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王立魔法学園入学試験の裏側

ありがち異世界転生物…なのか、これ?

 大陸中央に位置する王国に存在する王立魔法学園。そこの二階に存在する会議室で、10名ほどの男女が書類を片手に討論をしていた。


「では、このものは合格ということで」


 多少恰幅のいい男性がそう言い周囲を見回す。

 それに対して周囲の者たちは異議無し、と言うかのように黙って頷いた。


 現在この者たちが行っているのは今年…というよりつい昨日まで行われていた、この魔法学園入学試験の合否を決める会議であった。

 魔法学園の入学試験の内容は全部で3つ。

 実技試験と筆記試験。そして面接である。

 これらのすべての点数や評価などを元に、この場にいる者たち…すなわち試験官たちで合否を決めるのだ。


「さて、次は…と」


 次の書類を手にした今回の試験官長を務める男性教諭は名前と写真を見た瞬間…


「げ…」


 思わずそう呟いてしまった。

 

「どうされました?」


 試験官長の反応に数名が首をかしげながら聞いてくる。


「この者ですよ」


 そう言って手にした書類を他の試験官に見せる。それを見た瞬間、ほかの試験官も同じような反応をした。


「彼、ですか」

「あー…」


 とたんにやる気を無くした様な反応を示しながらも、それでも職務を全うするために書類に目を向ける。


「この者の試験内容はハッキリ言いますが……最低、これに尽きます」


 試験官長の言葉に周囲もうんうん頷く。それぐらいに酷かったのだ、この者の試験内容は。


「とはいえ、評価し合否を決めねばなりません。腹立たしいことですが」

「えぇ、ではまず最初の実技試験ですが…」


 眉間に皺が寄っていることを自覚しながらも、当時に事を思い返す。

 

 実技試験の内容は単純なものだ。用意された的を一定の距離から魔法で攻撃し、的の中心を狙う。これだけである。使用魔法の内容は禁呪の類でなければ基本は問題ない。この試験は魔法の精度や機転と発想を確かめるものだ。どんな魔法で、どんな風に、どれだけ正確に、どれだけ速く魔法を行使できるか。これを確かめる。


「で、この者がやったことは……」

「使えば周囲に危険が及ぶ可能性を考えずに禁呪の爆裂魔法を放ち、的を中心に数メートルのクレーターを作りやがりましたね。しかも精度も速度もなってない」

「そしてその衝撃でほかの生徒が吹き飛び、数名が負傷しています」

「そこまでしておきながらドヤ顔したばかりか、俺なにかやっちゃいました? と言わんばかしなムカつく表情までしてくれやがりましたね。やっちゃった、のではなくやらかした、でしょうに」

「的の中心を狙え、という試験内容だ、的を中心にクレーターを作れ、という試験内容ではない」


 様々な苛立ち…もとい、怒りが混じった内容が実技試験を担当した教諭から口々に告げられる。それを聞いて、試験官長は結論を告げる。


「では実技は0点、ということで?」

「異議ありません」

「同じく。むしろマイナスにしたいところです」

 

 この内容の時点でもはや合格は無理である。しかし、仕事である以上は全部の試験内容を見なくてはならない。


「あ~…では次に筆記試験ですが…」


 この言葉に筆記試験担当の教諭が呆れた表情で報告する。


「下の下、以下ですね」

「正直赤ん坊どころか前世からやり直してこいと言いたい」

「基礎のきの字どころの話ではないですね」

「真面目になんで君ここにいるの? と問いたいです」

「全問中正解しているのが記号を選んで記入するだけの奴だけな時点でお察し過ぎます」


 報告の内容に試験官長の目が段々と死んでいく。その目はホントこんなんでなんで受けたの? と語っていた。


「では筆記試験も実質0点、と」

 

 周りも呆れた顔をしながら頷き返した。頷く以外無かった、とも言える。


「では、最後に面接ですが……ハァ…」


 他ならぬその面接を担当した試験官長がため息を吐いた。それは同じく面接に携わった他の教諭も一緒だった。


「礼節も言葉遣いもなっていない。その癖尊大な態度…オマケに貴族や王族への暴言紛いな言動の数々…」


 この時点で、面接を担当しなかった教諭たちは心中を察した表情をする。それと同時にコレと一緒に面接をすることになった他の受験者にも同情した。


「当然面接に関しても落第レベルです」

「では結果は当然…」


「不合格です。当然でしょう」


 そう言って試験官長はその男のことが書かれた書類にバンッ、と不合格のと書かれた判が押されたのだった。


 因みに、その男は翌日に女をめぐるゴタゴタで兵士が介入する騒ぎを起こし、兵士に暴行を加えたためにしょっ引かれることになるのだが、それはまた別の話。

どうでもいい登場人物紹介

主人公(15歳)(前世年齢込みで47歳)

本作がありがちなろう小説なら主人公になってた男。だが無意味だ。前世では世間をなめ腐った挙句テンプレブラック企業に入社し、最後は信号無視した自分がトラックに衝突して死亡。転生してからはありがち無詠唱魔法を身に着け程度の知れたどや顔テンプレなろう主人公になった。転生して暮らしている村では魔法が使えることで一応…一応神童扱いされてる。井の中の蛙大海を知らずというやつである。そのまま魔法学園に入学しようとしたものの、テンプレなろう主人公と同じようなことをした結果見事に不合格となった。そうとは知らないまま城下町で窃盗を繰り返していた常習犯の女の子を助けようとした結果兵士に公務執行妨害でしょっ引かれた。その後、不合格事実を知りコンナハズジャナイノニー!と叫びながら手あたり次第街を破壊しようとして御用となった。その後? 普通に処刑です。ありがとうございました。


ヒロイン(14歳)

本作がありがちなろう小説ならヒロインになってた女。窃盗の常習犯であり、兵士にも顔は覚えられている。別に家が貧しいとかではなくスリル欲しさと世間と大人をなめ腐ったが故の行動である。主人公に助けられたが感謝より何コイツ? キモイんだけど。という感想しかなかった。哀れ。最終的に貴族の屋敷に忍び込み、失敗。そのまま貴族に私兵に殺された。

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