20 嫁さん友人に挨拶する
「そういや、兄嫁寝とったって言ってたもんな」
自宅のようにくつろぎなからそんなことを言う拓海。
「まあ、ある意味そうだけど……」
「告白は私からしたのである意味違いますね。そういえば、羽田さんは清隆さんとはいつからご友人なんですか?」
「うん?高校時代からだな。クラス一緒で席も近かったから仲良くなってな」
コミュ力の塊のコイツがいなければ、多分今よりボッチだっただろう。
「元兄嫁さんはどうしてコイツを選んだんだ?」
「優しくてかっこよくて素敵な人だからです。それに……私が幸せにしたいからです」
美星さんは本当にいつでも嬉しいことを言ってくれるが……俺は別に優しくもカッコよくもない。本当に優しいのは美星さんみたいな人のことだろう。それに……俺こそ美星さんを幸せにしたいのだ。
「ちなみに元兄嫁さんはこいつの兄貴とはどうして結婚したんだ?おそらくコイツとは真逆だろ?」
「デキ婚ですよ。まあ、娘は可愛いですけど、あの男には嫌悪感しかないですね」
「それは異論ないな。昔生徒会でこいつの兄貴と一緒だったが……まあ、本当に胡散臭くてな。それに、あんたも知ってるだろうが、陰でコイツに暴力ふるってるの知ってからマジで無理だったわ」
基本的に俺は兄貴からされてたことを人に話すことはあんまりない。口止めされてるし言ったのがバレたらもっと酷くなるからだ。それに、言っても信じてもられないからね。学校でも兄貴は本当に優等生で、誰も俺なんかを信じたりはしないのだ。
ただ、拓海は俺の服の下の痣を見つけてから聞かれたので答えたらあっさり信じてくれたのだ。
「あの……知ってて助けなかったんですか?」
「まあな。本人から大丈夫って言われたらこっちは何も出来ないさ。余計なお節介しても良かったけど……下手に手を出して報復されても堪らないからな。どうせなら成人してから実名放送で世間に晒した方がいいかと思ってな」
「なるほど」
……うん。まあ、昔からこういう奴なのだ。
「さてと……長居してもあれだし、俺は帰るな。と、その前に……ほい」
そう言って渡されたのは、映画のチケット。
「何これ?」
「知り合いから貰ってな。俺は興味ないしお前に押し付けようと思ってたんだが……まあ、ペアチケットだし丁度いいだろ」
手をひらひらさせてから出ていく拓海。それを見送ってから俺は勇気を出して美星さんに言った。
「あ、あの……良かったら、その……一緒に行きませんか?」
「はい。もちろんです」
即座に了承を貰えたことにホッとしていると、美星さんは上機嫌に言った。
「ふふ、初デートなんて楽しみですね♪」
……まあ、やっぱりそういうことになるよね。俺としても人生初のデートになるが……色んな意味でドキドキだ。でも、楽しみにしてくれてる美星さんを見てると俺も楽しみになってくるから不思議だ。