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9.異変


「魔女の宝は僕のものだ!!」


 ルシウスは目を覚ますとロビンの右腕を掴んだ! ロビンは怯まずにルシウスを威嚇した。


「それはお前のものじゃない!」


「ロビン!!」


 ミラが近づこうとすると、ルシウスが何かの呪文を唱え始め、どこからともなく現れた黒い煙がロビンの周りに集まり始めた。直感であの煙に触れてはいけないと感じ取り立ち止まった。


「ロビン! 逃げて!!」

「嫌だ! お前の大事な物なんだろ! 死ぬ気で取り返せよ!」

「そんな事言ったって・・・」


 その時、ロビンとミラの体が光った。日付が変わり、猫になったのだ。


「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 ルシウスは茶トラの猫になったロビンを見た瞬間、大きな叫び声をあげるとふわふわの猫の手を放り投げてあっという間にどこかに消えてしまった。


 投げられた茶トラはどさりと地面に落ちた。同じく赤毛の猫になったミラがすぐに駆け寄った。茶トラはヨロヨロと起き上がりながら、何かを口で拾った。ミラのペンダントだった。


「ミャアァァーー!」


 ミラが飛び跳ねて喜ぶのを見ると、茶トラはペンダントをミラの近くに置いて、自分の服の中に入って行き、目を閉じてしまった。疲れているようだった。


 レオがコンパスに戻ってしまったので、ミラは自分の服の近くまでコンパスを移動させ、藪の中に置きっぱなしになっていた荷物を引っ張ってくると寝袋を出して広げた。もう一つ寝袋を出して茶トラの上に掛けると、自分の寝袋の上に戻り前足をふみふみした。


(そういえば、ルシウスがペンダントの事を『魔女の宝』って言ってたわね。ロビンもお母さんのペンダントが特別みたいな事言ってたし、何か知ってるのかも・・・人間に戻ったら聞いてみよう。)


 ミラは寝袋に入ると、茶トラの方をそっと見た。




 次にミラが目を覚ますと人間に戻っていた。寝袋の中で服を着ると、ロビンの様子を見に起き上がった。ロビンは服を着て寝ていたが、右手首に不思議な紋様があった。


(何かしら、これ。)


 ミラが近づいて見ていると、ロビンの目が覚めた。


「なんだよ。」

「わっ! 起きたの? おはよう、ロビン・・・あのさ、その手首の模様って前からあったっけ?」

「模様?」


 ロビンが自分の手首を見ると驚いていた。


「なんだこれ? 泥汚れか?」

「泥じゃ無いでしょ。それルシウスに握られていた方の腕よ。」

「はぁ? まさかあの時、何か魔法を掛けられたのか・・・」


 心なしかロビンはいつもより調子が悪い気がした。ミラはコンパスに触れると、子豹になったレオに挨拶した。


「おはよう、レオ。」


 レオも嬉しそうにミラに頭を擦り付け、それからロビンに頭を擦り付けた。すると、しきりにロビンの右手首の匂いを嗅いでいた。


「くすぐったいな。何するんだよ。」


 言いながらレオの頭を撫でた。

 ミラは宝物をどうするかロビンに聞いてみた。


「あぁ・・・そうだな。袋にでも詰めて持ち出すか。でもその前に、もう一眠りするかな。」

「・・・?」


 ミラはロビンに違和感を感じた。


「ちょっと、宝物を持ち出すのよ? いつもなら、よっしゃぁぁ!!とか、楽しみだな!とか言って張り切るじゃない。どこか具合が悪いの?」

「・・・そうだよな。いや、そうだったか?」


 ロビンは自分でも不思議そうにしている。一体どうしたのかとミラが見つめていると、ロビンはよろよろと立ち上がり、荷物から出した袋に宝を移し始めた。が、やはり元気が無いし、目も輝いていない。明らかにおかしい。不思議に思いながらミラも袋を取り出すと手伝い始めた。

 レオの案内で森を出ると、そのままエリーの待つ村へ向かった。


「これです! これがイワンのくれた婚約指輪です!! あぁ、これでイワンと仲直りが出来るわ! お2人とも、どうもありがとうございます!」


 エリーが涙を流しながらお礼を言うと、宿の方へ走り去って行った。


「良かったわ。」


 ミラが笑顔でいる一方、ロビンは興味なさそうにしていた。


「他人の幸せがそんなに嬉しいのか?」

「そうよ。なによ、お金にしか興味がないから、そんな事言うんだわ。」

「・・・」


 ミラはまた妙な違和感を感じた。そういえば、ロビンが宝物の換金をしようと言い出さない事にミラは気がついた。


「ねぇ、ロビン、本当にちょっと変よ。どこか悪いの?」


 ミラが心配して近寄ろうとすると、ロビンがミラを突き飛ばした。


「ちょっ・・・ひどいわね! 心配してるのに!」

「触るなよ。少し頭痛がするだけだ。」


 そう言いながら、ロビンの足元がふらついていた。ミラが様子を見ていると、そのままロビンは倒れてしまった。近くに居たレオが驚いている。ミラも慌ててロビンの傍に走り寄った。


「ロビン!?」


 腕を触ると熱かった。熱があると気がついた時、遠くから声がした。


「ミラさん! エリーから話を聞きました! ありがとうございます!」


 幸せそうなイワンとエリーが手を振りながらミラ達の元へ歩いて来ていた。


「エリーさん、イワンさん!! ちょうど良いところに・・・!!」


 ミラはエリー達にロビンが倒れた事を説明すると、快く宿の一室を貸してくれた。婚約指輪を見つけてくれた恩人だからと、そのまま村の医者まで呼んでくれた。ミラは2人に感謝した。


「熱が出ていますね。この薬を飲ませてください。」


 医者が処方したのは解熱剤だった。ミラは父親と薬を作っていたので、その効能をよく知っていた。

 苦しそうに呻いて寝ているロビンに、ミラは薬を飲まそうとした。


「ロビン、起きて。お医者様が薬をくれたから飲んで。」

「・・・うるさい。」


 ロビンはミラの手を払うと頑なに薬を拒んだ。ベッドの足元で丸まっていたレオが心配そうに顔を上げた。


「ロビン、飲まないと良くならないのよ?」

「自分で飲むから放っておいてくれ。」


(いつもは素直に言う事を聞いてくれるのに、調子の悪いロビンは手が掛かるわね。)


 ミラはげんなりしながらロビンのベッド近くのサイドボードの上に薬と水の入ったコップを置いた。

 結局ミラはロビンを心配して、用事がある時以外はほとんど同じ部屋にいるようにしたが、口をきくことはなかった。

 夕方になりロビンから寝息が聞こえたため、起こさない様にそっと額に触れてみた。解熱剤が効いてもいい時間なのにも関わらず、ロビンの熱は下がらなかった。


(おかしいわね。この薬ならもう効果が出ているはずなのに・・・)


 ミラは無理を言ってもう一度医者を呼んでもらいロビンを診てもらった。しかし、熱が出ている以外に異常はないという診断だった。そこで右手首に黒い模様が出ていた事を思い出し医者に伝えると、慌てて手首を見た医者が驚いた。


「これは悪魔の呪いです! あなた達、悪魔と会ったのですか? 昔から村の周りで不審死があると、必ずこの黒い紋様が体のどこかにあるのです。これは私ではどうにもなりません。」

「悪魔の呪い? ・・・不審死?」


 ミラは驚くと共にショックを受けた。


「魔女に頼めば、呪いを解いてくれるかもしれませんが・・・」

「呼びます! 魔女はどこにいるんですか?」


 医者が困った顔をすると、少し考えた後ミラの顔を見た。


「私の知り合いに腕のいい魔女がいますが・・・強欲な魔女なので、高額な治療費を請求されるかもしれません。それでもよろしいですか?」


 ミラは一瞬躊躇ったが、ルシウスから奪った金貨がたくさんある事を思い出し、すぐに返事をした。


「構いません。すぐに呼んでください!」


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