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15.5 傷の分だけ

想像はしていた。でも、改めて言葉にされて私は彼の傷がどれだけ深いのかを実感していた。逞しい背中には見えるだけでも無数の傷があって、それら全てが彼の兄からのものだと考えると胸が痛む。


こうして平然と笑っているけど、どれも本来笑って話せるような内容じゃない。多分清隆さんは自分に対して本当に鈍感になってしまったのだろう。猫の話なんて本気で死んでもおかしくなかったはずだ。


痛みに慣れて感覚が麻痺してるからこそ、彼はきっと自分の痛みを上手く感じることが出来なくなっているのだろうが……


(本当に、清隆さんともっと早く会えたら良かったのに)


自分が傍にいて何か出来たのかはわからないけど、少なくとも私が傍にいれば支えることは出来たと思う。


……まあ、それはそれとして、清隆さんは私が思ってたよりずっと逞しい体つきをしててびっくりした。若干の栄養不足からかでこぼこしてるところはあるが、それでも女の私から見たら凄く逞しかった。多分元夫よりも筋肉質なんじゃないかな?


(あぁ……清隆さん)


思わず後ろから抱きついてしまう。彼は胸が当たってることに大層驚いていたけど……こんな私の身体を意識してくれてるのは本当に嬉しかった。私は処女じゃない。清隆さんに初めてはあげられないのに……それでも清隆さんはそれでもいいと言ってくれた。


汚れてる私のことを綺麗だと。それがどれだけ嬉しかったか……お兄さんのお古なんて嫌がりそうなものなのに彼はどこまでも私のことを意識してくれているのだ。


何度も嫌々身体を重ねた。琴音が出来てからはほとんどないが……それでも私はあの男に汚されている。そんな私を清隆さんは受け入れてくれたのだ。この人になら抱かれたい。いや、この人の腕の中で幸せになりたい。本気でそう思ってしまう。


(それに……思ったより私の存在が大きいのもわかったしね)


彼の職場に出向き、彼が部下から慕われているのがよくわかった。多分あの言い方からして、理不尽な上司から部下の盾になっているのだろう。本当にどこまでもお人好しだと思うけど、そこも素敵だ。


それに……私のことを職場で惚気けてくれたのも嬉しかった。きっとそれだけ私の存在が彼の中で大きいのだろうと本当に嬉しくなる。


清隆さんは本当に素敵な人だから悪い虫がついてないか不安もあったけど……既婚者が多いなら一安心だろう。初な清隆さんを食べようとするような輩もいそうだが、異性として清隆さんを見てる人はいなさそうでホッとした。


(はぅ……ダメだ。抱きついてると胸が更に高鳴ってくる……)


清隆さんの裸に多分興奮してるのもあるけど、好きな人に密着してるからだろう。いや、さっきの逞しい清隆さんにもドキドキしてるけど……あれを受け入れられるだろうか?って、変なこと考えちゃダメ!


清隆さんの身体中にある傷は兄からつけられたもの。つまりそれだけ清隆さんに傷跡を残してる元夫には更に憎悪が湧いてくるけど……これからは、その傷の分だけ私が清隆さんに愛情を注ごうと思う。もう絶対彼を苦しめたりしない。そう誓いながら私はこの状況を楽しむのだった。



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