異変
次の日、学園に登校すると異変が起きていた。
「なんだこれ…」
学園内にある扉を開くとランダムでどこかの扉につながるのだ。しかもまた同じ扉を開いても別の扉につながる。
「これが異変なのか…めんどくさいことするなぁ。」
俺がそんなことを言っていると見覚えのある人物が近づいてきた。
「あ、君も来たばっかし?」
「瑠雨か。お前は異変解決に動いているのか?」
「うん。でもなかなか首謀者のところに行けなくてね。目的もわからないし。」
「そうか。まあ俺は俺で解決に動く。それじゃ。」
俺はそう言ってその場を後にした。この異変の解決するならレミリアとの合流は欠かせない。あいつの能力なら解決できるはずだ。俺はそんなことを思いながら適当に歩いていた。すると目の前の扉が開く。そこから俺が求めていた人物…レミリアが出てきた。
「やっと見つけたわよ。雪。」
「俺もお前が来るのを待っていた。レミリアなら今回の異変の首謀者の場所に行けるだろ?」
俺がそう問うがレミリアの答えは俺が求めていた答えとは違かった。
「行けないわ。」
「は?」
俺はその答えに驚いた。
「レミリアの能力は運命を変える能力だろ?ならランダム性を能力で無理やりできないのか?」
「私もそうしようとしたわ。でも何度やっても能力が発動しなかった。つまり、このランダムな扉は首謀者の部屋にはつながっていない。」
「そういうことか…」
レミリアの能力は不可能な運命操作は出来ない。例えば今すぐ隕石が落ちるなどの大きなことや目の前の人が急に死ぬなどは出来ないのだ。なので首謀者の部屋に繋がっていないのなら運命操作では繋げられないのだ。
「手あたり次第入ってつながってない部屋を見つけてそこに行くか。」
「それが今できる行動の中じゃ一番いいかもね。適当に動き回って逸れたらその時の方がめんどくさいでしょうし。」
俺たちは手あたり次第開けた。レミリアの能力でつながっている部屋すべてに行った。だが学園にある全ての部屋に行けてしまった。
「どういうこと?すべて行けてしまったわよ?」
「…まさか…」
「何か気づいたの?」
「首謀者は学園内にいないのか?それならレミリアの能力が発動しなくてもおかしくはない。」
そう、俺たちは無意識の内に首謀者は学園内にいると思い込んでいた。それもそのはず。異変が起きているのは学園内だけなのだから。だが何故?…
「時間稼ぎなのか?」
「時間稼ぎ?」
「ああ、なんでそんなことをするのかわからないが時間稼ぎの可能性が高い。クソ…気づくのが遅すぎた…あと何分あるのかもわからない…」
どうする?これはもしかしたら時間稼ぎ以外にも生徒や教師が避難できないようにしている可能性もある。どうする?俺の本当の能力の使い方をするか?そうすれば一瞬で異変は終わるだろう。だが俺の能力は使えない。俺の能力は強大、ゆえに使ったらどんなことが起きるのか使用者の俺ですら分からないのだ。
「あ、あの…雪さんですよね?」
俺が考え込んでいると最近聞いた声が聞こえた。そこには昨日会った恋歌がいた。
「恋歌か…今取り込み中なんだ。」
「あ、すいません…今何が起こっているんですか?」
「…今異変が起きている。学園内のあらゆる扉同士がつながっているしかも行先もランダムだ。目的は時間稼ぎだと思っている。だが首謀者が学園のどこにもいないんだ…」
「あの…つまりは首謀者をまだ見つけれていないんですよね?それ、私の能力で何とかなるかもしれません。」
「恋歌の能力は何なんだ?」
「私の能力はありとあらゆるものを見れる能力です。」
「そんな能力があるのね。チート級じゃない。」
「えっとあなたは確か…」
「私はレミリア・スカーレットよ。雪と同じくSクラス。」
「私は橋口恋歌です。Eクラスです。」
「E?そんな強い能力ならSでもおかしくないのだけど?」
「反動があるからですね。私自身の身体能力も低いですし、クールタイムもあるので…でも首謀者を見つける程度なら何とかなると思います!」
「!頼む!見つけられるか?」
「はい!できると思います。やってみますね。」
恋歌はそう言うと目を瞑った。
「見えました。場所は学園の近くにある使われていない地下施設。首謀者以外にも1人見えます。」
「ありがとう!感謝する。レミリア!急ぐぞ!」
「ええ。」
俺とレミリアは学園の窓から飛び降りた。能力を使って着地をして恋歌が言っていた場所を目指す。数分走ると地下施設にたどり着いた。
「レミリア。ここでは俺たちは能力を使えない。学園外で使えば退学は免れないだろうな。」
「ええ、分かっているわ。行くわよ!」
「ああ。」
俺とレミリアは武器を構えて地下施設に入っていく。地下施設に入ると数人敵が立っていた。騒がれると面倒なため俺とレミリアは一瞬で全員を無力化する。そしてさらに奥に進む。その先にも何人か敵はいたが全員声を上げる暇もなく気絶していった。進んでいくと今までとは違う部屋にたどり着いた。俺とレミリアはドアを開けてすぐに目の前の敵に襲い掛かる。だが相手は未来でも見ていたかのように攻撃を避ける。
「君たちが来ているのは仲間の能力のおかげで分かっていたよ。で、なんの御用かな?」
「お前たちが今回の異変の首謀者なのはわかっている。ここでお前たちを無力化させてもらう。」
「はは、能力を使えない状態で僕たちに勝てるとでも?」
「勝てるだろ。てめぇら程度。」
俺はそう言って一瞬で主犯らしき男に近づく。そして持ってきていた刀で斬りかかる。だが寸でのところで避けられる。
「やっぱりお前は学園の異変を起こしている人物とは別だな。誰だ異変を起こしているのは!」
「はは、やっぱり気づくよね。異変を起こしているのはそこの彼さ。」
男が指を刺した方向には一人の男性がいた。そいつが異変を犯しているのか…いや敵の言うことをうのみにするのはよくない。だがどの道全員倒さなくてはいけないのだ。
「レミリア!そっちの男の対処は頼む!俺はこいつを倒す。」
「わかったわ!」
レミリアはそう言うともう一人の男に近づいていた。そして俺は目の前の男に集中する。全力で地を蹴り男に近づく。だが依然男は余裕そうな顔をしている俺は男に対して突きを放つ。男はいともたやすく避けていく。すかさず蹴りも放つがそれすらも避けられる。避けられたことにより俺に隙ができる。そして男はその隙を突きナイフを突き刺してくる。俺はすぐに後ろに下がった。男はあまり筋力はないらしくナイフはそこまで深くは刺さっていなかった。だが深くはないとはいえ血は出ていた。
「はは、どうしたんだい?君は異変を解決しに来たんだろ?この程度でやられている奴が異変解決なんてできるのかい?」
「は!できるに決まってんだろ!まだ本気じゃねぇんだよ。それにさっきのはお前の能力を確かめるための攻撃だしな。」
「そうかい。じゃあ僕の能力はわかったかい?」
「わかってる。」
「ほう。じゃあ待っていてあげるから答えてみなよ。」
「お前の能力は未来を視る能力だ。」
「ははは、正解だよ。よくわかったね。」
「この程度わかって当然だ。」
こいつは未来を視ていたからこそ俺の攻撃を避けられた。そして隙をついて攻撃できた。だが能力が分かれば後は簡単だ。俺は一瞬で相手の背後に回り込んだ。そしてすぐに相手を蹴り飛ばした。次は避けられることはなく男は崩れ落ちる。そして俺はすぐにレミリアの方を見る。レミリアもちょうど終わったらしい。
「こいつは未来を視る能力だった。そっちの奴は?」
「こっちは空間を操る能力だったわ。まあ自分の周りには使えないぽかったから懐に入って終わったわ。」
「そうか。そんでこいつらはどうしたものか。一応美咲先生は呼んだが。」
俺とレミリアがそんな会話をしていると俺が倒した男がしゃべりだした。
「はは、ここでゆっくりしていていいのかな?」
「は?どういう意味だ?」
「僕たちが何故あんな異変を起こしたか分からないのかい?」
「!まさか…」
俺は急いで施設の最奥に向かう。最奥にたどり着くとそこには大量の爆薬が置いてあった。どうする…今から急いで運んでも間に合わない。この量の爆薬だ。爆発したら学園は最低でも半壊はする。死者も大量に出る。確実にEクラスの人間は死ぬ。避難を始めてももう遅い。すでに中央に置いてある爆弾のタイマーは三十秒を切っていた。どうするか俺が考えていた時。
「悩んでるのかな?」
そんな声が響いた。
「美咲先生…」
「凄い爆薬の量だね。」
「はい…もう俺やレミリアでは解決できません。」
「いや、君たちは私をここに呼んだ時点で異変は解決しているよ。」
美咲先生がそう言うと先生は能力を発動した。すると目の前の大量の爆薬は消え去っていた。何が起きたのかわからなかった。
「じゃあ帰ろうか。犯人たちは私が連れて行くから。」
そう言って美咲先生はその場を後にした。そして俺は美咲先生を見ながらつぶやいた。
「最強だ。」




