プロローグ
カーテンの隙間から差す陽光が眩しく部屋を照らしている。昨日の天気予報だと、どうやら今日は雲ひとつない快晴らしい。
しかし部屋の主である少年の心は曇天のようである。少し目にかかる位の茶色がかった前髪を手で掻き分けながら、不機嫌そうに目を細め欠伸を噛み殺している。
少年の名は 香椎奏多 高校一年生である。
「あー・・・もう無理。」
誰もいない部屋で呟く。寝起きからこの始末だ。
成績は真ん中より少し上、運動も人並みかそれ以上、友達も多くはないが孤独というほどでもない。体の線は細めだがそれなりに筋肉はあり、身長は170少しといったところ、よく言えば中の上、悪く言えば何につけても中途半端である。
特筆する事と言えばかなりのめんどくさがりという事くらいだろうか。
「やばぁ、これ遅刻やん。」
服を着替え準備を整える。寝癖が残っているのはご愛嬌だろう。
家から飛び出し愛用の自転車に跨り全速で学校へと向かう。
学校に行くのは面倒だが遅刻はさらに面倒だ。職員室での記帳と反省文が待っている。
キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコ「セーフっ」ーン・・・。
鐘の音がなり終わる直前に教室に滑り込む。
「またお前か、いい加減5分早く起きる習慣ぐらいつけとけ。」
「っす。」
担任教諭からの小言を二文字で流しながら席に着く。
奏多は思う。学校は退屈だ。むしろ人生が退屈であると。この世界が剣と魔法、冒険と希望に溢れていれば、と。
普段となんら変わらないその日の帰り道、少年は唐突にこの世から去る。