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20.友人の証


 ミラは涙を拭くと、ロビンに今まであったことを説明した。


「あぁ!? 俺が本になったって!?」


 ロビンは驚いた後、真剣な顔でミラを見つめた。


「お前、中身を見たのか?」

「見てない。」

「はぁ〜・・・良かった。」


 ロビンは胸を撫で下ろした。


「なによ? 私に聞かれたくないことでもあるの?」

「ち、違う! ただ、本にされたって事は、他人に知られたくないような恥ずかしい事まで載ってるんじゃないかと思ってだな・・・」


 ミラはそっぽを向いたが、そのまま目だけ動かしてロビンを睨んだ。


「ふぅ〜ん。つまり、隠し事はないって訳ね。」

「俺を疑ってるのか? それよりお前、今変な顔してるぞ。」

「なっ・・! 変な顔なんかしてないわよ!」


 レオは久々に見るミラとロビンのやり取りを笑顔で見守った。



 本にした人々が帰り終わる頃、エメラルダとジュードがミラの所へやって来た。


「ミラ殿、改めて礼を言う。」

「いいんです。それより、ジュードさんが見つかって良かったですね。」

「あぁ。ありがとう。」


 エメラルダは微笑んだ後、ミラの隣にいるロビンを見た。


「ロビン殿、この度は申し訳ない事をした。それで、だ。2人は猫になる呪いを解くためにルピアナの元へ行こうとしているのだろう? お詫びに、良いものをやろう。」


 ロビンは「良いもの」という言葉に目がくらんでエメラルダの近くにやって来た。ミラもなんだろうと首を傾げる。


 エメラルダは真っ赤なルビーが嵌め込まれた美しいブローチをロビンに手渡した。


「これがあればルピアナの手下のドラゴンに道を通して貰える。これはルピアナの友人の証だ。」


 ミラがブローチを覗き込んだ。宝石の輝きは美しく、高級そうな印象を受けた。


「友人の証・・・そんな大切なものを頂いてもいいんですか?」

「うーむ。友人の証を人にあげるのは、よく考えたら気が引けるな。では、猫になる呪いが解けたら返してくれ。」


 ミラはにっこり微笑むと頷いた。


「わかりました。じゃあお借りします。必ずお返しにきますね。ロビン、行くわよ!」


 ミラは元気に城の外に飛び出した。レオがその後を追う。ロビンはルビーのブローチを魔法の巾着にしまい外に出ようとしたが、エメラルダに呼び止められた。


「ロビン殿、君の本の中身を読ませてもらったよ。」

「・・・なんだと?」


 ロビンの表情が曇った。


「怖い顔をする必要はない。君には同情する。猫になる呪いを解けば、その肩にのし掛かる重荷からも解放されるだろう。だが果たして、呪いを解いても君は幸せになれるのかな? 考え方を変えたらどうだ。」

「・・・分かったような事を言うな。」

「君には同情していると言っただろう。」

「俺の過去を勝手に覗いて、勝手に同情なんてするな。」


 ロビンが睨みつけると、エメラルダが何か言おうとしたがジュードがそれを止めた。ジュードが笑顔で首を横に振るのを見ると、エメラルダはため息をついた。


「・・・分かった。もうこの話は終わりにする。君達の旅の幸運を祈るよ。それとミラ殿はまだ子供だ。しっかり守ってやってくれ。」

「分かってるよ。」


 ロビンが城を出ると、外で待っていたミラとレオが駆け寄って来た。


「遅かったじゃない。何か話してたの?」

「大した話じゃない。それより、北の街道を進んだとしても橋が無いだろ。これからどうするかな。」

「それなら大丈夫よ。もう大雨が降る心配はないから。」


 ロビンは怪訝な顔をした。


「なんでだよ?」

「あの大雨もエメラルダさんの仕業だったのよ。多分わざとじゃないと思うわ。魔力が大き過ぎて、天気まで操れるみたいだったの。大泣きした時に大雨が降って、泣き止むと雨も止むの。」

「なんだそりゃ!? あの魔女、随分迷惑な奴なんだな。」


 ミラはニヤッと笑った。


「北の魔女になりかけたんだって。でも辞退したらしいわよ。」

「北の魔女だと!?」


 ロビンは先ほど睨みつけてしまったことを後悔した。一歩間違えればまた本にされるどころか命の危機さえあったかもしれない。


 ミラは歩きながら、城で過ごした1ヶ月間の事をロビンに話して聞かせた。それから花の髪飾りの花びらが一枚なくなってしまった事を告げると、目をうるうるさせてロビンを見つめた。


「これ気に入ってたのに、花びらが無くなっちゃったの。すごく気に入ってたのよ、ロビン。」

「あぁ、そうか。残念だったな。でもそういうもんだから仕方ないな。」

「そうよね。でも、5枚揃ってると本当に綺麗だと思うの、ロビン。」

「まぁ、それはそうだな。」

「だから、新しい髪飾りを買って欲しいなぁ。これと同じやつがいいなぁ。」


 ロビンは足を止めた。


「おま・・・これいくらしたと思ってるんだ!かなり高かったんだぞ! せめて全部使い切れよ!」

「分かってるけど、オシャレする時用にもう一個欲しいの。」

「あのなぁ! じゃあその新しいのが壊れたらどうするんだよ?」

「また新しいのを買ってくれるんでしょ?」


 ミラの返事を聞いてロビンは頭を抱えた。


(ミラは危なっかしい所があるからまた買ってもいいが・・・この金の髪飾りを作った奴は相当なやり手だな。これじゃあいくら金があっても足りない!!)


 次にエルドラドに行った時に髪飾りを買う約束をミラとすると、ロビンはげんなりした。


 街道を歩いていると岩だらけの殺風景な道が続いたが、次第に木が増え森が広がり始めた。すると目の前に大きな橋が見え始めた。その右手前側の奥には煉瓦造りの民家が何軒も見えた。村があるようだ。


 2人は橋に近づくと、職人風の男達が作業している様子が見えた。「洪水で橋が壊れ修理をしている」と僧侶から聞いたのを思い出した。


「もうこれからは洪水が起きる事もないわよね?」

「あぁ。あの魔女があの男と喧嘩しなきゃ大丈夫だろ。」

「優しそうな雰囲気の人だったし、もう橋が壊れる事はないと思うわ。橋の修理が終わるまで、あそこの村に行ってみましょう。」


 ロビンが頷くと、2人と1匹は煉瓦造りの村へと向かった。


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