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9 嫁さんへの合鍵

ピンポーン。


待ちに待った休みの日のこと。インターフォンが鳴るのを今か今かと待っていたので、鳴ってからすぐに反応して鍵を開けてしまったのは仕方ないだろう。


キモいって思われるかもだけど、それくらい美星さんの来訪が嬉しかったのだ。


「おはようございます清隆さん」

「おはようございます、美星さん。あの、中にどうぞ」

「はい。お邪魔しますね」


そうして入ってくる美星さん。でも、毎回これをやるのは流石に重いと思われるかもしれないし、俺は兼ねてより準備してたそれを美星さんに渡した。


「あの、美星さん…これ良かったら受け取ってください」

「え…この鍵ってまさか…」

「はい。あの、えっと、家の鍵です」


その言葉に驚く彼女…あ、あれ?なんか変なこと言ったかな?あ、でもよく考えたらこんな序盤に鍵を渡すとかもっと重いと思われるかもしれないと、ちょっと心配になっていると、美星さんは言った。


「いいですか?私が悪用したりとか考えたりは…」

「えっと、美星さんはそんなことしないと思いますから。それに、例えされても美星さんならそうする理由があると思うんです。だからその…美星さんならいいかなって」


はははと笑うと美星さんはまたしても何かを堪えるようにしてから微笑んで言った。


「ありがとうございます。大切にしますね」

「はい。あ、あの、いつでも俺がいなくても用事があれば入っちゃってください」

「自室もいいんですか?」

「ええ、何もないですし、何より昔からの癖で何も持たないようにしてるので」

「昔からの癖?」


キョトンと首を傾げる彼女。可愛い仕草にいちいちときめくのは本当に好きなのだろうなぁと思いながら俺は言った。


「何か大切なものがあると、大抵兄貴に奪われるか壊されるんです。その癖が抜けなくて…」


ゲームだろうが、お菓子だろうが、本だろうが、例えそれが死んだ祖母の遺品とかでも、兄貴は欲しいものは奪って、要らないものは当てつけに壊す。大好きだった祖母と写った写真も随分前に目の前で破かれて燃やされたものだ。


その言葉に彼女は無言で俺に抱きついてくる。柔らかい感触と祖母以来の人の温もりに思わず心地よくなっていると彼女は言った。


「私は絶対にあなたの傍にいますから。何があってもいなくなったりしません。絶対に清隆さんを守ってみせます」

「…そんな、悪いですよ。それに俺こそ絶対に美星さんを守ってみせます。だって俺は…あなたのことが大好きですから」


本当に強欲で傲慢な話になるが、俺は今生まれて初めて本当に守りたいものが出来た。これまでは奪われるしかなかった人生においてほとんど唯一の大切なもの。これだけは何があっても守りたいと思ったのだ。


だって、こんなに優しくて可愛い人を守らない理由はないし、恥ずかしい話だが、独占欲なんてものもあるのだ。例え世間に兄嫁を寝とった最低の男という認識を抱かれようとも俺は美星さんのことが大好きだし、誰にも渡したくないと心から言える。


こんな俺の事を好きと言ってくれた美星さんのことが…本当に大好きなのだ。

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