先生、いい加減にしてください
「先生、いい加減にしてください」
吉河美由紀が言った。彼女は私の教え子だ。
「もう、こんなことやめてくださいよ!」
「いいじゃないか。いいじゃないか」
私は彼女の言葉を無視し、手を動かすことをやめない。
「いや、もうやめて」
吉河は泣きだしそうだ。一旦、私は手を止めた。
「そんな、泣かなくても……」
「泣くくらい悲しいことです。凌辱されるって、こういうことなんです」
吉河はよよと泣き始めた。私はおろおろと狼狽した。
「す、すまない。しかし、私は、もう火がついてしまったのだ」
再び、手を動かし始めた。
「あん。ダメ、先生」
吉河は悦びとも嘆きともわからないような声を出した。
「新しい世界を、見てみたいだろ?」
私は手を動かしながら言う
「やめて。もうこれ以上は!」
「こういうのが良いのだろうか?」
「ポイントを上げようとしても無駄ですよ!」
私は手を動かし続ける。
*
**
***
「駄目だ。全然駄目だ」
私は失望した。世間とこれほど感性がズレているものだとは思わなかった。
「だから、ダメって言ったのに」
作家としての教え子である吉河はぷりぷりと怒っていた。
「今までの感覚で、『小説家になろう』に投稿しても、ランキング上位なんて無理ですよ。晩節を汚すだけですよ」
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