願いから生まれたもの
地下牢の空気が、いつもと違っていた。
霊気で生み出した糸と布と綿が
勝手に動き出したあの日から、
私はずっと息を潜めていた。
私は壁に背を押しつけ、震える声を漏らす。
「 だ、誰…なの......?」
答えたのは、白髪の少女だった。
白髪に白い衣、まるで聖女のような佇まい。
その瞳は、私を優しく映していた。
少女は静かに口を開く。
「 初めまして、レイヤ様。
私は貴女の『褒めて欲しい』という
願いから生まれた存在です。どうか、
私の存在を認めていただけますでしょうか 」
その声は、地下牢には似つかわしくないほど
澄んでいた。
白髪の少女の影が揺れ、そこから
黒い人形のような少女が姿を現す。
黒髪に黒い瞳、どこか挑発的な笑みを
浮かべていた。
「 よぉ、レイヤ。
うちはあんたの『見て欲しい』っていう
願いから生まれた存在だ 」
私は息を呑んだ。
影から生まれた少女は、
まるで闇そのもののようだった。
気づけば、黒髪の少女の隣に
青髪の少女が立っていた。
その動きは静かで、気配すら感じさせない。
「 初めまして、レイヤ様。
私は貴女の『守って欲しい』という願いから
生まれた存在です。
どうか、この私をお役立てください 」
青髪の少女は深く頭を下げた。
その所作は武人のように整っている。
そして最後に、桃色の髪を揺らす少女が
ひょいと姿を現した。
「 やっほ~レイっち!
あたしはレイっちの『愛して欲しい』っていう
願いから生まれた存在だよ〜!」
明るい声が地下牢に響く。
その無邪気さは、この場所にはあまりにも
不釣り合いだった。
私は、ただ呆然と四人を見つめた。
「 ……わたしが、つくったの……? 」
白髪の少女が優しく微笑む。
「 はい、レイヤ様の願いが
私たちを形にしたんですよ 」
黒髪の少女が肩をすくめる。
「 "式神" ってやつだな!
でもまあうちらはうちらで、
レイヤのために生まれたんだし?」
青髪の少女は静かに頷く。
「 私たちはレイヤ様をお守りするために、
存在しております 」
桃色髪の少女は私に抱きつくように近づき、
「 レイっち!もうひとりじゃないよ~!」
私の胸が、ぎゅっと締めつけられた。
孤独で、辛くて、
誰にも必要とされなくて、
壊れかけていた心。
その奥底に沈んでいた願い”が
形になってしまったのだ。
私は震える声で呟いた。
「 ……私、こんな…… 」
白髪の少女がそっと手を伸ばす。
「 大丈夫です、レイヤ様。
私たちは、貴女の願いそのもの。
貴女を否定することはありません 」
私の頬に温かい涙が伝った。
四人の少女──式神たちは、
私の心が生んだ、禁忌の存在。
そしてこの瞬間、私の世界は変わり始めた。
(*˘︶˘人)




