謎の敵
俺は依頼を受けた図面をCADを操作しながら書いていた。しかし、エンジニアを目指しても過去の軍人時代の負の遺産が限りなく追ってくる。先日の戦闘でそれを思い知らされた。
「紅茶を淹れたわ、カモミールティーよ」
これは鎮静効果があると言いながらモニカはそれを俺に差し出した。
「モニカ、この間のようなこの家への襲撃はまたあるのだろうか。人を殺すことしかしらなかった俺に普通の生活は無理なのか」
相次いで質問を投げかけると、彼女は問題ないと言い放った。
「私とケイコがケンジを守る。だから心置きなく仕事をしていなさい」
「そんなこと許せるわけがない。守るのはこの死神だ」
虚勢を張って彼女に返事をした。
「じゃあこうしましょ。みんなで新しい生活を成功させる。それならいいでしょう?」
そうだった。俺一人空回ってギスギスさせてはいけないのだ。
ケイコも誘って3人で屋上に星を見に来た。
もっとも屋上にすら防弾ガラスが張られてしまったが、夜空は果てしなく澄んで見えた。夏なのにオリオン座が見えていた。無理もない、今は深夜2時なのだ。
「綺麗ね。安全な国でこの星々を見たいわ」
モニカは目をきらきらさせながら言った。
「そうね。でもやるべきことをこの国のためにしてから行きたいわ」
ケイコは覚醒したこともありまた戦場に行きたそうだ。
図面の納品が終わったある日、二人を部屋に呼んで遊びの計画を立てた。
「一週間くらい旅行しないか?この国の近くで」
地理的に考えるとロシアがこの辺の大国だ。しかし問題ある国でもあった。
「治安のことは気にしなくていいんじゃない?私たちのがよほど治安悪いわよ」
ウィンクして微笑むモニカが可愛かった。
「でも軍人ってバレないかしら?同盟国だから大丈夫だと思うけれど」
ケイコはやや不安がってた。
「鉄道旅行にしようか、シベリア鉄道の旅を」
広大なシベリアを駆け抜けるあの鉄道には大いに興味があった。
二人からは異論はなく、この案は採択された。
「ハンフマン、お前も同行してもらうけど自分の身は自分で守れよ」
元軍人の彼に念を入れるために行った。
「いやあ、平和な生活に慣れてしまってどうでしょうね。それに武器もない」
「武器は持って行くぞ。裏から手を回してそういうことになっている」
敵国大統領暗殺の首謀者にして立役者、そういうとロシアの軍関係者はかなり興味を示し武器の携帯を許可したのだ。
「これってロシア大統領も今回の旅の件知ってるってことなのか?」
そういうとアルトマイヤーが答えた、「外務省を通じてだがおそらく知ってる。だが荒事を引き起こしたりは望んでいないだろう」
そうではなくても変な依頼が舞い込んだりしないか心配だった。
しかしその場しのぎで生き抜いてきた俺たちだ。またなんとかするさと思い直し旅の支度をすることに決めた。
モスクワを出ると予約した一等客室と二等客室に別れた。
それぞれ二人づつだ。
「待て待てなんで二人とも来るんだ。一等客室とは言え広くはないからな」
ベッドでくつろいでるケイコとモニカに言ったが無視された。
「え、ハンフマンが嫌だからだけど」
モニカの言葉は容赦がなかった。
ふたつのベッドを二人に明け渡し、ハンフマンが残された二等客室に行くことにした。
「悪かったな女たちが我儘で。俺は今夜はここで寝るよ」
そういうとハンフマンは微笑んで言った、「モテモテで羨ましいねえ。おじさんの俺には興味がないんでしょうけど」
30才程度に見えるハンフマンはそれなりに見えると思うんだが...
「酒でも飲みに行こう。日頃からよく働いてくれる感謝に奢るよ」
そういうとハンフマンは嬉しそうに付いてきた。
ウォッカを飲みながら二人とも盛大に酔っぱらった。
「いつかは今みたいな図面の委託ではなくて会社を作って仕事を受けたい。ハンフマンは付いて来てくれるか」
彼は一瞬びっくりしたような顔をして、「もちろんですとも是非やらせてください!」そう答える彼の声に酔いは混ざっていなかった。
その後は二人の生い立ちや人生観の話に盛り上がった。
「男二人で盛り上がっちゃって...」
ケイコがその様子をみて拗ねて去って行った。
「ごめんハンフマン、問題発生に付き部屋に戻る。また話そうな」
そう言うと彼は手を振り検討を祈ると言った。
「ちょ、酒臭いわよ。どんだけ飲んだの?」
モニカが鼻をつまんでそっぽを向いた。
俺は食堂で頼んだ珈琲を飲みながら酔いを醒ました。
「シャワー浴びてくる」
そういうと二人とも付いてきた。
「二人とも脱ぐなよ?いいな。でないと何するかわからないぞ」
「何もしないから付いていくんです!」
ケイコが珍しく怒りながら怒鳴った。
「だがそれは...」
二人の恋人にお互い遠慮してるうちに何年も経った。彼女たちはもうじれったいのだ。
大きいカップと小さなカップのブラが無造作に床に放られた。
そして二人はパンツも脱ぎ捨てると俺が浴びていたシャワー室の入ってきた。
「今日は逃げきれないよ」
モニカは大きな乳房を俺の身体に当ててきた。ケイコも必死でそれを背中に押し当てていた。俺は二人にシャワーを譲り、生まれたままの姿の彼女たちの身体を洗い始めた。
「今までごめん。これからはちゃんとする」
二人は快楽にとろんとした目でその言葉にうなずいた。
その日から俺は車中の通い夫になった。
片方には目隠しと耳栓をしてもらい、一人を愛した。
「ケイコ、愛してる」
そう言いながら彼女の全身を摩りキスをした。
「ケンジ愛してる。結婚してね」
そういう彼女の言葉に頷いた。
最後まではまだしない。
俺の中で二人のやがて妻になる女たちをどう扱うかまだ決まっていなかったからだ。
目隠しと耳栓を取ってモニカにもキスした。
「私は明日なの?別にいいけど期待はしてるわ」
そう言い終わらないうちにパジャマの上から乳房を鷲掴みにした。
「え、ちょっと...でも気持ちいい」
パジャマの下に手を伸ばしブラを押し上げながら揉みキスをした。
ハバロフスク駅に着き、ロシア有数の街を散策した。電車の出発は明日だ。
動物園や水族館を巡り、三ツ星レストランで食事をした。
「電車の食堂で食えるものと同じだが格式高そうで緊張する」
そういうと皆頷いた。
「三ツ星なんて初めてで嬉しいですよ」
ハンフマンが興奮していた。
食事を終え散策をしていると異変を感じた。
「空気が変だ。皆気を付けろ」
身を隠せる場所を探し、それぞれの銃を素早く組み立てるよう指示を出した。
〝パァーン〟
モニカが空に向けてドラグノフを放つ。敵の存在を認知してる様を知らせる合図だ。
数秒遅れて敵の銃声も聞こえた。
待ち伏せていたなら木の上にスナイパーが潜んでいるかも知れない。俺は木に向けて乱射したが何の反応もない。地上戦と考えてよさそうだ。
ハンフマンはあえて表に出て敵の様子を探る。それはいつかの我々への奇襲の恩返しだった。
「ケイコ、モニカ、後は敵からの動きを待つんだ。情報を与えた方が負ける」
そう言うと二人は警戒しつつも静かに座って待った。
俺は既にモスクワ大使館にこのことを伝えていた。彼らの工作でなければ軍か警察を動かしてくれるだろう。
「敵影を発見!木から木へ隠れるように移動しています」
ハンフマンからの無線で俺とケイコ、そしてモニカは散会した。
二人は一流の軍人だ。俺が出過ぎなくてもやるべきことをするだろう。
戦況の統括に俺は務めた。
敵をまず発見したケイコは威嚇射撃後敵に投降を促した。
「抵抗すれば撃ち抜きます」
SAKOを敵に向け一瞬も隙を見せない彼女にまず一人投降した。
「敵の数は5人。欺いたら殺すと言ったので確かでしょう」
ケイコからの一報が入る。
しかし残り4人は依然わからない。
ボディーアーマーもなく私服の防寒着ではこちらが不利だ。
三人を安全な場所に隠して俺が出ることにした。
「無茶よ、私たちをもっと頼って」
モニカが悲痛な声を上げたが、俺は二人を守る義務があると言い聞かせた。
走りながら撃ち隠れるを繰り返し3人がいぶり出された。
「投降しろ勝ち目はない。既にお前らの姿は隊員たちが視認した」
その後銃撃戦に突入したが圧倒的な射撃技術を持つ3人とテロ軍人の前に彼らは屈した。
直後現れたロシア警察に敬礼し事情を伝えた。
「はああ、ロシアってなんなの?私たちに向かってテロが発動するなんて」
大統領ではなくとも親衛隊の命の線もある。
ともかく彼らテロリストたちの狙いは我々だった。
鉄道旅行を切り上げる準備をしていると一人の軍人が訪ねてきた。
その男はロシア軍が護衛するから旅を続けてくださいとのことだった。
「あなた方は奇跡の軍人です。もう何もさせませんのでごゆるりと旅を続けなさってください」
全てに疑心暗鬼だったが逆らうときっともっと厄介なことになりそうな気がした。
「それではお言葉に甘えようと思います。護衛感謝いたします」
そういって我々は旅を続けた。




