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信用金庫の守り人  作者: 豊科奈義
曳見信用金庫防衛戦
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第八話 曳見信用金庫防衛戦その八

「一樹くん、痛い場所とかない?」


 看護師がや室内に入ってくる。一樹が改めて見ると、ここは四人部屋のようだったが、自分しか居ない様子だった。スライムとの会話を聞かれなかったのは幸いだと思った。やってくる看護師に対して痛い部分を指せるように寝返りを打った。


「背中と胸の辺りが……。いつ頃退院ですか?」


 看護師は背中の辺りと胸を凝視しする。


「そうね、肋骨骨折と軽度の血気胸、だから……最低一ヶ月ね。背中は不全骨折だから……治っても後遺症が残るかも……?詳しいことは外科の先生に聞いてね」


 高校なんて入学してまだ二日。このままクラスに入るのが遅く取り残されてしまっては、友達が仁志ぐらいになってしまう。そして、ぼっち生活を強いられるはめになってしまう。あまつさえ、もしも脊椎損傷で後遺症が残れば体育祭などでハブられるはめになってしまう。一樹は、だったら入院生活の方がいいのではと思えてくる。


「じゃ、何かあったらここのナースコール押してね」


 ベッドの隣に線でつながっているボタンのような物があった。

 ナースコールの確認している間に、看護師は行ってしまう。


「そういや曳見信どうなったんや?本店を浜松に戻す言うてんのが聞こえんやけど。スマホ見せいや」


 スライムが看護師が居なくなったためにまた喋りかける。一樹は急いでスマホを取り出した。

 ニュースアプリをタップすると曳見信の話題が次々と出てくる。静岡県内の問題だけではなく、全国規模の問題であることを一樹は実感した。


「理事長が謝罪して浜松に戻すって」

「ん??なんでや」

「え?」


 一樹にはスライムの話が見えない。


「前に高崎が、支店のときと旧本店の二回介入されてたから本店から感染したと思われるやん?でも、あんちゃんたちは旧本店と支店でしか攻撃してないやん?理事長が東京移転するって言った時は感染している状態やろ?なのに社長は我に帰ってる様子やん?」


 確かに、東京の本部で何かあったようにも一樹は思えた。すると、足音が近づいてくる。


「あなたたちスライムの仕業だったなのね」


 以前にどこかで聞いたことのある声だと一樹は振り返った。そこに立っていたのは曳見信の熨斗袋を手に持っている宮下だった。


「なぜここに?」

「お見舞いよ。治療費は曳見信が全額負担するわ。そうした方がイメージの回復にも役立つからね。で、もっと話してもらえるかしら。」


 宮下はベッド脇の椅子に腰掛けて、机の上に熨斗袋を置き、スライムを見つめる。


「因みに、あの時に本店から支店に用事があって向かっていたのは高崎だけよ。現金輸送は運送会社に委託してるから、あの支店以外では暴徒化は無かったわ。ところで、民間人には感染しないの?」

「せやで、信金の職員しか感染しないで」

「あの時は本社の転移作業中。大半の幹部はすでに東京の新本社に居たわ。でも、二時間後に謝罪と浜松へ帰る宣言をしている。その間に何者かが東京の新本社にカチコミに行ったのね」


 スライムと宮下の話だけが長引き、一樹の入る隙間がない。


「それ、何か関係あるんですか?だって地球侵略を妨害してくれたんですよ?」


 宮下がこちらを呆れた様子で見つめる。


「東京で妨害してくれた人物と協力して、地球侵略を企むスライムを追い出すのよ」

「ワイとしては無条件降伏してくれたほうが、楽なんやけどな」


 スライムはペットボトルの中で伸び伸びとしながらそう言った。


「公言したところで信じてもらえないでしょう。痛い人のレッテルなんて貼られたらますます難しくなるわ。悟られないように私達の星を守りましょう」


 宮下は何かに願うように手を合わせる。

「で、そこのスライム。何かいい作戦はない?そろそろ帰らなくちゃいけないし」


 スライムはそんなこと聞かれるとは思っておらず、答えるまでに少し時間がかかった。


「物理で殴るしかないんや」

「そう。帰るわ、またの機会に」


 そう言って早急に支度を済ませ帰っていった。


「なんやあいつ」

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