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7.大切な指輪


 翌朝。ミラとロビンは朝食を済ませた後、レオの案内でペンダントの行方を探す事にした。


「レオ、ペンダントはどこにあるか分かる?」


 レオは神経を研ぎ澄ますと、西の方角を向いた。


「やっぱり西にあるのか。昨日と変わってないな。あんまり遠くに行ってなきゃいいが。」

「どんなに遠くに逃げても取り返してみせるわ! だって私達には魔法のコンパス、レオが居るのよ! 絶対に見つけて私を騙した事を後悔させてやるんだから!」

「おぅ! その意気だ、ミラ! 俺の狙ってた宝を横取りしたんだ。あいつは許さねぇ!」

「ロビン、今おかしな事を言わなかった?」

「聞き間違いだろ。」

「嘘よ!」


 2人は暫く睨み合ったが、レオが歩き始めるとすぐに後を追った。




 街を出てまた平原を歩いたが、なかなか辿り着かない。日が暮れるまで歩き続けたが、ルシウスの姿を見る事は無かった。結局何日も歩き続けた2人は、小さな村の前に辿り着いた。


「田舎の村だな。」

「本当にルシウスはこの方角に居るのかしら?」

「コンパスを信じるしかない・・・おい、本当に合ってるんだろうな?」


 ロビンが圧を掛けると、レオは頷いてまた西の方を向いた。


「ねぇ、ロビン、私疲れちゃった! 今日1日だけ、この村に泊まらない?」

「あぁ? またかよ。早く行かないと追いつかないぞ。」

「でも何日も寝袋だと疲れが取れないの。お願い、1日だけでいいから!」


 ミラが胸の前で両手を合わせて涙を浮かべて懇願すると、ロビンはげんなりした。


「分かったよ。ったく、本当に取り返す気があるのか。」


 ロビンはミラを置いて村の方に向かって歩き始めた。


「ねぇ、どこに行くの?」

「宿を探して来るからお前はそこら辺でも見てれば。まぁ、家畜しか見当たらないけどな。」

「・・・何よ、あの言い方。本当に嫌いだわ、あいつ。ねぇ、レオ?」


 レオはミラの顔を見上げると小首を傾げた。


「まぁ、可愛い!」


 離れた所で家畜の世話をしていた村娘が、ミラとレオに気がついて走り寄って来た。


「私動物が大好きなんですけど、こんな子初めて見ました! 触ってもいいですか?」

「レオ、いい?」


 ミラが尋ねると、レオはサファイアの様な透き通った青色の瞳を村娘に向けて、足に頭を擦りつけた。


「きゃああ! 可愛いわ! レオくんって言うんだ!」


 村娘がレオをもふもふ撫でて可愛がると、ミラは黒髪のイケメンがこの辺りに来ていないか尋ねた。


「黒髪のイケメン・・・それって、紫色の瞳の、背の高い男ですか?」

「知ってるの!!?」

「はい。その男、私も探しているんです。実は・・・」



 村娘の名前はエリー。この村で生まれ育った娘だったが、2週間前に恋人のイワンに求婚されていた。その時にダイヤモンドの指輪を貰い、家畜の世話の多いエリーは汚れないようにとネックレスに通して身につけていた。


 しかし1週間前に、村に見慣れない黒髪の男がやって来た。黒髪の男はそれはそれは美しい顔をしていて、エリーを見つけるとお茶に誘ってきた。しかし、心に決めた人がいるとキッパリ断ったエリー。

 けれど男は諦めず、さらにしつこくエリーの跡をつけ回し、最後は金を出すからエリーのネックレスに通している美しい指輪が欲しいと頼み込んできたという。

 勿論断ったエリーは、その途端なぜか眠くなり、家畜の世話小屋で寝てしまった。目を覚ますと大切にしていたダイヤモンドの指輪がなくなっており、それから恋人には合わす顔がなく、今も話もできていないというのだ。


「なにそれ! あなたの指輪を盗んだに違いないわ! 最低! 実は私もお母さんの形見のペンダントを盗まれたのよ。絶対同じ奴だわ。今あのイケメンを追いかけてるから、捕まえたらあなたの指輪も取り返してあげる!」

「まぁ! ありがとう! ・・・でも、あの男はただの人間じゃないかもしれないから、気をつけてください。」

「え? どういう事?」


 ミラは首を傾げた。


「この辺りに伝わる伝承に、光り物が大好きな悪魔が森に住んでるって話があります。あなたも狙われたなら、もしかしたらあのイケメンは、その悪魔なのかもしれないわ。」


 ミラは心当たりがあった。足を勝手に動かされたり、眠らされたりしたのだ。それに人間離れした美しい顔をしている。となると、本当に人間じゃないかもしれない。

 相手が魔法使いじゃなく悪魔なら、どんな対策をすれば良いのだろうか。


「その悪魔の弱点とかはないのかしら?」

「伝承では猫が嫌いと言われています。なんでも、遠い昔に北の魔女の秘宝を盗むのに失敗して猫にされてしまったとか。」


「ミラ!!」


 後ろからロビンがやって来た。


「宿の部屋が取れたぞ。お前も荷物を置きに行けよ。」


 宿と聞いて、エリーがロビンの方を向いた。


「・・・あの、すみません。宿の受付に若い男性は居ませんでしたか?」

「? 居たけど。」

「その人、元気そうでしたか?」

「あぁ? 普通だったけど・・・あんたの知り合い?」


 エリーはロビンの返事を聞くと、悲しそうににっこりと笑った。それを見てミラは宿の男性がエリーの恋人イワンなのだと気がついた。好きなのに会いに行けないエリーの事を思うと、ミラは切ない気持ちになった。


 宿に着くと、ミラは受付の男性を見た。温和そうな顔をした男性だった。ミラと目が合うと、軽く会釈をしてにっこりと微笑んでくれた。


 ミラは宿の部屋でベッドに座ると、膝にレオを乗せたまま10分ほど床を睨んで動かなかった。暫く様子を見ていたロビンがミラを心配していた。


「お前・・・なに考え込んでるんだよ。」

「え?」

「どっか具合でも悪いのか? さっきからずっと床を見てて一言も喋ってないぞ。いつもなら1人でペラペラ喋ってるのに。」

「考え事をしててね・・・さっき外で会ったエリーと、宿のお兄さん、恋人同士なんだって。でも、ルシウスに婚約指輪を盗られてから会ってないらしくて。エリーさん悲しそうだったし・・・なんとか力になってあげられないかな?」


 ロビンはミラから顔を背けた。


「他人の事を心配してる場合かよ。それに、ルシウスの居場所だって分かってないんだ。」

「あっ、そうだった。エリーさんが、ルシウスは悪魔でこの村の近くの森に居るかもしれないって言ってた。」

「そういう事は一番に言えよ!!」


 ミラはロビンに近づくと、ニヤニヤしながら囁いた。


「聞いて驚かないでよ。ルシウスの弱点は猫らしいのよ。」

「まじか! じゃあ夜中に奇襲を掛ければすぐ逃げ出すだろうな。」


 ロビンもニヤッと笑うと、2人は森の場所を見つけたらその日の夜のうちにペンダントを取り返すことを決めた。


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