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聖凛能力学園  作者: ゆっきー
始まり
20/47

放送、そして失敗作

 俺は春を殺した後妖夢に連絡して死体の確認及び回収をお願いしていた。そして俺は再び繁華街を歩いていた。心の中にはモヤモヤが残っていた。春は完璧な悪人というわけではなかった。きっと恩人さえ違えばきっとこんな死に方はしなかっただろう。そんなことを考えながら歩いていた。そんなときだった。急に町全体。いや国全体に放送が流れた。

 「軍の司令官、東条秀明(とうじょうひであき)です。みなさまにお願いがあり全国放送をさせていただいております。戦える方々に午後7時に軍の拠点に来てほしいのです。理由はその時に話します。これは義務ではないため、来なくても大丈夫です。ですがこちらとしては戦力を増やしたいため可能な方は来ていただきたい。以上です。」

そんな放送が流れた。軍の拠点に集合か。レミリアたちも来るのだろうか。俺は行くつもりだった。このタイミング、俺が春を倒したことを知ったから行動を起こそうとしているのだろう。だが俺はまだまともに幹部の連中とは戦ってはいない。夏は油断していたし、春は死のうとしていた。だからこそ勝てたというところは大きい。だが残りの奴らは分からない。仲間がやられているのだから、きっと夏や春とは比べ物にならないぐらい警戒しているだろう。そんな奴らに俺は勝てるのだろうか。噂によると美咲先生は行方不明と聞く。美咲先生は俺の能力と同じぐらい、いやもっと上かもしれない、それぐらいの強さの能力を持っていた。もし美咲先生が敵の幹部もしくは黒幕にやられたのなら、俺が全力でやっても勝てないかもしれない。そんなことを俺が考えていると俺の携帯が鳴った。携帯を取り出し誰からなのかを見るとレミリアからだった。

 「もしもし?なんのようだ?」

 「雪はさっきの放送聞いたかしら?」

 「ああ、聞いたぞ。午後7時に軍の拠点に集合的なやつだろ?」

 「ええ、それで雪は行くのかしら?」

 「ああ、行くつもりだ。だがいくつか不安な点があるがな。」

 「なにがかしら?」

 「さっき全国放送って言ってただろ?こんなのを幹部の連中が見逃すとは思えない。」

 「わざわざ強い連中が集まるときに攻めてこないんじゃないかしら。」

 「それならそれでいいんだがな。だが攻めてこなくても部下とかをスパイとして行かせて情報を盗むとかはあり得る。」

 「そうね。少しは警戒が必要ね。あなたが行くなら私も行くわ。」

 「俺が行くからって俺のこと好きなのか?」

 「そんなことないわよ。ただあなたが行くのなら私も行った方がいいかなって思っただけよ。」

 「なんでそう思うんだよ。」

 「あのねぇ。今美咲先生が行方不明なのは知ってるかしら?」

 「ああ、噂程度だがな。」

 「そう、まあ知ってるならいいわ。美咲先生がいない今、私が最強能力者ってことになっているのよ。でも私はあなたも私以上の力を持っていると思っている。だから私の中ではあなたが最強能力者なのよ。その最強能力者が行くなら、私も行かないとって思うじゃない?」

 「はあ、よくわからん。」

 「まあどうせ霊夢や魔理沙、妖夢、靈華も来るでしょうから久々に会えるじゃない。」

 「それもそうだな。てかもう電話切るぞ?」

 「ええ、また夜にね。」

 「ああ、またな。」

そう言って電話を切った。レミリアは大丈夫とは言っていたが俺的には相手がこの機会を見逃すはずがない。きっと軍の拠点は相手も知っているはず。そこにほとんどの強者が集まると知ったのならそれだけでもやれることなんていくらでもある。だが逆にこのタイミングでこちらが動かない選択肢もない。

 「さて、7時まで暇だな。なにするか。」

そんなことを考えていると戦闘音が聞こえてきた。俺はその方向に走り出す。

 俺がその戦闘音のしていた場所に着くとそこにはさっき電話をしていたレミリアと身体が溶け出している再覚醒者がいた。その再覚醒者は他のとは違った。レミリアと話している。普通の再覚醒者は意思疎通ができない。なのにこの再覚醒者は話せている。俺はすぐに2人に近づいた。

 「おい、レミリア!これはどういう状況なんだ?」

 「雪!まさかこんな近くにいるなんてね。見ての通りよ。再覚醒者と戦っているわ。でもこの再覚醒者には意識がある。」

レミリアがそう言うと再覚醒者がしゃべりだした。

 「初めまして…私は…山野…美佳…です。」

 「俺は、柳雪だ。お前はなんで再覚醒者なのにしゃべれるんだ?」

俺はそんな質問を投げかける。そんなしゃべっている間も美佳は攻撃をしてくる。

 「私は…失敗作だから…です…再覚醒者とは…能力を…薬で…さらに強化…された…人たちです…でも…能力を…薬で強化…すると…身体が…持たなくなり…私のように…なります…薬が…少量なら…意識も少しは残るでしょうが…普通はあなたたちも知っている通り…意識がなくなり暴れまわる…怪物に…なります…失敗作の私は…身体が持たずに溶けて…いきます…その代わり…意識は他の再覚醒者より…あります。」

 「そうか、じゃあ何故攻撃する?」

 「私も…かなり溶けてきました…意識を保つのも…きつい…身体はすでに…私の意思とは関係なく暴れる…ようになってしまいました。」

 「お前を救う方法はないのか?」

 「わかりません…時を戻すの能力…とか…もとに戻すような…能力なら…可能かも…しれません。」

俺はこの瞬間春の能力なら救えるのでは?と思ってしまった。だが春は死んだ。

 「私たちにはどうすることもできないわ。」

レミリアがそう言ってくる。

 「まだだ…まだできることはある!俺の本来の能力を使えば助けられるかもしれない!」

 「雪の能力は重力を操る能力でしょう?それじゃあ救えないわよ。」

いや、救える。まだ遅くはない。だがこのまま俺の本来の能力を隠すことはできないだろう。そして俺はレミリアにいうのだった。

 「俺の能力は重力を操る能力じゃない。俺の能力は…」

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