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信用金庫の守り人  作者: 豊科奈義
曳見信用金庫防衛戦
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第六話 曳見信用金庫防衛戦その六

 電子辞書を片手に握りしめ高崎の背後に近づいた。

 よし、今なら行ける。そう思い手を振りかざそうとする。しかし気配を察知した高崎が固く電卓を握り締めながら振り返った。

 まずい、そう思い慌てて横に動こうとするも遅かった。高崎が握り締めていた電卓が一樹の腹部にのめり込む。役員らしいその巨体の力は凄まじく、窓際にある待合用の椅子にまで吹っ飛び椅子の角に背中を強打する。視界がぼやけ咄嗟には動けなかった。

 ゆっくりと近づいてくる高崎に対して、一樹は鉄のにおいのする固唾を呑む。


「今の何の音……血よ!血よ!警察呼んで!救急車も!学生が職員に殴られてるわ」


 背中を強打した時の音はさすがに金を下ろそうとする群衆にも聞こえたようだった。


「おい、そこの職員!大人しくしろ!」


 入り口を警備していた警備員と、たまたま通りかかった警察官が数人駆けつける。しかし、暴徒化した高崎はその拳を抑えるつもりはないようだった。

 警察官が高崎を一斉に取り押さえようとした。しかし、高崎はその巨体で警察官を振り切り、警察官の拳銃を強奪した。

 見かねた警察官がついに拳銃を取り出す。


「新川、大丈夫か?お前は増援と救急車を」

「はい。芳川巡査長」


 拳銃に警戒している間、拳銃を奪われた警察官である新川は、応援と救急車を呼びに店外へ駆けていった。

 店内には一瞬静寂が広がる。お金を下ろそうとしていた人々は、さすがに殺されるかもしれないとでも思ったのだろう。入り口には規制線が貼られているのが一樹からは見え、外に待機しているマスコミが騒いでいた。

 警察官と高崎は拳銃を構えながら対峙する。


「今すぐ投降しなさい。さもなければ──」


 芳川が投降を呼びかけているのは高崎なのか、それとも職員全員なのか。一樹にはわからない。わかったのは警察官の背後には複数人の職員がいるということだけだ。声を掛けようにもさっきの殴打の影響で碌に声が出ない。


「なんだ!貴様ら!お前らもグルか!」

 芳川が、別の警察官を殴ろうとしている職員がいることに気づく。


「辞めろ!」


 警棒で職員の頭部を強く殴った。芳川の声とともに鈍い音も響く。


「ん?なんだこの金色の泥状の……??」


 芳川は金色のスライムを手に取るように掬う。初めて見る謎の物体に芳川は戸惑いながらも、割り切って再び拳銃を構えた。


「全員、降伏する気は無いんだな?」


 しかし、職員たちは皆正気ではないことくらい警察官と警備員もわかっている。それに応えるように、職員も徐に近づいてくる。

 芳川の目が変わる。何をするかは一樹にはある程度予測できていた。

 その瞬間、発砲音が轟く。


「今、発砲音がなりました。警察でしょうか、職員でしょうか──」


 マスコミが発砲音について一斉に報道しだして実に騒がしい。

 右手を一瞬押さえる高崎を芳川は容赦しなかった。一瞬の内に新川の拳銃を奪還、そして足を掛け転ばし咄嗟に手錠を掛けていた。


「すみませんでした」


 正気に戻った高崎はそう呟いているように感じた。しかし、芳川は気にせず他の職員の確保に向かう。高崎は右手首を金色の押さえていた。

 近くをパトロールしていた警察官も合流しし、信金職員と、警察官と警備員のどちらが勝つか……考えなくてもわかる結果だった。金色のスライムが辺り一面に飛び散る。

 そういえば、このスライムなんなんだ……。一樹は力を振り絞り、鞄に入っていた空のペットボトルに吸い込ませた。

 警察官らは残りの職員9人を確保すると、罪状を読み上げる。

「傷害未遂罪……と言いたいがそんなものはないので銀行転換に反対するものに暴行しようとした。つまり脅迫罪。高崎さん。あなたは傷害罪、強盗罪、銃刀法違反罪の三件です。異論はないな?」

「……はい」

 一樹にとって金色のスライムに何の意味があるのかはわからない。ただ、出し切って正気に戻ることを見ると、金色のスライムに暴徒化させる効能でもあるのだろうかと一樹は感じた。不思議に思い吸い込んだスライムを見ていると、何やら様子がおかしい。

 ん?動いてないか……一樹このスライムに秘密があると確信した。

「そこの君たちは大丈夫?」

 警備員たちは一樹と初老の男性の方へ向かった。

「大丈夫……です」

 一樹は声がかなり掠れるものの、立つことはなんとかできた。しかし、初老の男性の方は全く意識がなく、警備員が何回も声がけをしながら肩を叩いていた。

 一樹は他の警察官に支えられて到着した救急車に乗せられた。

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