7.トメトらしい
本腰を入れて、この世界の話を聞く。
「まずは、基本的なお話から始めましょう。
途中で何か分からないことがあれば質問してくださいね。」
「分かりました。」
ナタリーさんはニッコリと微笑んでから、続きを話し出す。
「それでは、今私たちがいる地域についてお話しします。
この世界には5つの大陸があり、それぞれ、スコーラス、フレイミア、ゴルドー、グレイタム、リフィリカ大陸と呼ばれています。
各大陸にはいくつかの国がありますが、取り敢えず今は私たちの住んでいる国だけお話ししますね。
ここはリバーブ村と言って、スコーラス大陸最大の領土を持つウォルタナ国に属しています。
リバーブ村は大きな特徴が無い小さな村ですが、強いて言えばトメトやジアイモなどの農作物が豊富ですね。」
今何か聞きなれない響きだが、どこか懐かしい気もするような言葉が聞こえた。
「あの、質問良いですか?」
「ふふ、何でしょう?」
まるで聞かれることが分かっていたかのような態度だ。
「その、トメトとかジアイモって何ですか?」
そう尋ね、ナタリーさんの顔を覗くとその目は予想通りだと物語っていた。
「奏多さんの故郷で言うところの、トマトやジャガイモです。
味や収穫時期なんかは多少違うそうですが、大体同じと思って頂いて大丈夫ですよ。
おじいちゃんが言ってました。」
ナタリーさんはどこまで行ってもおじいちゃん子のようだ。
「そうですか。そう言えば、ナタリーさんには言葉が通じるみたいですけど、日本語ってこの世界の共通言語だったりします?」
「んー、そうですね。日本語ではないですが、スコーラス大陸ではスコーラス語が一般的なので、奏多さんの言葉は基本的に通じますよ。
ちょっと訛りは独特ですけどね。」
訛りのことを指摘されると少し恥ずかしい。
親が九州出身で、俺の生まれは四国、そんでもって関西に引っ越したから言葉に癖があるのは認めるが・・。
少し赤くなった頬を手で隠すようにしながら質問を続ける。
「なるほど。訛りといえば、お祖父さんは冒険者って言うてましたけど、冒険者って何をするんですか?」
何気なく言った言葉にナタリーさんが食いつく。
「興味がおありですか!?冒険者に!」
先程までより数段眼を輝かせ、身を乗り出しながら聞いてくる。
「え、ええまあ。異世界といえば勇者とか魔王とか。
モンスター討伐やお宝探しとなるとやっぱり冒険は必須かなと。
冒険者になったら毎日楽しそうだし、昔からの夢っていうか何というか・・。」
最後は照れ臭くなってしまった。
夢を語るのは恥ずかしい。
「か、奏多さん・・。」
ナタリーさんが何かを噛みしめるようにして震えている。
下を向いていて表情は見えないが、どうしたのだろうか。
数秒の沈黙の後、顔を上げた彼女は真っ直ぐに俺を見て、天使の様な笑みをたたえながらこう言ったのだ。
「私と、冒険をしましょう。」