落ちていく少女
「 レイナ、今日の稽古もよくできたわね。
貴女は綿貫家の誇りよ 」
母の声は、いつも姉にだけ向けられていた。
その横で、レイヤはただ立っているだけだった。
褒められたことは、一度もない。
名前を呼ばれることすらほとんどなかった。
「 レイヤ、お前はもう下がっていろ。邪魔だ 」
父の言葉も、いつも同じ。
冷たく、興味もなく、"そこにいるな" と
言われているようだった。
私はそれが普通だと思っていた。
双子なのに、どうしてこんなに違うのかなんて、
考えたこともなかった。
───あの日までは。
「 レイナお姉様…? 」
庭で一緒に遊んでいたはずだった。
私はただ、姉の手を取ろうとしただけだった。
その瞬間、胸の奥が熱くなった。
何かが弾けるように広がり、視界が白く染まる。
次に気づいたとき、お姉様は傷だらけで
倒れていた。
「 ……え? 」
私は何が起きたのかわからなかった。
ただ、姉の体が動かないことだけは理解できた。
「 お姉様……?ねえ、起きてよ…、」
震える声は、誰にも届かなかった。
「 ──レイヤ、お前がやったのか 」
気づいたら、父がいた。
父の声は、氷のように冷たかった。
「 ちがッ……違うの!わたし、なにも…!」
「 言い訳は聞きたくない。
レイナを殺したのはお前だ。」
母は泣きながら私を睨みつけた。
「 どうして……、どうしてレイナなのッ……!
あの子は綿貫家の希望だったのよ…!?」
私は首を振ることしかできなかった。
何が起きたのか、本当にわからなかった。
でも、誰も信じてくれなかった。
「 連れていけ。あの子は………綿家の恥だ 」
その言葉が、私の世界を終わらせた。
地下牢は、冷たかった。
暗く、湿っていて、息をするたびに胸が痛んだ。
「 ………どうして 」
私は膝を抱え、震える声で呟いた。
「 どうして、私じゃなくて……
レイナお姉様が……、 」
答えてくれる人は誰もいない。
家族の声も、温もりも、もう届かない。
私は、ひとりぼっちだった。
その夜、彼女の心は静かに崩れていった。
──まだ自分の中に眠る "禁忌" の力に
気づかないまま。
おやすみなさい ( ¯꒳¯ )




