大統領暗殺作戦
ユウコとの約束を守るため、俺は日々腕立て伏せを行っていた。
そもそもまだユウコとはピュアな関係を望んでいたので、SEXをすることには戸惑いを感じていた。しかし早くしないとモニカに俺の貞操を奪われてしまうので急ぐ必要があった。モニカが何を考えているのかイマイチわからないが。
軍からの情報では、敵大統領の行方が掴みづらいという。普段は要塞のような家に住んでいるが、それも攻略不可能ではないのでころころいる居場所を変えているのだ。
「自宅にいる時にシェルターをこじ開け、毒ガスでも流したらいい」
そう助言したが、そもそもシェルターの強度がわからないから不安だという。
それにしても敵大統領はこんな逃げ回る生活をしてて幸せなのだろうか。自らの好戦的な態度が自分の人生を窮屈にしているようにみえた。
教練場の教え子たちはその時に備えて敵国にずっと待機をしている。気持ちを和らげてあげるために酒をみんなに持ってゆくことにした、「アルトマイヤー、出るのかやはり。お前に取って意味はあるのか」
そういうと教え子たちだけで行かせる訳にはいかないと言うので、俺のこころはずきっとしてモニカが出ないことを切に願った。
「ちょっと待て、ナガル。お前はなんでここにいる、できることなんてないぞ」
「ずっとスナイプの練習をしていました。見ていて下さいケンジさん」
そもそもさん付けされているが俺はお前よりけっこう年下だぞ。
ナガルが出撃することで俺の気持ちはぐらついていた。守るべき存在には入らないが、命懸けで守った男をここで死なせて良いのか自分の心に問いかけた。
「出撃したいんでしょうケンジ。私が守ってあげるわよ」
心を見透かしたようにモニカがそう言ってきた。
ユウコは無敵のケンジが負けるはずがないと信じている。ただ俺の得意技は意表を突くことで、ただ攪乱戦に強いだけなんだが。作戦を立てたのは俺なので、その気になれば当日でも出撃できた。それにしてもモニカは俺に連敗してるのになんでそんなに自信があるんだ。
「俺は出ない。だからお前もでるな」
俺はモニカに釘を刺した。一緒に暮らしてる女を守るのは出撃しないことだった。
翌日は三人でドライブした。食事処として綺麗なお店を発見したのでそこに停めた。ちなみに俺はまだ無免許だった。後から軍の人間なら免許は取れてると聞くのだが。ピザや前にユウコと食べたハンバーガーを食べた。
ハンバーガーの具の内容をモニカがユウコにばらしそうだったので慌てて口を塞いだ。そして夜の図書館に行き、その荘厳な景色を無言で見学した。
「これでいいだろう?素晴らしい建築物を見ながら美味しいものを食べる、これと違う人生をわざわざ選び、身を危険に晒して生きなくてもいいだろう」
流石にこれにはモニカもユウコも言い返すことができなかった。
仕事のミスが目立つようになって、俺がナガルを助けるために出陣するかも知れないと棟梁は悟った。勝てるなら行かせてやりたいが戦場なんてどうなるかわからない。だから思い切って俺に問いかけた。
「絶対に生きて帰るなら行ってもいいぞ。ナガルはどうでもいい」
そう言われても俺は行かないと棟梁に言った。
「いい加減にしなさいよねあんた。行くかどうか決めてもらわないと困るわ」
モニカにも答えを急かされた。
「これが最後だ。二人守りながら生き返れってどんだけ大変か考えてくれ」
「あら、私はあなたを守るために行くのよ。自分のためにもね」
突撃銃使いに言われてもまったく信憑性はなかった。
俺は気変わりし暗殺作戦に出撃することにした。
「ユウコ行ってくるよ。なるべく死なないから待っててくれ」
メンバーは揃った。これでダメなら初めから無茶だったんだ。
アルトマイヤーに作戦の概要を聞いた。いきなり爆弾で敵大統領が滞在する予定のホテルの入り口を破壊するという。既に仕掛けてあるというから大したものだ。それでも失敗に備えてランチャー部隊はそのままにした。
問題は入口を爆破した後に飛び込むのがモニカだったことだった。愛してる訳じゃないが今は家族なんだ。
「あんたが援護してくれるのわかってるから突撃するわよ」
「俺を信じないでくれ。若干スナイプが上手いだけだ」
「若干かどうかくらい模擬戦でわかったわ。だから安心して私は行けるの」
作戦通りに戦闘は始まった。
アルトマイヤーの爆撃からアサルトランチャー部隊も続いて、ホテルの入り口は粉々になった。続いて特攻先頭はMP-5のモニカが行く。
敵を見渡せるビルから彼女を守るため敵に備えた。ナガルにはカウンタースナイパーに気を付けて大統領が泊ってるはずの十階を乱射モードで撃つように伝えた。
モニカとケイが建物に入るのを見届けるとナガルが居る屋上に向かった。
「ナガル、生きてたか。こっちが撃てるということは、カウンタースナイパーが必ず何人かいる。絶対に見落とすなよ」
ナガルは十階を乱射しながら頷いた。
ただほんとはそれは俺の仕事だ。乱射モードの彼には敵は見えない。俺は敵スナイパーの位置を注意深く探していた。
「ナガル伏せろ!」
そういうと二人居た敵スナイパーをSIG550の3点バーストで俺は撃ち抜いた。まだいるかも知れないから俺は注意深く周囲を見ていた。ナガルには頭を出すなと指示した。
アルトマイヤーからの連絡で、隠しエレベーターで大統領が逃げたという、行先は入口しかない。
モニカが追おうとしたが止めて建物に留まるように伝えた。横を見たらナガルの姿が見えずぞっとした。自爆する気か?俺はワイヤーで一気に屋上から地上に降り、ナガルが入口に立って敵を待ち構えてるのを見た。
「ナガル邪魔だどけ!」
その一言でナガルは地に伏せた。次の瞬間出て来た敵SPもろとも乱射モードで敵大統領を俺は撃ち抜いた。
一気にやってきた米軍製ヘリCH53Eが我々を救助に来てくれた。
「これ前の紛争でもらったやつだが使って良かったのか」
そう言いながらモニカ率いる短機関銃部隊が弾幕を張って敵残党を掃討していた。私も遠くの敵がいないか見張っていた。
ヘリの上でみんなぐったりしていた。だが予定通り死者は出さずに目的を遂行できた喜びに皆浸っていた。私はナガルのせいでぐったりしていた。
「全部あんたの手柄じゃない。ずるいわね」
「それは結果論だ。モニカを守るために敵に近づかせたくなかったんだ」
そういうとモニカが抱きついてきた。今日くらいはいいやとそのままにした。
ケイやアルトマイヤーは寝てしまっていた。突入後敵を追い詰めてくれていたのは彼らだった。
モニカは弾幕張りに忙しかったようだ。
「取り敢えずナガラ、お前は軍隊に向かな過ぎるので帰ったらすぐやめろ」
味方の足しか引っ張れない男に引導を渡した。
結局この暗殺は、政権の転覆に繋がっただけで大規模な復讐攻撃はなかった。
俺はこれを最後に本当に軍隊から身を引いた。作戦は上手く行ったがメンバーが良過ぎただけだ、これ以上自分の身を危険に晒したくはなかった。
「ただいまユウコ、無事帰ったよ」
モニカがピースサインをして俺の後ろにいた。ユウコは二人に抱きついて勝利へのおめでとうの言葉を言った。職場にはナガルを引っ張って行き、棟梁に挨拶をした。
「こいつのせいで危険な目に遭いましたが無事帰還しました」
棟梁がナガルをぶん殴って迎え入れた。
「ケンジ、君が祖国で殺したという三人の殺人罪は特にないらしいね」
俺は驚いたがアルトマイヤーは調べてくれていたらしい。あれだけ大きな声でユウコは逃げていた訳で、目撃者がいて罪には問われなかったらしい。
軍のあまりにも杜撰で寛容さに救われた。しかしこれで俺は祖国に戻ることもできるようになった。だがその気はなく、むしろこの国か外国で勉強したい気持ちが強かった。建築の設計をやりたいからだ。
「お前にはそっちの方が向いてるかも知れない」
棟梁曰く俺は理知的で、何かを生み出す方が向いているとのことだった。
日本、俺とユウコにはこの国の血が流れている。
調べてみると自然災害は多いが、犯罪は世界でも特別に少ないそうだった。物価も先進国にしては格安だし、外国人留学生には向いてそうだった。
「ケンジって片方しか名前ないけどいいのかな」
そうだった。ユウコの言うとおり俺は両親を知らないし苗字を知らないのだった。身元不明人では流石に外国での留学は無理だろう。
「ケンジ、あなたはたぶんネイティブ日本人でしょう。調べてみるといいわ」
ケイが昔日本に行った時に見た顔と完全に一致するらしい、「あなたには東欧州や中央アジアの血は入っていない。そう確信できるの」
ケイにそう言われユウコの顔を見たが詳しい判別は無理だった。
「私と行こうか日本に。一度見てみたいかな」そうユウコに言われ、訪れたい気持ちが自分の中で大きくなったいった。
「私も行くわよ。日本の血が入っているかもだし」
こてこてな東欧州人の顔にしか見えなかったモニカの言葉は無視した。
「ところでモニカ、お前どうやって生活してるんだ。金はあるようだが」
銃で追い回して金をせびってる姿しか想像ができなかった、「失礼すぎるわねあんた、私もたまにあんたと同じように軍の教官やってるのよ」
心を読まれた上に、軍の仕事をやっていたとは驚きだった。
俺がモニカを押し倒して押さえつけてる間に、ユウコは彼女の所持金を数えたがけっこうなものだった。
どういうわけかモニカの顔が真っ赤でうっとりしていた。
「
モニカってケンジのこと好きなの?」そうユウコに質問されるとモニカは急いで逃げてしまった。脱衣場のドアを開けて真相を聞こうとしたら見るな馬鹿と言われて殴られた。ついでにユウコ以外の女の胸を初めて見てしまった。
シャワーを浴び終るとなにやらモニカがユウコに尋問されていた。珍しくモニカが反論せず大人しく聞いていた。
「決まったよケンジ、私が正妻でモニカが側室ってことになった」ユウコの言葉は聞かなかったことにして自分用珈琲を淹れた。
冗談じゃない。ユウコ一人食べさせて行けるかわからないのに、愛人持つとかあり得なかった。それにモニカからはそう言った話は受けていなかった、「普通わかるでしょ!アホウ」
モニカにそう言われたがわからないので具体的にお願いしますと言った。するとユウコがモニカに助け舟を出して、ケンジは鈍感系主人公体質だと説明していた。
ユウコと俺はいつもの職場で働いて、モニカは何故か泊まり込みで軍の仕事をしてくるという。日本への旅費の件があるので働いて倹約しなければならなかった。正直日本に行っても、自分の出生がわかるとは思えなかった。ただそれがわかれば留学先としても、将来暮らす場所としても有力な国だった。
「ところで勉強はどうしてるのよ。大学生になるなら必要でしょう」
それについてはみんなが寝静まってから6時間やっていると言うと、モニカとユウコ二人からベッドに押し込まれ寝かせられた。
「そんなにやってたら死んじゃうよケンジ、私の稼ぎでなんとかするから」
ユウコにそう言われたが自分のエゴなのでそうはいかないと言った、「私も稼いであげるわよ、ずっと頼っていいんだからね」
ユウコにも言われ自分が何か悪いことをしているように感じられた。
いや、この二人は俺のことを心配しているんだ。流石に最近の二時間睡眠が祟ってその晩俺は倒れた。




