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モブになると消滅する世界に転生しました  作者: アオガスキー
過去編
9/46

転機

 翌朝、目が覚めると私は自室にいなかった。

 寝返りをうつ。

 左隣にはルカの寝顔がある。


 ・・・・!?


 飛び起きると、後ろから声がする。

「起きたか?」

 マックスがホットミルクを二つ、珈琲を一つ、木のお盆に載せて一階から上がってきた。横で男がもぞもぞ動き始めた。目をこすって、起きたみたい。私達は昨日たくさん話してたくさん泣いて、そのまま疲れてブラウン家で眠ってしまったのだった。


「・・・おはよう」

「・・・おう」


 変な沈黙があった。寝ぼけたルカの頭が私の頭の上にコテンと乗っかってきて、こんなのも今日で最後なんだと思うとまた泣きそうになる。


「これ、やる」


 マックスが首紐のついた小さなビロードの袋をぶっきらぼうに突き出してきた。「何?」

「向こうのお屋敷についてから見ろよ、なんか照れるから。どうせ、行くんだろ」


 ふてくされた表情。ルカはそっと私の頭を抱え込むように撫でてくれる。

 私は頷いて、二人をしっかり抱きしめた。

 自分で決めた設定だもん、行かないと。


 1階に降りてパパとママを玄関から迎えにいき、みんなで最後のブランチを一緒に食べた。変に明るく、パパなんかはもう泣きだしそうだった。月並みな言葉しか出てこなくて、「元気でね」と絞りだして両親を抱きしめ、狭い路地を一人で出てメインストリートへ向かう。もう昨日の馬車が来ていた。


 馬車の扉が開き、先にキヨナガが降りて、主人に手を差し出している。その手をとってセレスティンさんが降りてくる。透き通るような美しい人の登場に、露天の商人たちがざわめきだった。昼間見るとより一層綺麗で、潮風吹くこの街並みに彼だけ浮き上がっているみたい。


「ユリア。決めたの?」


「はい。ルカのお友達なら、きっと悪い人じゃないから」


 ぎゅっとスカートを握って、セレスティンさんを見上げる。今世の私の髪も綺麗な方だと思っていたけれど、彼は本当に美しくて目を合わせるだけで吸い取られそうになる。


「はは。そしたらルカに感謝しなくちゃな。ルカは?」


「お見送りは断ったの。心が揺らぐから。不束者ですが、どうかよろしくおねがいいたします」


 しっかり頭を下げてお辞儀をする。


 差し出してくれた手をとって、私は人生初の馬車に乗り込んだ。



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