ、もうちょっと飯の量が多ければ
レイヤに分けてあげられたのにな〜 」
クロハがみんなに聞こえるくらいの声で呟く。
「 ねぇねぇアオちゃーん!まだ警戒してるの? 」
モモカが首を傾げる。
アオイは壁にもたれ、目を細めていた。
「 ──静かすぎる。何か、嫌な予感がする 」
その瞬間、アオイの表情が鋭く変わる。
「 来る。複数の霊力反応……しかも強い 」
空気が一気に張り詰めた。
シラユリはレイヤの前に立ち、
クロハは影に溶けるように姿勢を低くし、
モモカは霊気を練り始める。
「 え……?どうしたの、みんな……? 」
私が戸惑っていると、地下牢の奥から
たくさんの足音が響いてきた。
重く、冷たく、決意を帯びた足音。
鍵が回る音がした。
ギイ………と扉が軋む。
現れたのは、私の父と母、そして親族たち。
誰一人、温かい表情をしていなかった。
「 レイヤ 」
父の声は、氷のように冷たい。
「 お前は禁忌を犯した、
綿貫家のために処分する 」
「 …え……? 」
膝が震える。
親族の一人が式神たちを指差して叫んだ。
「 見ろ!完全な人型の式神だ! 」
「 怪物め! 」
「 娘もろとも始末しろ! 」
視界が揺れる。
その前に、アオイが一歩進み出た。
「 レイヤ様下がって下さい、
ここからは私たちが戦います 」
同時に、シラユリ、クロハ、モモカも構える。
地下牢の空気が、張り裂けるほどの
緊張で満ちた。
_(:3 」∠)_




