それぞれの生きる意味
軍事教練上でやることは、アサルトライフル又はサブマシンガンによる制圧射撃とグレネードの使い方だった。いきなり敵逃避地に乗り込むことはほぼ不可能に思えたので、アサルトランチャと爆弾による侵入も必要に思われた。地雷を含む爆弾に関しては素人だったのでもう一人の教官に任せた。
「アルトマイヤー、お前はなんでこんな小国のテロリスト育成に関わったんだ。勝ち目はないし自身の評価を低くするだけだぞ」
「ケンジ、彼らはテロリストではなく特殊部隊だ。暗殺戦ではほぼ情報がものを言うが、それが正確で技術もあれば不可能ではないよ」
俺はというとここには半端な気持ちで来ていて、そもそもテロ参加者みんな全滅して終わりだと考えていた。万が一、目標を果たしたとしても今度は本格戦争にになる。良い未来なんて何一つ見あたらないので、訓練をきつくして脱落させようとしていた。
ユウコが食事の用意をしたが、モニカも手伝っていた。総勢20名になる所帯の食事の用意はそれなりに大変なはずだが、二人はなんなくこなしてみせた。
「モニカは一人暮らしだったから炊事が上手いんだな、助かるよ。それとお前に関しては軍事指導は要らないんだろう」
「明日ゴム弾による勝負をしよう。ケンジが負けたら指導はいらないよ」
この子の落ち着きぶりから元軍人であることは悟っていた。
食堂と二人の部屋の周辺にはKEEP OUTのロープを大量に張っていた。軍人がレイプ予備犯という認識は私の中では揺るがなかった。
ユウコとモニカは同室だった。実はユウコにも多少軍事教練に参加してもらっていて、自分の身を守る術を身に着けて欲しかった。必ず私の目が届くところでだったが。
そう言えばこの合宿には、もう一人女性が参加していた。士気は高いが自分の身は自分で守れと、男どもへの護衛は一切付けなかった。
「ケンジはレイプに対して敏感になり過ぎてる、たぶん10人中4人くらいしかそういう悪漢はいないと思うとケイは答えた。私の予想より多くて草が生えた」
翌日のモニカとの模擬戦闘は熾烈を極めた。
お互いのヘルメットの上にある目標を打ち抜くか、自陣の旗を得ることが勝利条件だった。
初めからモニカが優勢だった。腕の差というよりSIG550とMP-5の違いだったように思う。劣勢の私は一期にモニカ本体を責めるべく突撃を開始した。勝機と見たモニカは私の旗向かって全力で走り出したが、予定通りだった。俺は旗の目前のモニカに狙いを定め、スイスの優秀な狙撃銃はモニカの目標を打ち抜き勝負が付いた。モニカは負けたことが信じられないと言った趣で立ち尽くしていた。
「今のはなんなの、お遊びだから無茶な作戦を立てたの」
モニカの質問に違うと答えた。
「モニカそれは違うよ、実戦でも同じことをやったはずだ。敵の裏をかく作戦が俺の信条で、負けるなんていつも思っていないよ」
翌日からモニカも訓練に参加したが、他の訓練生とはまったく動きが違った。俺の時と同じような模擬戦を行ったが、訓練生のレベルではなく全戦全勝で無敵だった。
「子どもを訓練して特殊部隊を作るという計画は本当にあったんだな、お前も孤児院出身でその選抜に受かったんだなモニカ」
「結局失敗だったのね、選抜された少年特殊部隊は。あんたのような素人に負けてちゃ、実戦では使い物にならないわ」
「悪いが俺は撤退戦を除けは成功率100%だ。モニカでは相手にならないよ」
モニカは信じられないものを見る目で俺を見た。
ユウコはとモニカは教練を軽くして、皆の食事を作ってもらった。ケイにも聞いたが軍人だからレーションとか食べておけばいいと参加しなかった。
たった三ヶ月で強いテロリストを育成できるはずがなかったので、俺は軍に三ヶ月の延長を申請して承認された。全滅してしまうのはあまりにも悲惨だからだ。
決戦だ。敵国大統領を暗殺する。
「アサルトランチャーで敵の拠点の入り口をこじ開けたら、必ず敵の反撃がある。だがタイミングを見て侵入しなければならない、これはわりと運だ」
何度も行った籠城戦の殲滅を運だと俺は切り捨てた。
「グレネードを投げつけタイミングを計って突入すれば死なないかもしれない、ただそれは実戦経験が少ないお前らには無理だと突き放した」
全隊員とも、軍事教練が始める前と比べ格段に腕は上がっていた。だから俺は敢えて厳しい言葉を隊員に投げつけいかに厳しい作戦か知らせるようにした。
「ケンジ、君は彼らを応援してるのかそれとも挫折させようとしているのか」
「どっちもだ、もし俺とアルトマイヤーが出れば成功率はあがるだろう。だがそんな気はないんだろう?他国のために命を張る意味はない」
そういうとアルトマイヤーは不敵に笑って何も答えなかった。
「モニカは絶対に参加しちゃダメだからな、あくまでここにはユウコの護衛で来ているんだからな。お前がいれば勝てるかも知れない、だが危険すぎる」
「あんたこそどうなのよ。成功率100%の軍神が入れなみんな助かるかもしれない、それをみすみす部下を見捨てる気?」
その問いには応えなかった。俺にとってはユウコとの未来が最優先なんだ。
「ケンジは参加したいの?敵の大統領暗殺作戦」
ユウコの屈託のない言葉に返事が詰まった。
「相手は常に暗殺に備えてる人間だ、いつどこにいるかわからない相手の相手は難し過ぎるんだ。だから俺は行かないし、隊員の生存を祈るだけだ」
ユウコはケンジを正義の人だと思っていたので不思議な気持ちがした。
「独りなら当然行くさ、もともといつ死んでもいいと思っていたのだから。だがユウコと謎生物モニカとの暮らしがある。自分が100%死なないことを考えたいんだ」
訓練が終わった軍事教練場を見渡すと夕日が差していた。爆弾の跡や弾痕が無数に見えている以外は穏やかだった。戦争なんてどうでもいいと大地が笑ってる気がした。
「教官はやはり作戦に参加されないのですか」
部下の一人が聞いてきたので、異国出身の自分に行く理由はないと答えた。
「教官の出身国もあの国に蹂躙されたのは知っています。だからこそもっと力がある我が国での作戦に参加していただきたいんです」
「馬鹿を言うな。この国とあの国では軍事比で5倍の差がある、先の侵攻で和平を獲得できたのはアメリカの軍事介入のお陰だ。お前らもやめていいんだぞ」
食事がまずくなるからこの話は一切しないようにと部下に注意した。
「もうすぐ半年の軍事教練が終わっちゃうねえ、忙しくて楽しかったよ」
ユウコによくやったと頭を撫で、レイプ犯が現れなかったことに安堵した。
「明日リベンジするから勝負よケンジ。今度は負けない」
モニカは鼻息が荒かったが、今度はあっさりフラッグを取って圧勝した。
悔しがるモニカだったが、俺には戦闘中作戦をころころ変える能力があった。戦場では予定通りなんてものはないから、最適解を見つけ迷わず行動するのだ。
軍事教練は終わり、二人と謎生物のとの三人暮らしが始まった。
「モニカはここにいる必要ないだろ?無敵なんだし一人暮らししたらどうだ」
「レイプされたら責任取れるの?いや取ってもらうわよ」
モニカの責任は取りたくなかったので、引き続きここに置いておくことにした。
しばらく休みを取ったあと、俺とユウコはそれぞれの職場に戻った。
俺は建築業、ユウコが洋品店。この生活が一番いいんだ、命懸けで戦場に赴く理由なんてどこにもない。アルトマイヤーやモニカがどうするかなんて知らない。俺なりの夢に向かって歩んでいきたい。それはもう戦場ではないはずだ。
「棟梁、戻りましたケンジです。またよろしくお願いいたします」
棟梁は動かない足で弟子に指示を出していた。頷いただけだったが、軍人に戻らずまたここに帰ってきてくれたのが嬉しそうだった。
「ナガルは不自由な足でまた軍にもどっちまった。どうしようもない馬鹿だ」
予想は付いていた。あいつが軍に入隊したのは祖国のためだからだ。
俺はといえば生きる意味を見つけるために模索中だ。ユウコがその大半だが、人生というのはそれだけではないだろうとも考えていた。
復興しつつある街並みをユウコと眺めながら散策していた。棟梁が貸してくれたシェルターにはあまりお世話にならないで済んだが、次もアメリカが介入してくれるとは限らない。敵大統領暗殺テロ攻撃なんて迷惑なだけだった。
テロ決行日が迫っているのと報をケイから受けた。
死ぬからやめとけという俺の言葉はまったく響いておらず、教練のお礼を言われた。
彼女はなにが何でもこの作戦に参加したいようだった。生きて戻れと一言伝えて電話を切った。死にたがりが多すぎて俺は困惑していた。
そんな奴らとは全く違い、教官として得た報酬で日本製10年落ちの車を買った。戦車を乗り回していたので運転に問題はなかったが、後日免許を取りいかないといけなかった。ユウコと二人でこの街を車で回った。
家に戻るとシャワーを先に浴びたのだが、出る時にまたユウコの着替えを見てしまった。今度は上半身全部裸だったのでユウコを叱った。
「俺は男なんだユウコ、そんな恰好していたら襲いかねない」
「なんでケンジは私を襲わないのさ。これだけ一緒にいるんだから覚悟はできてる。それとも他に好きなな人ができたの?」
それは絶対にないと言って、近いうちユウコを襲う約束をさせられた。
これもたぶん生きる意味の一つだ。童貞の俺は来るべきユウコとの情事に向けて特訓を始めた。ただ腕立て伏せをするだけだったが。
「あんたたちまだだったんだ、ふぅん」
モニカが意味深なことを言うので無視した。
「あたしを練習台に使うといいよ。経験豊富だし」
ユウコの視診では処女確定なくせに何言ってやがる。
ちょっと布団の中で練習をすると中に誰かがいた。
振り返るといきなりキスをされたので意表を突かれた。モニカが潜り込んでいたのだ。そして腕を取り乳房に俺の手も持っていったので本能で揉んでしまった。
大きな乳房の感触は残っていたが、ユウコにさえ触れたことがないのに触れてしまったことに俺は激怒した、「最初はユウコ!これ絶対だからな」
二番目ならいいんだという怪しい言葉を残してモニカは去って行った。




