25.5 デートに備えて
「どうかな?」
何度か鏡で確認してから琴音とお母さんにそう聞く。すると琴音は嬉しそうに答えた。
「まま、きれい!」
「ええ、よく似合ってるわ」
「そっか……でも、やっぱり変じゃないかな?」
「もう、心配しすぎよ」
「だって、初デートだよ?清隆さんに少しでも意識して欲しいの」
多分こんなに身だしなみに気を使うのは本当に久しぶりかもしれない。普段だって別に気にしないわけじゃないけど、それでも今日は特別な日なのだ。だから少しでも清隆さんに可愛いと思ってい欲しくてこうして何度も鏡とにらめっこしてるのだ。
「ふふ、なんだか昔の自分見てるみたいである意味微笑ましいわね」
「お母さんも似たようなことしてたの?」
「ええ。お父さんとの初デートは随分と緊張したものよ」
やっぱり初デートって誰でも緊張するものなんだね。私もこんな風にデートするのは本当に初めてかもしれない。デートが決まってから仕事しててもずっとソワソワしっぱなしだったしね。
映画のチケットくれた清隆さんのお友達には感謝してるけど……まあ、それがなくても遠くないうちに私は誘っていたと思う。
「ねえ美星」
「んん、なあに?」
髪が乱れてないかチェックしているとお母さんは言った。
「やっぱり、今夜も琴音ちゃん預かろうか?」
「いきなりどうしたの?」
「初デートなんでしょ?やっぱり今日は最後までしてきたらどうかしら」
何をかは言わなくてもわかっていた。私だって清隆さんとならしたい。でも……そうして焦って嫌われたくないのだ。清隆さんは私があの男のお古だとかそんなこと思わないってわかってる。でも、それでもどこか踏ん切りがつかないのだ。
「ねぇ、美星。彼氏さんのこと好きなのよね?」
「……当たり前だよ」
「別にその手のことを先にしろとは言わないわよ。でも、あなたのその不安は早めに彼氏さんに話して解決するべきだと思うわよ
」
話すか……私が守りたいのに彼に負担をかけるのは嫌だなと思っているとお母さんは言った。
「たまには彼氏さんに甘えてみなさい。案外そういう人ほど甘えられるのが好きなはずだから」
「でも……私も清隆さんを甘やかしたい」
「なら両方すればいいのよ」
「無茶苦茶だね」
でもそうかもしれないと思ってから私はお母さんにお礼を言って首を傾げる琴音の頭を撫でて決心するのだった。きっと清隆さんは私から言わなければ何も望んでこない。なら、いっそ私が大胆に求めるのも1つの手段かもしれない。
プラスにしろマイナスにしろ……私と清隆さんが1歩先に進むために私は……今夜、彼を誘ってみようと思うのだった。