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ミュージアム

俺は大学生になった。

受験に合格発表、引っ越しに入学式。めまぐるしく去って行ったこの数か月、息をつく暇もなく忙しかったのは覚えてるけれど、これといった感慨は何もない。



――――――――



うとうとしていて、気がついたらもう14時。

集合時間は14時半。さあ、あと三十分、どうしよう。


オリエンテーションなんて言って、二時間も、博物館だか資料館だかつまらないところで自由行動なんて、馬鹿げてる。先生の「解散」の一言が終わると同時に、俺はそんな埃臭い建物を、見学なしでこっそり抜け出した。

よく手入れされた裏の丘の芝は、春の日差しで程よく温められていて、格好の昼寝場所だった。


これから戻って展示品を見るのも面倒くさい。かと言って、二度寝するのも億劫だ。

幾分柔らかになった陽光を片手で遮りながら、俺は身体を起こして伸びをした。

ぶらぶら散歩でもして、時間をつぶそうか。他にもサボっている奴はいそうだから、この機会に出会って仲良くなるのもいいかもしれない。




博物館の裏に、博物館?

本来俺が見学するはずの博物館から反対側に歩いて行ったら、なにやら怪しげな建物を発見した。

別館だろうか?大きさはさほど変わらない。違っている点といえば、さっきの博物館は観光客だの学生だので賑わっていたのに対して、こちらは人一人、猫一匹見当たらないところ。

自動ドア越しにこっそり覗いてみても、客はおろか、受付嬢や案内人の姿すらない。

かといって、休みなのかと言われるとそうでもないようだ。館内の照明は薄暗くついているし、何より、自動ドアが俺の来訪を感知して開いたのだから。


しばらく戸惑って、結局入ってみることにした。

ものすごく不気味だけど、暇つぶしにはちょうどいい。スリルがあって、ちょっとした肝試し感覚だった。

どうせ展示品は向こうとそんなに変わらないだろうから、飽きたら戻ってくればいい。もしかすると、展示品を見る以前に入館料を取られるかもしれない。暇つぶしに余計な金を掛ける気はないので、もしそう注意されたら、大人しく帰るつもりだった。



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