過去最大の異変
俺が目を覚ますとそこは病院の病室だった。
「あら、やっと目覚めたのね。」
「ん?」
その声の方を向くとレミリアが椅子に座っていた。そして俺は身体を起こす。
「ちょっと!起きたばかりなんだからあんまり動かない方がいいんじゃない?」
「そうも言ってられないだろ。それよりどれぐらい俺は寝ていたんだ?」
「2週間ぐらいね。」
「2週間か。2週間で何が起きた?」
「そうね。まず私たちが今まで捕らえてきた能力者が全員何者かに殺されたわ。まあ恐らく春って女の仕業だとは思うのだけれどね。あと恋歌の能力で学園内にあった拠点は見つけられたけど中にいた人物は全員死亡、資料はいくつか残っていたから回収はしたわ。後であなたの携帯に送っておくわね。」
「ああ、他には何かあったか?」
「他だと、学園は休校になったわ。そりゃそうよね、あんなに死者が出たんだから。国も動き始めてはいるわ。今回の異変は国全体で起きているわ。だから今はみんな大慌てよ。」
「そうか。お悩み解決部のみんなは今どうしてるんだ?」
「まずさとりと恋歌、早苗は避難しているわ。魔理沙と霊夢はある程度情報を集めようといろんな能力育成施設をまわっているわ。妖夢と靈華は国の軍と一緒に解決に協力しているわ。噂では異変解決部の軍に強力しているらしいわ。」
「レミリア、お前は何をしているんだ?」
「私は何もしてなかったわよ。強いていうならここら辺の治安維持かしら。今回の異変のせいで再覚醒者がいろんなところで暴れているからそれの沈下が主ね。まあそれでも戦力が足りていないらしいけどね。なんでも過去最大の異変らしいわよ。」
「そうか。そんな大変な時にすまないな。俺も動けるようになったら加勢するつもりだ。」
「そう。でもゆっくりでいいわよ。今のあなたは片腕がないんだから。運よく右腕じゃなかっただけよかったけどね。」
「そうだな。利き腕の右腕がなかったらさすがに復帰も厳しかっただろうしな。身体強化系の能力でもなくてよかったってところか。」
「あ、能力で思い出したけど能力が組み分けされたわ。」
「どんな感じにだ?」
「まずは身体強化系、これはそのままね。次に五感強化系、これは恋歌の能力とかが入るわ。次に事象干渉系、これは私やあなた、咲夜とかが当てはまるわ。次に汎用系、汎用能力が高い能力はここに位置するわ。魔理沙の能力とかはここね。最後に不可能系、これは今までの能力以外を指すわ。霊夢の能力とかさとりの能力とかね。」
「ふーん、でそれを分けた理由はなんだ?」
「戦闘の場合にどんな能力者を出すかを決める時に使われるわ。大抵は事象干渉系か不可能系の能力者が呼ばれるけどね。」
「そうか。めんどくさい世の中になったんだな。」
「そうね、たった2週間でこの国は大きく変わってしまったわ。でも異変が解決したら戻るはずよ。」
「そうだな。」
「じゃあ私は帰るわね。あ、一応部員のみんなには私から伝えておくから。あなたのことだから見舞いには来ないでいいって言うんでしょう?」
「ああ、そう言っておいてくれ。」
「わかったわ。それじゃあね。」
レミリアはそういって病室を出て行った。
「はあ、俺も鍛えないとだな。」
俺はそうつぶやくのだった。
……
目覚めてから1か月が経った。俺は以前と同じぐらいまでは回復した。だが片腕がない分弱くはなっているが、まあ別のところを鍛えればいいか。だが片腕になったのは俺としてはかなりの損失だった。そもそも片腕だと刀で斬った時の威力がかなり弱くなっているのだ。なので今は刀ではなくナイフを使うようにしている。ここ一か月で部員の全員が一回ずつ来てくれた。みんな強くなっていた。なので少し焦っている部分もあるのかもしれない。そして俺は今日退院するのだった。外に出るとそこはところどころクレーターができており、悲惨な状態になっていた。
「これも今回の異変のせいか…」
俺がそんなことをつぶやいたとき、近くで爆発音が鳴り響いた。俺はすぐにその爆発のした方に向かう。
俺がその爆発のしたところに着くと見知った顔がある男と戦っていた。少し押され気味だった。俺は地を蹴り男に近づき蹴り飛ばした。男は数十メートル飛んで行った。そして俺は知り合いに声をかける。
「よう、妖夢。久しぶりだな。」
「雪さん!退院したんですか?」
「ああ、それよりあれはなんだ?」
「あれは再覚醒者です。」
「どうしたらいいんだ?」
「殺します。」
「捕らえるじゃダメなのか?」
「はい。異変が始まった時はそうしていたんですが、毎回何者かに殺されてしまうのでそうすることに決まりました。」
「そうか。ま、その方が俺的には楽だからいいんだがな。」
「どういうことですか?」
「俺の能力は戦い向きじゃなくて殺し合い向きだって話だよ。」
俺たちがそんな話をしているとさっき蹴り飛ばした男が戻ってきていた。俺はすぐに能力を使い男をミンチにした。
「これで終わりだ。」
「凄い…ですね。」
そう俺の能力は殺し向きなのだ。気絶となると手加減をしないと行けなかったため本気は出せなかったが本気を出せばミンチなんて朝飯前だ。まあ、あんまりしたくないから体術も鍛えていたのだが。さすがにこの状況ではそんなことも言ってられない。
「それより今回は吐かないんだな。」
「もう見慣れましたので…」
「そうか…それより俺も活動することにしたから。妖夢から国の軍にでも言っておいてくれ。」
「は、はい。わかりました。」
「そんじゃ俺は今のこの国を見て回るから。」
「気を付けてくださいね。」
「はは、これでも"元"最強2人の1人だぜ?」
「そうでしたね。」
「ああ、そういうことだ。じゃあな。」
そう言って俺は妖夢と別れた。
……
私は軍の基地に戻っていた。
「お、妖夢さんじゃないか。ここに来るなんて珍しいですね。いつもは命令が来ない限り来ないのに。何かあったんですか?」
「あなたには関係ありません。」
この男は斎藤武信。能力は脚力を3倍にまで上げる能力。本来は何倍にでもあげられるのらしいが足が持たないらしい。
「私は指揮官にようがあって来たので。それでは。」
私は武信さんの横を通って指揮官の部屋の扉をノックする。
「入っていいぞ。」
その声が聞こえた後、私は扉を開け中に入る。
「失礼します。」
「妖夢君か。何かようかな?君が来るなんて珍しい。」
「はい。伝えないことがありまして来ました。」
「ほう。メールではダメだったのかな?」
「はい。これは直接伝えた方がいいと判断いたしました。」
「そんなにか。それは何なのかな?」
「はい。私の同級生が今回の異変解決に動くとのことです。」
「それだけか?それならわざわざ報告しなくてもよいが…」
「ただの同級生なら私も報告しません。ですが彼は違います。」
「それはどういうことかな?」
「私の知る限りで彼はこの軍の誰よりも強い。敵軍の幹部連中や行方不明になっている最強能力者乱堂美咲さん、学生内での最強能力者レミリアさん。これらを抜いたら確実に彼が最強です。彼のもう片腕があるころならレミリアさんとも互角以上の力を持っていました。」
「それほどなのか。その子は。名前はなんなんだ?」
「はい。柳雪。能力は事象干渉系能力者です。」
私は指揮官にそう伝えるのだった。




