前哨戦
軍隊に復帰したケンジ、モニカそして新たにユウコ。泥沼の地上戦に彼らは挑んでゆく。
「モニカとユウコ、俺の帽子を見事撃ち抜いてみろ」
雨の練習場でそれは酷な要求だった。それに地上戦では役に立たない。
それでも二人は果敢にゴム弾を撃ち込んでくる。敵の作戦が読める俺には歯が立たない。モニカとユウコが疲れ切って動けなくなったところでモニカを狙った。しかしユウコがいない。なんらかの策を持って消えたようだ。
モニカを仕留めたところで背後からユウコが迫ってきた。
(奇襲作戦か悪くない)
それでもユウコの動きは読めた。彼女の標的を撃ち抜こうとした時、ユウコは身体を地面にダイブし匍匐前進の形を取った。
「当てづらくなったが敵は反撃できない。ならばゆっくり仕留めてやろう」
匍匐前進からの射撃は極めて難しい。これは多数の敵から身を守る作戦だ。
そう思っていた瞬間ユウコのゴム弾が俺のヘルメットの上の標的を撃ち抜いた。
モニカとユウコは手を握って喜んでいた。一方俺はあっけに取られていた。匍匐前進からの射撃は当たらない訳ではない。一気にユウコを攻めれば勝っていただろう。
「俺の負けだ」、戦場に行こう。
この三人の力はベテラン軍人を凌駕する。行かなくてはいけないんだ。
雨の中我々は寝泊りする建物に向かった。すると聞き覚えのない銃声がした。
「敵襲だ。木に隠れろ!」
(目的は俺とモニカに違いない。敵の方向は銃声でわかった)
木の陰から慎重に敵影を見定める。俺の目ははるか遠くの敵も捕捉する。
「悪いな、密林戦でも俺は強いんだ」
小走りに駆けてきた敵兵二名を仕留めた。
おそらくあと3名、後ろに回り込めるはずはないがモニカとユウコに警戒を促した。
匍匐前進する敵を2名発見した。
二度目のミスは俺にはありえない。敵2名の背中に無数の弾丸を撃ち込んで彼らは絶命した。
「残りは一人か、なら正面勝負しようや」
しかし敵はまだ出てこない。おそらく木の陰に隠れている。
手榴弾をありったけ投げるとたまらず敵は走って逃げた。
「トドメだ」、そう言って狙いを定めると敵が倒れた。
モニカの一撃が敵の顔を貫通していた。彼女もチャンスを狙っていたのだ。
敵襲を本部に伝えるとすぐに援軍が駆け付け警護にあたった。
俺はというと冷え切った身体を温めるため風呂に浸かっていた。
「あれは俺とモニカを狙ってきた。だがユウコという手ごわい刺客がいることもバレてしまった。二人を守る作戦を練り直す必要があるな」
モニカたちが増え女湯も増設された。少し寂しいがいいことだ。
風呂を出るとモニカとユウコはこれから風呂のようで、バスタオルと洗顔セットを持っていた。おたがいの手を握って今日の混乱した実践を労った。
「ユウコ、あなたは銃をひとつに決めなきゃね。なんでも打てるのは凄いけど決めた方がいいわよ。ケンジはSIG SG550しか使わないし、わたしはMP-5からアサルトライフルのSVD ドラグノフね」
ユウコは戸惑っていた。初めての戦闘で人を撃ち殺したこと。練習弾でケンジを仕留めた最初の人間になったこと。ケンジはその素質を絶賛してくれた。
身体を洗って湯船にユウコは浸かった。
「銃のことわからないもん。だからモニカが決めて」
モニカは嬉しそうに自分が知ってるアサルトライフルを思い浮かべた。
「お前には素質があるってケンジに言われたけど本当かな。ただ夢中で構えて引き金を引いただけなんだけど。それにずっと守られる立場だったからよくわからないよ」
「今まで誰もケンジにゴム弾当てた人間はいないのよ?それが偶然とは思えない。やっぱりユウコには素質があるんだよ」
何度挑んでも勝てなかったケンジを倒した。それだけでユウコは只者じゃない。そうモニカは確信していた。
「それにしても裸でお風呂に入るなんて慣れないわ。日本に憧れがあるケンジが強引に決めたんだけど恥ずかしいわ」
そういうモニカの胸をユウコはジーっと見ていた。そしてそれを触った。
「なんなのやめなさいよ!私たち同性なのよ」
なんでこんなに胸が大きいのか、自分のものを触りながらユウコは困惑した。
「なんだモニカ、顔が真っ赤だぞ」
湯上りの彼女にそういうとバスタオルを投げつけられた。
二人がお風呂で遊んでる姿を想像しただけで鼻血が出た。欲求不満がとんでもなく強いようだ。彼女たちに相談しようかと考えてから大きく頭を振った。
二股彼女なのは間違いない。道徳的問題が大いにあるが、二人が望んだことでもあった。
しかし戦場に赴く前にこれではどうしようもない。解決策を...考えてやめた。
「作戦が決まったぞ。既に前線にいる者たちに加えて、ケンジをリーダーにした3個小隊が加わる。ケンジは後方の隊長を務める」
アルトマイヤーからの伝言だが、たった3個小隊、しかも俺は後方からという不自然な作戦だった。もともと勝てるとは思っていない、だから戦況によっては逃げろということなのだろう。
俺の階級は大統領暗殺以降は少将にあがっていたが、こんな作戦にでるのだから下士官と変わらないし、それが分相応だ。モニカは中尉、新米のユウコは上等兵からだ。演習での実力が見込まれたようだ。
「出撃は3日後だ。現地の兵士たちにも伝えてある」
アルトマイヤーは事務的に告げた。
それまでは3人で射撃訓練をした。ユウコの銃はSAKO Rk95に決まった。
「ユウコ凄いな。命中率が俺とモニカと変わらないぞ」
そういうと彼女はちょっと照れそのあと眉間に皺を寄せた。
「敵さんとはいえ一人殺しちゃった。いいのかな...」
「戦争とはそういうものだ。覚悟ができてないなら脱退した方がいい」
突き放した言い方をしたが彼女の気持ちはわかる。人を殺すと言う行為は重大なことだ。
「優しさは尊くて大事なことよ。でも戦場では捨てなさい」
モニカも厳しい言葉を彼女に伝えた。俺と同じ気持ちだ。
「脱退はしない!ケンジの力になりたいの」
ユウコは力強くそう答え、モニカと俺はほっとした気持ちだった。
「二人に追いつくよう頑張るのでよろしくお願いします!」
わりと強気な彼女だったが先輩である我々に頭を下げた。
前線へ送られる前日、三人は4階でトレーニングをしていた。
「ケンジ、あなたベンチプレス80kgって凄いわね。わりと華奢に見えるのに」
実はもう少し持てたが手加減していた。
「そうだな。スナイパー専業だから無駄かも知れない。だが白兵戦になったら別だ」
2mの巨人にマウントを取られたらもう負けだ。それはそれと割り切ってる。
「二人は白兵戦になりそうなら服を破け。相手の視線が泳いだところで撃つんだ」
ユウコは真っ赤な顔でこっちを見返したがモニカが諭した。俺が正しいと。
「生き延びれたら勝ち。他には戦場にルールはない」
トレーニングを終えると二人にスポーツドリンクを渡した。彼女たちは身体は引き締まっていて魅惑的で欲情を煽られた。
タオルを当てる寸前に鼻血が噴き出た。
「え?どうしたの。病気かなにか」
そう尋ねたユウコに首を振り、二人の膨らみをそれぞれ指さした。
モニカは堂々とTシャツを脱ぎ捨てスポーツブラの上から触るように指示してきた。
触れる前にユウコの顔を見ると大きく頷いてくれた。揉んで摘まんだりすると彼女の顔は赤くほてってきた。しかし揉んでる最中にユウコの胸部を見ていると頭にげんこつされた。
モニカを揉み終えるとユウコに許可なく襲い掛かりTシャツを脱がせた。困惑して少し抵抗する彼女に覆いかぶさり、「脱走した時からずっと抱きたかった」
そう告白した。
やさしく乳房をスポブラ越しに揉みながら、うっとりした顔のユウコにキスをした。
こうして不完全燃焼ながら性欲の一部が満たされた。
「あんたも不器用ね、私もユウコも抱かれる覚悟はとっくにあるのに」
そう言いながら口づけしてシャワールームへ向かって行った。
二人に遅れて俺もシャワー室へ入った。
(私もユウコも抱かれる覚悟はとっくにある)
それは彼女たちの態度からわかっている。問題は二人いることなんだ。彼女たちの体液を足の裏に感じながら俺は自問した。
「道徳?人殺しの俺には関係ない。だったら嫁も二人...」
翌日、我々は国境付近の激戦区レッダに向かった。
滞在期間は一か月、戦況が悪化したら我々三人は真っ先に逃げるよう指示されていた。
「まずは三人この装甲車で同行だ。現地に向かったら各小隊にわかれ指揮を執るが、野営地は必ず同じにする。これは絶対だ」
クーラーの効いた車内で二人は緊張しながら聞き頷いた。
「運転手、速度を落とせ!敵がいる」
射撃孔から俺とモニカが敵を狙うが流石に当たらない。
砲塔から可能な限り自動擲弾発射器を撃て、敵の方角はわかっているんだ。
弾幕にしかならないだろう。それでもいぶりだせるかも知れない。俺たちはここに死ぬために来たんじゃない。殺すために来たんだ。まずその気迫を見せておこう。
一瞬二名の敵戦士が目に映った。すかさず後方ハッチを空けて外に飛び出た。
「一対二だと思うなよ。俺は十人分だ」
目測するや否やSIG550から3発発射して一人、反対側に逃げた兵も一撃で倒した。
「遺体回収に行くぞ。何故こんなに国境から離れた場所にいたのか知りたい」
調べるとやはり敵国の軍人ではなかった。傭兵の可能性が高い。じゃあなぜあの場所に現れたか、あのタイミングで。我々の参戦がリークされたとしか考えられない。
「少なくとも一個小隊以上でここまで来たはず。もう逃げたかもしれないし任務遂行のため潜んでいるかもしれない。今夜はこのあたりにある塹壕や地下基地に非難する」
「ここはシャワーもあるし二人ともゆっくりしてくれ。必ず俺が守る」
二人がシャワーから出てくると他の隊員に見つからないように二人にキスをした。戦場まっただ中で愛情が大きく膨らんでいた。
「来たぞ、暗視スコープで捕捉した」
人数は4~5名、敵の拠点に乗り込もうとする意気は讃えよう。だが死の行群だ。
「私たちも出るわよ。暗視スコープは至急されてるもの」
「まて、4~5人なら俺一人で撃ち殺す。二人は出るな」
そう言っても二人は地下壕から出て行ってしまった。
すぐに匍匐前進して敵から身を隠すように指示したが、ユウコが撃たれた。
「ユウコは私が守る。ケンジは行って!」
モニカの悲痛の叫びに従い敵を殲滅すべく俺は前進した。
「俺を当ててみろ。どこの国かわからん輩よ」
瓦礫に隠れつつ敵に迫り射程までたどりついた。
「まだ油断してるだろうが俺は300mあれば深夜でも十分なんだよ」
と言いつつ怒りから乱射モードで撃った。二人はこれで倒した。
「残り3人程度か?死神に逆らったことを後悔しろ。必ず殲滅する」
と思ったところで相手がチカチカと明かりを灯し武器を捨て投降の合図をしてきた。
これには従わなければならない装甲車と戦車で彼らを囲み厳重な武装で身柄を確保した。
まずは夕食を出し彼らに安心感を与えた。俺も投降した相手を敵だとはもう思わない。
国籍はみなばらばらだった。軍の人間より力がある各国の傭兵を暗殺部隊としたのだろう。
尋問は他の者に任せユウコの元に向かった。
「ダメよユウコ。弾丸は取り除いたけど筋肉の損傷が酷い。帰りなさい」
モニカの話を聞いてほっとした。
命に別状はなく、時間を掛ければ治る。そして死ぬ心配の無い自宅に帰れる。
「いや、絶対に帰らない。片足でも戦えるわ」
強情なユウコを説得しようとしたがダメだった。
軍医の話を聞いてみると、動かすと傷が深くなるかもしれないという。
「ユウコ、なら明日からは片足で戦え。そんな強情を言うお前を俺は守らない」
モニカは驚いていた。溺愛するユウコにこんな厳しい言葉を言うなんて...
敵暗殺部隊は掃討できたものとし、前線に我々は向かってゆく。




