26 嫁さんとデート1
お昼を食べてから俺と美星さんは映画館の近くにあるショッピングモールを2人で冷やかしていた。色んな店があるが俺はほとんどここには来たことないのでどれも新鮮に思えるが……やっぱり隣で手を繋いで歩いている美星さんの存在だけでも嬉しく思えるのだった。
「清隆さんここです」
そうして歩いているとお目当ての店があったのか指さす美星さん。見ればそこは雑貨品の店で色んな商品が並んでいたが……美星さんはある程度値段を見てから買い物カゴに商品を入れていく。途中から遅れて俺がカゴを持つことになったが……こんなに必要なのかなと思っていると美星さんは言った。
「清隆さんのお部屋は足りないものが多いですから。念の為です」
「ありがとうございます」
俺としてはそこまで物は必要ないと思っていたが……これからは美星さんや琴音ちゃんも来るだし随時揃える必要があるだろう。そうして一通り買い終わって店から出て次に入ったのは本屋だった。
「美星さんは何を読むんですか?」
「私は恋愛小説とか推理小説とかが多いですかね。清隆さんは?」
「俺は……その、あんまり本は読まないので」
昔は図書室で読んでいた時もあったけど……持ち帰ると兄貴がわざと水をかけたり、ボロボロにしてしまって図書室に迷惑をかけてしまうので読まなくなった。
「ではせっかくですし何か買いませんか?」
「そうですね……美星さんのオススメがあれば教えて貰えますか?」
「じゃあ……これはどうでしょう?」
そうして渡された本のタイトルは『恋海』というタイトルのいかにも携帯小説っぽい作品だった。内容は兄嫁との禁断の恋ということだが……もしかしてわざとかなと思うと美星さんは微笑んで言った。
「私これ結構好きなんです。清隆さんにもオススメです」
「……じゃあ、買います」
「はい。感想聞かせてくださいね」
本を買うのなんて何年ぶりだろうか?多分最後に買ったのが小学生の頃の漫画だけど……兄貴に取られて勝手に売られたのを今でも覚えている。
まあ、トラウマってほどの出来事ではないと思う。だってそんなのまだマシなエピソードだしね。でもその色々があって今隣に美星さんがいるのだからそれは素直に喜ぶべきなのだろうと思う。
この人に会えなければ多分俺はずっと後悔と懺悔にしか生きれなかったしね。俺の視線に微笑んで返してくれる愛しい人に背中を押されて俺は本当に久しぶりに本を購入した。これが地味に1番好きな本になったのは言うまでもないだろう。