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10 嫁さんなんでもします

「そういえば、清隆さんは何のお仕事されてるんですか?」


美味しい手料理を食べて一息ついていると、そんなことを聞いてくる彼女。そういえば、ちゃんと話してなかったなぁと思って俺は言った。


「えっと、とある24時間営業のディスカウントストアで働いてます」

「もしかして、この近くにあるビックリマートですか?」

「ええ。そうですよ」


なるほど、と納得する彼女。


「どんなことを普段されてるんですか?」

「一応、ブランドものとか、時計宝飾品とか靴とかの担当なのでそっちメインで、他にも必要に応じてヘルプに入るって感じですかね?」


お世辞にも仕事のスピードは早くないのだが、そこに更に他の仕事も入ってくるのでどうしても時間内に仕事が終わらずに残業することが多いのだが、こういう時にやっぱり俺の出来の悪さがよくわかる。


「もしかして、スーツとか着てるんですか?」

「え、ええ。まあ、一応ブランド品の接客だと必要なので…よくわかりましたね」

「洗濯物にワイシャツあったので…でも、清隆さんはスーツ似合いそうですよね」


そんなこと初めて言われたかも。やっぱり美星さんは優しくてお世辞も上手いなぁと思っていると彼女は言った。


「あの、お仕事してる時に訪ねてもいいですか?」

「ええ、いいですよ。でも、見ててもそんなに面白いものじゃないですが…」

「見たいんです。清隆さんが普段どんな風にお仕事してるのかを」


そう言われるとなんか照れるけど…それなら、気合いを入れないとなと思っていると彼女は思い出したように言った。


「清隆さん。私にして欲しいことありますか?」

「え?えっと…」

「遠慮はいりません。なんでも言ってください」


いきなり言われるとちょっと悩むな…俺なんかが美星さんに何かを望んでもいいものなのだろうかと思うし、今でも十分色々して貰ってるのになぁ…


そう考えてから、ふと、昔から恋人がいたらお願いしたかったことを思い出してダメ元で言ってみた。


「あ、あの…でしたら、その…膝枕をそのしてみたいんですが…」


そう言うと彼女はきょとんとしてから、くすりと笑って言った。


「清隆さんは、欲がないですね」

「十分強欲ですよ。でも、その…俺は美星さんが傍にいるのが、その、1番望むことなのでそれ以上を望むのは贅沢というか…美星さんがいればそれでいいかなって」


結構自分でも強欲だとは思うが、それでもこんなに幸せなのにこれ以上を望むのは贅沢だと思ってしまうのだ。俺なんかが幸せになる資格はないだろうし、それでも望んでしまうのだから、本当に俺は強欲だと思う。


そんなことを思っていると彼女は優しく俺を自分の膝に誘導するとそっと膝枕をしてくれた。女性の太ももってこんなに柔らかいのかと、驚きつつも心地よくなっていると、美星さんはゆっくり俺の頭を撫でながら言った。


「もっと、私を求めてください。私はちゃんとそれに応えますから。それに、十分無欲ですよ。だって、あなたの傍にいるのは私の願いなんですから」


こんな風に優しくされたのはいつ以来だろうか?多分死ぬ前にお祖母ちゃんに頭を撫でられた時以来だから、随分と昔のように感じる。そっか、これが安心するっていう感覚なのだろうと思いながら俺は思わず瞼が閉じてしまうのだった。



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