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6 嫁さん通い妻になる

「どうすればいいんだ……」


退院して、自宅に戻ってきてから夢から覚めたように今更あわあわする俺。生まれて初めての告白と生まれて初めての恋人。ただでさえ未知の要素なのに、これからも会いに来ると言っていた彼女……美星さん。


「というか、琴音ちゃんにもそのうち父親として認めて貰わないといけないんだよな……俺なんかで本当にいいのかな?」


もちろん、あんなに可愛い娘ならウェルカムだけど、琴音ちゃんにだって父親を選ぶ権利はあるわけで…でも、まだ恋人なのにそんなこと考えるなんてやっぱり俺って傲慢なのかな…


ピンポーン。


そんなことを考えていると、宗教の勧誘とNHKの集金、あとAma○onのお届けなどでしか鳴らないはずのインターホンが鳴る。


不思議とこれが彼女だというのがわかった。バクバク鳴る心臓を抑えてドアを開けると、いつも見舞いに来てくれた彼女がそこにはいた。


「こんにちは」

「こ、こんにちは……」


目を合わせられない。なんかすげぇ緊張する。そんな俺の様子を見て呆れることもせずに美星さんは言った。


「結構、大きなマンションですね」

「えっと、友達の経営してるところなんですが…それで、安く借りられてまして。会社にも近いですし」

「家からもそこまで遠くなくて良かったです」


ニコッと微笑む彼女。やべぇ、マジで可愛い。こんなに可愛い人が人生初の恋人とか俺のこれから先の運全部消えたかも…


「あ、あの、とにかく入ってください」

「はい。お邪魔しますね」


そう言ってからわざわざ靴を揃える辺り本当にいい人だ。そうして部屋に通してから、お茶でも出せばいいのかとあたふたしそうになると彼女は言った。


「あ、台所使わせて貰っていいですか?」

「え、あ、はい…」

「じゃあ、失礼して」


そう言ってからテキパキとお茶を準備する彼女。まるで台所を把握しようとしているように見えたけど…気のせいかな?


お茶を準備すると、室内を軽く見てから彼女は言った。


「思ったより、荷物が少ないですね」

「えっと、恥ずかしながらインテリアセンスが皆無でして…趣味も無料の小説を読むくらいなので、家では基本寝るしかないですし」

「ご飯とかはどうされてるんですか?」

「安くなったお弁当とかカロリーメイトとかで済ませてます」


そう言うと彼女はふむふむと何かを考えてから言った。


「じゃあ、これからは私が作りに来ますね」

「え、そんなご迷惑じゃ…」

「させてください。彼女なんですから」


彼女。その単語にドキッとする。


「彼氏の体調管理も彼女の務めですよ」

「で、でも…毎日はやっぱり大変だと思います。それに、俺基本的に仕事の日は帰ってくる時間不定期ですし…」

「じゃあ、お休みの日を教えてください。その日に出来るだけ色々やっちゃいますから」


思ったよりもグイグイくる彼女。そんなところも可愛いけど…


「あ、ありがとうございます…」

「清隆さんは、もっと私に甘えていいんですよ?私は清隆さんのこと大好きなので、どんな清隆さんでも受け入れます」


本当に出来た彼女だ…というか、こういうのなんて言うんだっけ


「ふふ、なんだか通い妻になった気分♪」


……そうそう、それだ。


というか、恋人になってすぐにこんなことをさせるなんて、俺ってやっぱり最低だよね…でも、なんか美星さん楽しそうだし、無理しない程度にお願いしようかなぁと、そんなことを思うのだった。





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