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第1話 虚空のレクイエム Void Requiem

 夜沢玲音は、生まれてこの方ロクな目に遭っていなかった。

 学生時代はほぼ全ての時期に渡ってイジメを受け、家族からも虐待を受けていた。

 友人を得る事なく社会人になるも、就職先の会社が、ブラック企業と言うには生温い地獄であった。


 営業職で、他の企業を訪れては商品のセールスを行い、契約を取る。

 ここまではよくある営業職であるが、ノルマ自体がどうにもアンバランスであった。


 直属の上司になる篠田課長は部下の選り好みが激しく、気に入った部下は低ノルマでも昇給や出世の口利きを行う。

 気に入らなかったり逆らう部下には本来気に入った部下に割り振る筈であろうノルマを全て割り当てる。

 その上で時間外出勤や定時超過は当たり前で、その上で辞めさせもしないから、非常に質が悪い。


 以前同僚が一人、退職届を受理されず仕事をバックレた事があった。

 彼も毎月のノルマが凄まじい事になっており、目に見えて精神的に病んでいる状態にもなっていたから、普通の神経ならバックレられるのは仕方ないと思うだろう。

 ところが篠田課長は、同僚の家まで押しかけ、家を引き払って引っ越した事を知るとわざわざ探偵を雇って行先を調べ上げ、実家に帰っていた同僚を無理矢理連れ帰って来た。

 更に、篠田課長自身の家に泊まらせる、という名目でずっと会社に拘束し続けた為、同僚はとうとう発狂して自殺した。


 別の同僚は、労働基準監督署にまで駆け込んで被害を訴えたが、どういうわけか訴えを受理されず、調査すらも入られなかった。

 噂では、この会社は労働基準監督署の一部の上層部に賄賂を贈っていると実しやかに囁かれていた。


 では警察は介入出来なかったのか。


 それも同じだった。


 一度交番に駆け込んだ後輩がいて、その時担当した巡査が正義感溢れる熱血漢だった事もあり、一度本署の刑事まで出動する事態になった事があった。


 しかし、それすらも途中で立ち消えとなった。

 担当した巡査は減給処分を受けた上に、遠い田舎の派出所勤務を命じられた。

 事実左遷であった。


 そんな殺伐とした環境で、もう誰もが反抗するような気力もなくなり、大半の勤務者は上層部にとにかく機嫌を損ねまいと媚びを売っていた。


 玲音もそんな一人であったが、どうにもうまくいっていなかった。

 理由は様々あり、まず挙げられるのは自身の“名前”。

 俗に言うキラキラネームで、日本人然としていない名前をとにかくやり玉に挙げられた。

 玲音の見た目は黒髪のショートに色白で、見た目としては平均的である。

 だが、過去の事もあり表情が陰気であった。

 これが名前を弄られる事に拍車をかけていた。


 このような生活環境に重なり、実家へ避難すふと言った事は考えれなかった。

 どちらに身を置くにせよ、地獄には変わりないからだ。

 それに、高校を卒業した際、お前みたいな穀潰しはいらない、と言われ実家から追い出されていた。


 そんな地獄のような状況でも、唯一癒しになる存在がいた。

 妻である亜梨。

 どう言う気まぐれだったのであろうか、彼女の方から玲音に猛アプローチをかけて来たのだ。

 今まで友人すらロクにいなかった玲音は、もちろん恋人なんていた試しがなく、どうすれば良いのかわからなかったし、とても心を開く気になれなかった。

 ただ、いざ付き合いだして行く内に、玲音は泥沼に足を踏み入れていた。

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