13.金色の街
中央の国のエルドラドという街に着くと、青い鳥を売ろうとしてまたロビンが連行された。
「その青い鳥は保護されています。売るのは犯罪ですよ。」
「またかよっ!! 俺は知らなかったんだって!」
「今またって言いましたか? つまり2度目という事ですね。」
「ち、違う! この鳥を売ろうとして捕まるのは初めてだ!」
ロビンが取り調べを受けている一方で、ミラはまたレオと一緒に街の中を歩いていた。エルドラドには大きな金色の城があり、その左右にも立派な建物が建っていた。
街中は人が多く、魔法使いや魔女のような格好をしている人や筋骨隆々の若い男性達とよくすれ違った。
(そういえば、ロビンが前に魔法学校と騎士団の養成所があるって言ってたっけ。)
ミラは魔女であろう黒いローブを着ている女の子達を眺めていた。何となくその子達の後をついて行くと、金色の城の隣にあるとんがり屋根の大きな建物に着いた。大きな建物は門も大きく、魔女達はその門を通って学校に入って行った。ここが噂の魔法学校に違いない。
(アデルさんが私にも魔女の才能があるって言ってたけど、本当かしら?)
ミラは暫く学校を眺めた後、ロビンが連れて行かれた建物の出入り口近くに向かった。
壁にもたれてレオの頭を撫でていると、ロビンが出てきた。ロビンの顔を見たらミラは怒りが込み上げてきて、立ち上がると怒鳴った。
「ちょっと! ちゃんと確認してから売りなさいって言ったでしょ!」
「一年前は大丈夫だったから、平気だと思ったんだよ。」
ロビンは北の国に続く門の方へ行こうとしたが、ミラが宿で休みたいとロビンに言い張った。
「またかよー! お前すぐに休みたがりすぎだぞ!」
「だってここまで来るのに3日野宿したから、そろそろベッドで寝たいのよ。」
「しょうがねぇな。」
「やったぁ!」
ロビンとミラは宿を取ると、部屋で宝の入った袋を出した。ロビンの袋には金貨が2、3枚と宝石のついた装飾品が6つ入っていた。ミラの袋には金貨は入っておらず、装飾品が3つあった。レオは宝石のついた装飾品を手で転がして遊ぼうとしたが、ロビンに怒られうな垂れた。
「これから換金に行くけど、ミラも行くか?」
「ううん。私は見たい場所があるから、行ってきなよ。」
「見たい場所?」
「うん。ロビンの呪いを解いてくれた魔女が、私に魔女の才能があるって言ってくれたの。それで魔法学校をさっき見つけたから外から覗いてみようかなって。」
「へぇ、そうか。また悪魔に引っ掛かるなよ。」
「大丈夫よ!!」
ロビンは外に出て質屋に向かうと装飾品を全てお金に変えた。予想よりも高く買い取ってもらい、上機嫌になったロビンはそこで売られているものをいくつか見た。店を出ると鼻歌を歌いながら街の中を歩いていた。金色の大きな城が目に入り、歌うのをやめてしばらく眺めた。
(すげぇよな、ここの金の城。全部金で作るとなると一体いくらするんだ。王様が黄金の魔女と結婚したからこんな城になったんだって話だったな。)
それから隣の三角屋根の建物に目を移した。魔法学校では将来有望な魔法使いや魔女がさまざまな国からやって来る。ロビンはじぃから南の国の魔女のペンダントを持っている女の子は魔女だと聞かされていたので、ミラが魔法学校に興味を持つ事には何の疑問も持たなかった。むしろ魔法を使えないことに疑問を覚えていた。
(勉強したら優秀な魔女になるんだろうな。)
ロビンはミラを探して魔法学校の前に行くと、ミラが誰かと話をしていた。美しい金髪をなびかせた、丸ぶち眼鏡の背の高い女性と話をしていた。ロビンが近づくと女性が気がついた。
「どちら様かしら?」
「あ、ロビン! すみません、失礼します。」
ミラは女性にペコリと頭を下げるとロビンの隣に来た。レオはミラの後ろをついて来たが、しきりに後ろを振り返り金髪の女性を気にしていた。
「無事換金できたの?」
「まぁな。結構いい値で売れたんだ。ところでお前、誰と話してたんだ? また変なのに目をつけられたんじゃないだろうな。」
「まさか! さっきの人は魔法学校の校長先生よ。学校を眺めてたら声を掛けてくれたの。」
ミラは手に持っていたチラシをロビンに見せた。「入学生随時募集中!」と書かれていた。
「旅が終わったらお父さんに頼んで入学できないか聞いてみようと思ってるの。さっきの校長先生も、私には魔法の才能があるって言ってくれたのよ。」
「そりゃあ新しい生徒を入学させて金をふんだくりたいんだろ。だからみんなに才能があるって言ってるんじゃないのか。」
「えぇ〜、そうかしら。優しそうな先生に見えたけど。」
「あ、そうだ。」
ロビンは小さな包み紙をミラに渡した。ミラが中を見ると、金細工と宝石でできた花の髪飾りが入っていた。
「わっ・・・高そう! これどうしたの?」
ミラが驚いて手の平に髪飾りを乗せた。ロビンは横を向いて照れくさそうにしていた。
「ミラは悪魔に唆されただろ。危なっかしいから、魔法を跳ね返す装飾品を買ったんだ。5枚の花びらがあるだろ。一回攻撃される度に一枚なくなるって聞いた。つまり5回は身を守ってくれるってことだ。」
「へぇ・・・随分実用的ね。でも綺麗。」
ミラが嬉しそうに髪飾りを見つめていると、ロビンがミラの手から髪飾りを取った。
「ちょっと! いきなり取らないでよ!」
「いいから動くなよ。」
ロビンはミラの顔の横にかかった長い髪を耳にかけると、その上辺りに髪飾りを付けた。
「なかなかいいんじゃねぇの。」
一瞬、なんと返事をすればいいのか思い付かなかった。間が空くとロビンが変な顔をしたため、ミラは慌てて返事をした。
「も、もうちょっと気の利いた事が言えないの? 例えば・・・かわいいとか、綺麗とか。」
「俺がそんな事言う訳ないだろ。」
「うーん。それもそうね。」
ミラは恥ずかしくなって俯いた。
「・・・ありがとう。」
「呪いを解いてくれたお礼だ。でも俺の金を使った事は許さないからな。」
「まだそんな事言ってるの? 器が小さいんだから。」
先を歩いて行ってしまうロビンをミラが追いかけた。一通り流れを見ていたレオはニコニコしながらミラとロビンの後をついていった。




