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生きる意味  作者: 餓狼
2/14

崩壊する日常

街並みは本当に綺麗な場所だったので、休日はユウコとよく二人で散策した。

告白はしたものの彼女の態度はそれ以前と変わらなかったので、あまり喋らずただ並んで歩いた。たまに手を引こうとするとびっくりした顔をされるので諦めた。


ある日ユウコが仕事をしたいと言ってきたのでそれを許した。いつまでも狭い家に閉じ込められるとはもともと思っていなかった。ただ俺が送り迎えをするという条件付きだった。建築屋の棟梁は渋い顔をしたが、仕事の速さと器用さがあったのでなんとか許可を取れた。


ユウコの新しい仕事は洋品店の店員だった。彼女がかわいいので、けっこうな敏腕店員としてすぐに活躍した。俺は材料運び以外に施工にも携わるようになった。


中古で買ったHONDAのカブでユウコの仕事帰りに迎えに行くと、店長らしき男性と彼女は話していた。流石にこの程度では嫉妬はしない。むしろ社交性が戻ってることを喜んだ。店長に俺は挨拶をし帰ろうと


すると、こんないい子なかなかいないから絶対に離すなと応援された。

「最近は明るくなったなユウコ、元に戻ってきたんだろうけど」

「ケンジは全然変わらないね。祖国から出て嬉しくないの?」

嬉しいが今の生活が理想なのかはわからないと俺は言った。


「私は要らない?邪魔なのかな」

ユウコが落ち込みながらそう言ったので、それは神に誓ってないと答えた。むしろ居なくなったら何を支えに生きていいかわからなくなると答えた。


ボロ家のシャワーを直してくれた同僚のナガルが今日は来ていた。

「シャワーが直って助かった。それまでユウコはキッチンの前で裸になって身体を拭いていたので、目のやり場に困ってたんだ」


「半年一緒にいてまだ何もしてないんすか。ピュアですねえ」

それは事実で、奥手な自分に情けなさを感じていた。


「ケンジは奥手さんなんだねえ」

話しを聞いていたユウコはそう言うと立ち去ってしまった。なんだ今のはと困惑しながら、今のセリフは聞かなかったことにした。


日々の生活は順調過ぎる感じで過ぎて行った。俺は建築の仕事を本格的に手伝う様になっていたし、ユウコは楽しそうに洋品店で働いていた。


そんなある日、祖国を侵攻していた国がこの国にもミサイルを撃ちこんで来た。敵対関係にあったし、あの国には資金があったので予想はできた。


「軍人に復帰しようとか考えるんじゃねえぞ。お前はこの国の人間でもないし、義勇兵になんてなる義理なんてどこにもねえんだ」

棟梁には元軍人であることは隠していたが、とっくに気が付いていたようだった。弟子を危険な目に遭わせないようとする忠告に感謝した。


「俺は軍人になるっす、祖国を守りたい」

そう言ったナガルが木材で棟梁に角材で殴られていた。

そのことを俺に愚痴を言いにきたので、鉄板でで頭を殴った。


「臨時に集められた新兵なんて地上戦で死ぬだけだ、やめとけ」

そう言ってもナガルは諦められないようだった。


確かに遠距離ミサイルだけではなく、爆撃機による空爆が日増しに激しくなっていた。軍事施設を攻撃というのは敵国の発表は嘘で、明らかにこの街を狙っていた。

この街には瀟洒な中世の要塞があった。だがあそこに隠れても爆撃されたらひとたまりもなかった。現代戦は空を制した者が勝つ。


ホテルにいた時に使っていた銃は西側のスイス製SIG SG550だった。ユウコを守るためで軍人に復帰する気などさらさらなかった。


この高性能ライフルを元の国で与えられてたのは腕がいいからだ。今この国も侵攻されようとしてることを考えると複雑な気持ちになった。ただユウコを守ることは絶対だ。銃を見せて義勇兵募集に行き、入隊する気はないが手伝うかも知れないと言うと喜んでボディアーマーとヘルメットを支給してくれた。


紛争状態に突入してから棟梁の建築屋も随分暇になった。爆撃で壊れた家は放置され直そうとはしないので仕事は増えなかったのだ。


「ナガルは戦争屋になっちまったが、お前はここにいろよ」

内装担当のナガルが抜けたことで俺がその仕事をやることもあった。棟梁の二度目の忠告は俺も戦いに出ると見ているからだろう。実際心は揺れていた。


「私のお店もお客さんが減ってるんだよ」

ユウコの言葉にそうだろうなと思った。危機的状況下になれば、人々はお洒落を楽しむ余裕はなくなり家で身を潜めることになるからだ。


「残念だけどこの街を離れてまた旅をするか?今の仕事を手放すことになるのは本当に残念だが、ユウコを守りたいんだ」


「ダメ!せっかく仕事が楽しくなってきたのに辞められない」

どうせユウコはそう言うと思っていたので、軍服に着替えライフルを構えて見せた。これは国のためじゃなくユウコの軍隊だと言った。


ある日ユウコを店に送った後で職場に行くと、棟梁がいなかった。嫌な予感がしたので彼の自宅に急行すると、建物に挟まって動けない彼がいた。先ずは爆弾の破片で傷ついた脚の止血をし、邪魔な木材をどけて助け出した。


仲間を呼び彼を病院に運んでもらったが、かなりの重症で後遺症が残るかも知れなかった。いつ死ぬかどうかわからない日常に戻って来たと俺は感じていた。


「ヘマしちまった、情けねえ」

そういう棟梁に戦争にヘマもクソもない。誰だっていつ死ぬか分からないのが戦争だと説いた。彼は何も言わなかったが絶望感を感じているのを感じた。


「俺の家の地下に見様見真似で作った簡易シェルターがある。ケンジは女とそこで住め。先が長い人間が生き延びるべきなんだ」

棟梁はどうするんですかと聞いたら、建築屋の社長が一件しか家がないはずないだろうと言った。彼のナガルや私への気持ちが伝わったので引っ越すことにした。


「ユウコ、しばらくの間だがここに住もう。狭いが必要なものは揃っていて、紛争が止んだらここを出て新しい街を探そう」


ユウコの店もあの爆撃で休店していた。二人とも職を失ってしまったが、倹約家な二人なので貯金はそれなりに残せた。


紛争地帯で長いこと暮らしていたので、俺の感覚はおかしかった。アメリカや西欧州に住めばこんな目には合わないが、異国すぎてピンと来なかったのだ。


「日本はどうなのケンジ。私たち日系人じゃない」

「あの国は入国審査がめちゃめちゃ厳しいと聞いている。ユウコを助けた時にレイプ魔三人を殺しているので俺は犯罪者だ。祖国に帰され死刑になるかもしれない」


正直、どの国に行っても幸せな未来は想像できなかった。異国の人間として底辺労働に従事させられ、一生文句を言いながら死んでいく未来だけは見えた。


二人とも毎日が休日なので爆撃のない日に街を眺めに行った。思ったほど街は崩壊しておらず、大聖堂や要塞は美しい佇まいを見せていた。夜になると灯りが点き街はちゃんと呼吸をしていた。そしてこの美しい国を守りたいと思った。


この国の戦闘機と敵国の戦闘機には大きな能力差があり、じわじわと侵攻を許しとうとう地上部隊まで攻め込んできた。ところがとうとうアメリカが重い腰をあげ爆撃機をこの国に導入するという。戦局を押し戻すチャンスだった。


「ユウコ、俺短期間だけ義勇軍に参加する」

寂しいから嫌だとユウコに引き留められたが、現実問題職がない二人には必要だと言った。給料がいいのでそれなりに稼いだら辞めるとも伝えた。


「生きて帰ってこれる?約束だよ」

勿論だと言い、ユウコの元に必ず戻ると伝え軍に入隊した。


軍経験者ということですぐに前線に送られた。

全然嬉しいことじゃないが、どうせやるなら早い方がいいとも思っていた。導入された旧世代ステルス爆撃機のせいで、敵の地上部隊は国境近くまで後退していた。


「たいした数じゃないし士気も下がってようだ」

楽勝だと思ったが、こちらは本当に素人だらけでライフルを持たせていてもただの飾りだった。いっそ爆弾背負わせて特攻させたいくらいだった。それでも我々の素人地上部隊が、敵地上部隊をさらに押し戻していた。


しかしユウコに服を買ってあげた、街だか村だがわからない場所に敵は隠れた。

「人質取るくらいならもう帰れよ」

久しぶりに独りごとを呟いた。


迂闊には動けないので敵の動向を見ていると、他の部隊が敵に特攻を掛けていた。すると次々と友軍戦士たちは倒れていった。

「待ち伏せ作戦にまんまと嵌るとか、あいつら本当に軍人か」

そう思ったが妙な胸騒ぎが、私の足を敵陣に向かわせた。


匍匐前進と遮蔽物の影に隠れながら敵に迫ると、案の定見慣れた顔があった。ナガルが素人丸出しで敵に向かって行ったのだ。


建物に隠れていた敵の歩兵がナガル狙ってアサルトライフルを放ち、彼は倒れて立ち上がれなかった、「ほんとにろくなもんじゃねえ。素人は外で見ていやがれ」


叫びながらこちらの位置を教え特攻した。

走りながらでもSG550は三点バーストで敵を確実に仕留めてゆく。なんとか五人を倒したところでナガルを回収し民家に逃げた。


「悪いな、こいつの治療が終わったらすぐでてゆく」

そう言ったところで、その家にいたのはユウコと変わらないくらいの少女だと気が付いた。穴倉での出来事を思い出し危険だと思った。

「こんなとこに一人で居ちゃダメだ。早く安全な場所に逃げろ」

少女が何も言わないので取り敢えずナガルの治療をした。


馬鹿が二人も居たせいで命を掛ける羽目になった。ナガルを寝かして置き、自陣までひきかえした。そして装甲車に乗ってまた少女の家に戻り、二人を乗せた。装甲車は自陣を超えてユウコのいる街まで一直線に走らせた。


「ただいまユウコ、ちょっとお客さん二名連れて来た」

小さなシェルターには限界の人数だった。

が、ナガルには軍に回収依頼を出したのですぐに引き取ってもらおう。問題は何も喋らない少女だ。あそこにいたらすぐにでもレイプされ殺される。後日、どこかの施設に預かってもらおうと考えていた。教会でもいいだろう。


「こんにちわ。お名前を教えて」

すぐにユウコが少女に話し掛けていた。

「モニカ」

一言だけ答えたところが昔の誰かさんに似ていた。


ナガルはすぐに軍に回収されたので、モニカとユウコを同じベッドに寝かせ俺はちいさなソファで寝ることにした。ユウコはベッドに呼んだが三人寝れるはずがない。


翌日ユウコに、モニカが性被害を受けてないか聞いてみた。すると彼女のパンツを脱がして中までユウコは見た、「大丈夫なんじゃないかな」

そうユウコが言った。


いきなり目の前でそういうことをして欲しくなかった。別にちゃんと見えた訳ではないが俺は男だ。煩悩が振り切れそうになりベッドを借りて収まるのを待った。

そもそも何を見て確認したんだと、まだ煩悩は消えなかったが彼女のことはユウコに任せた。私は結局給料をもらえないまま帰ってきてしまった。









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