表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/28

1. 異世界


ぱちん、というシャボン玉がはじけるような音がなる。

あたり一面に、くもりのない水晶のようなものが現れては空に吸い込まれていく。


ゲームのムービーにありそうな、キラキラの幻想的な光景である。


まさにファンタジー。

そして、このキラキラを生み出しているのが何を隠そう、私である。


びっくりするでしょう?

それも当然。

だって、本人も未だに夢の中にいるような気分。

現実感をもてないままなのだから。



♢♢♢



異世界にトリップして一週間。


いつも通り、仕事が終わって帰宅途中のこと。

なぜか道路が陥没した。


何を言っているのかわからないかもしれないが、事実だ。

突然、歩いていたはずの道がなくなって落ちた。


声も出せないまま真っ逆さまに落ち、地面に激突する前に気を失ったらしい。


気がついたら神の泉という、ご大層な場所で大勢の人に囲まれていた。

これまた悲鳴もあげられないほど恐怖に慄く私。


想像してみてほしい。

見知らぬ場所で、わけもわからないまま囲まれるということを。

パニックだ。

しかし、実は囲んでいる方もパニックだったらしい。


神の泉とは、この世にひとつの神聖な場。

そのため、結界がはられているそうだ。

通るには神紋という、身体に刻まれた通行証のようなものが必要。


私が落ちてきたとき、高位の神官たちは誰かが結界を通り抜けたことに気がついた。

神紋をもつ者ではない。

だが、結界が破られたわけでもなかった。


それ故に、まさかの地球人&異世界人、双方がパニックという混乱状態に陥った。

彼らの台詞を一部抜粋。


「お前、誰だ?!」


「神紋の気配ではなかったぞ?」


「どうやって結界を通った?!」


その場に集まった高位神官たちは知らなかったらしいが、実はトリップして泉に降りたった人物は過去にもいたらしい。

しばらくして神官長が到着し、この騒ぎを治めてくれた。


「はじめまして、神子さま。」


という、とんでもない台詞とともに。



♢♢♢



ぱちんぱちん、というシャボン玉がはじけるような音がやむ。

キラキラの水晶も、最後のひとつが無事に上空の彼方に消えた。

雲ひとつない、あおい空だ。


「浄化が完了しましたね。

お疲れさまでした、ユカリさま。」


同じ青いでも、空というよりは海のような深みのある青髪の神官が近寄ってきた。

この一週間、お世話係として、こちらの世界のことや浄化の魔術を教えてくれた女性である。


「感覚つかめてきたみたい。

ありがとう、セイ。」


「とんでもないことでございます。

神子さまのためですから。

これで浄化の旅に出ることができますね。」


そう。

まさに異世界のテンプレ。


神子として闇を浄化することになったのだ。

平凡な会社員、ユカリ30歳。

異世界で、神子はじめました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ