本当の能力
俺はレミリアに俺の本当の能力を。
「俺の能力は重力を操る能力じゃない。俺の能力は、引力と斥力を操る能力だ。」
「引力と斥力?」
「引力は簡単に言うと引き合う力、斥力は跳ね返そうとする力だ。俺の能力は全てを引き寄せることができる。たとえそれは過去や未来だろうとな。逆に相手の能力や確立された未来をも跳ね返したり引き離したりすることができる。これが本当の俺の能力だ。」
「化け物級のチート能力じゃない。」
「まあ、弱点もあるんだがな。まずは美佳を救う。その間、レミリアは美佳の足止めを頼む!」
「わかったわ。」
レミリアが美佳の攻撃を受け流し始めた。その間に俺は能力を発動する。まず美佳の過去を引き寄せる。俺が能力を発動するとだんだん美佳は人の姿に戻っていく。すかさず俺は美佳の未来から再覚醒の薬を引き離す。ただ過去に戻しただけでは未来は変わらない。仮定はどうあれ未来は収束して結局薬を飲んでしまう。だから薬を引き離す必要があるのだ。そして引き離し終わったときには美佳は完璧に普通の女性になっていた。そして自分の姿を見た美佳は泣き崩れた。
「ああ…ありがとう…ございます…まさか…またこの姿に戻れるなんて…」
しゃべり方はさっきと同様、とぎれとぎれだったがその原因はさっきとは全くの別物だった。俺はそんな美佳の姿を確認して安堵したのか、はたまたさっきまでの疲れが来たのか、俺はその場で倒れてしまった。
目を覚ますと俺はレミリアから膝枕をされていた。近くには涙はこぼしてはいないがまだ目が赤い美佳が座っていた。俺はすぐさま起き上がる。
「あら、もっと寝ててもよかったのに。」
「そうも言ってられないだろう?美佳から話を聞かないとだしな。」
俺はそう言って美佳の方を向き質問する。
「なあ、お前をあんな姿にしたのは誰だ?」
「はい。確か秋と名乗っていました。」
「秋…」
夏や春と同じ季節の名前。多分敵幹部の1人だろう。
「そいつの能力は知っているか?」
「いえ。彼女が能力を使ったところ私は見たことがありません。でも出会ってすぐにわかったことがあります。それは圧倒的強者ということです。前にいるだけで冷汗が止まりませんでした。それぐらいの力の差を感じたんです。」
「ふむ。」
美佳の力がどれくらいかは知らない。だが冷汗まで出るレベルなら相当だろう。普通の人間はそうそう冷汗はかかない。何故か。それは力の差を理解できないからだ。それでも冷汗をかくということは無意識の内、または本能的に相手が強者だと認識したのだろう。そのレベルなら警戒していてもしすぎということはないだろう。
「じゃあ、次の質問だ。元の姿に戻ってから、なにか違和感を感じたか?」
「いえ、強いて言うならさっきまでは身体が重かったのに軽くなりました。」
「そうか。多分それは薬の効力が完璧になくなったからだろうな。俺からの質問は以上だ。美佳からの質問はあるか?」
「なんで私を救ったんですか?」
「そうだな。最近救えなかった奴がいてな、そいつの代わりって感じだ。」
「雪さんでも救えない人がいるんですか?」
「ああ、立場上救えなかった。俺が救おうとしても断れていただろうからな。それにあいつにとってはあれが救いだったんだと思うんだ。」
「そうですか…私はもう質問はありません。」
「それじゃあ私からいいかしら?」
「ああ、構わない。」
「あなたの能力については少し理解したわ。でもそんな巨大な能力、デメリットなしには使えないはずよ?」
「そうだな。俺の能力にもデメリットはある。だがないも同然だがな。」
「どういう意味かしら?」
「まずさっきは言えなかったが俺の能力は二つなんだ。」
俺がそう言うと2人は驚いていた。
「そんなことできるはずないでしょ!そうなったら身体が持たないわよ!?」
「だが実際に俺は二つの能力を持っている。1つは引力を操る能力。もう一つは斥力を操る能力。この能力は二つとも強力、故にデメリットも存在する。1つは死亡した生物を蘇らせることはどんな方法でも不可能だ。例えば死体を過去に戻すだとか、死を跳ね返すだとかだな。二つ目はこの能力を使うことにより世界線が分岐してしまうこと。本来死んでいた人物が生き残るだとか、本来の未来が来ないだとかが起こせるわけだからな。本当はもう一つあったんだがそれは引力を操る能力で引き寄せたものは同じぐらい強力な能力でしか引き離せない。斥力を操る能力で跳ね返したものは同じぐらい強力な能力でしか元には戻せないってデメリットなんだがこれは片方の能力を使えばどうとでもなるからな。」
「化け物ね。デメリット含めても私の能力より余裕で使い勝手いいじゃない。」
「まあここは運としか言えないだろうな。てか今何時だ?」
「今は午前11時ね。」
「そうか。まだ時間には余裕があるな。」
「何かやるのかしら?」
「ちょっと軽く運動をな。それに引力はよく使っていたが斥力はあまり使ってなかったからな。慣れないとな。」
俺がそう言うと近くで爆発が起きる。そして連鎖かのように他の場所でも爆発が起きる。
「はは、運動にはちょうどいいな。レミリアは東を頼む。俺は西の奴らを倒す。」
「わかったわ。集合はここでいいかしら?」
「ああ、構わない。美佳は戦えるか?」
「はい。私は二人ほどではないですがある程度強い能力なので。」
「それじゃあ美佳はレミリアのアシストを頼む。」
「はい!」
「それじゃあ行くぞ!」
そして全員自分の役割を全うしに行った。




