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フィジタル大森林の狩人〜青年は戦いの中で微笑む〜  作者: 宵永 青空
狩人と霧に消えし大鹿
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第7話『討伐隊結成』

スマートフォンで読む方は横向きを推奨します。

 俺たちは『フィジタル大森林対策本部』の前に辿り着き、中に入った。

 中にはいつもの広くもなく狭くもない待合室に、どかーんと大きな木製のテーブルが置かれている。奥の方に座っているのは対策本部の本部長が座り、後ろには昨日の受付のお姉さんが立っていた。


 他にも門番である年配の衛兵、ジリウスと組んでいる女性の魔法使いなど見知った探索者もいる。

 ライトとは違い綺麗な軽装の女性や大盾を横に立てている戦士の男性。こちらの2人は見たことがないが、ここに居るということは探索者であるのには違いないだろう。


「ジリウス、来たのね。その子と昨日チームを組んだのね。へぇ~」

「ああ、そうだ。こいつがイザベリア・ライティスト。ライト、この食あたり魔法使いが『ジュリア・レイナルド』だ。仲良くやってほしい」

「もうぅ~自己紹介が自分でするものよ。それに菌糸に堕ちたもの(マジックキノコ)で食あたりになるとは思わないじゃない~。でも、美味しかったわよ」

「俺には理解できない範疇だな」

「だから、ジリィーは駄目なのよね」


 と肩を竦めるジュリアさん。豊かな上の2つはリナには無縁のものだ。魔法使い特有の黒紫のローブを纏っているので分からないが相当いい肉付きだろうなと年頃らしい考えが頭の中でムンムンとさせる。

 そんな葛藤を気づくこともなく、ジュリアは胸を揺らしながら腕組みをする。

 ライトはそれを逸らす努力を必死にしていた。


「はぁ~い~青年く~ん~。私は改めまして『ジュリア・レイナルド』。ずっとジリウスとしか話していなかったから、話すのは初めてね。皆からはジュリアって呼ばれているわ。気軽に呼んデネ」

「はい、イザベリア・ライティストです。よろしくお願いします」


 一応相手が名を名乗ったので、改めて自分も名乗る。

 しかし、緊張でカチカチになり、限界を迎えて鼻からは赤い鮮血が流れている。

 「うん、今日死ぬんじゃないかな」と浅はかな考えをすぐに頭から消し去る。


「どうした、ライト?鼻から血が出ているぞ」

「いや、ジリウスのこと尊敬するよ…」

「何のことだ?」

「青年くん、その男に言っても分からないと思うケド」

「なるほど…本当に凄い」


 魔法使いは慣れているのか呆れ笑いを浮かべ、それにライトは納得する。


(ジリウスはこういったところは鈍感なのか……俺にもそんな特性があれば、こんなにムンムンとしないのに。最後にもう1度言おうか。ジリウス、マジリスペクト)


 内心でジリウスに親指を立てていると後ろから声が掛かる。


「おお、坊主じゃねぇか。やっと来たのか。おい、レグド。坊主が来たぞ」

「知ってるわ、ジジィ。見れば分かる」

「がははっ!!そうか。それは失礼したな」


 いつもはサリュダルの門番として立っている老年の衛兵の軽快な声に怒鳴り散らすこの男性。

 かなり言葉遣いが酷いようだが、本部長であるこの人物。

 彼はまだ若いというのにこの対策本部を切り盛りしている。

 まだ20代後半といったところだろうか。彼はライトをじいっと見つめ、口を開く。


「俺の祖父が失礼したな。私は『レグド・ブライシアス』。ここのフィジタル大森林対策本部の本部長をしている。お見知りおきを」


 さっきとは打って変わって丁寧な口調だ。ん? 祖父? あの老年の衛兵が?

 と不思議そうに年配の衛兵を見ると、いつもの笑顔になる。


「そういえば、名前言ってなかったな。わしは『ジーク・ブランシアス』。元ここの本部長だ。今は孫に譲り、気まま生活をしている。衛兵は趣味でやっている」

「そうなんですか…初めて知りましたよ」


 まさかいつも朝に話す人物が元本部長なんて思わないだろう。

 この人とは俺が探索者を始めた頃から世話をしてもらっていて、罠の作りかたや魔物の特徴など色々と教えてもらった。


(なるほど、探索者についてかなりの知識があるのも納得できた。けど、衛兵は趣味だったんですか)


「突然で失礼なのですが、今日ここに集められたというのは何かしら?」

「ああ、今から説明しようと思う。集まった者は空いている席に座って欲しい」


 そう促されたので、言葉通り椅子に座る。

 一番後ろの席にライト。その左隣にジリウスが座った。

 レグドは周りを見回し、ため息を漏らした。


「10人中5人しか集まらないか…」


 レグドが言ったのは上位の探索者のことだろうか。

 上位種に対して生半可に戦力では倒せない。

 少数精鋭で行った方が確かに犠牲者も出さず、効率がいい。

 しかし、5人では心もとない気がするが……。


(俺も上位に入っている?いやいや、それはないね。目撃者ってだけだね)


 そう勝手に思い込んでいるとジークが口を開く。


「しかし、ずっと野放しにできないしな。しょうがあるまいな」

「そういえば、あたし達は何でここに呼ばれたのよ?」

「うん、オラも気になっていたさ」

「『ルル・オリーシュ』と『グラン・デラージ』か。すまないな、今から始める」


 この2人もフィジタル大森林で活躍する探索者だろうか。

 横にいるジリウスがそれに気づき、補足をしてくれた。


「あの2人はチームで組んでいる探索者だ。女の方が『ルル・オリーシュ』。男の方が『グラン・デラージ』だ。主に狩りやすい下級種やたまに中級種をしている上位の探索者だ。けど、お前ほどではない。お前はもっと凄いからな」


 そんなに褒めてもらっても、生きているのは運がいいだけだからだ。

 ジリウスの買い被りすぎだろうとライトは思う。

 とりあえず整理してみると、

 ライト、ジリウス、ジュリア、ルル、グランの5人。

 ライトは大体話されることは分かってはいるが、聞かないわけにもいかない。

 レグドが咳払いすると、皆が一斉に方向を向いた。


「今日は集まってもらったのは他でもない。ヴェルク()の奥地で霧に消えし大鹿(ミストキラー)が目撃された。それも快晴の日にだ」

「ミストキラーが何で晴れている時に…」「オラもそんなこときたことがねぇ」


 とレグドの言葉にルルとグランは自分の感想を述べている。


「犠牲者も死亡7人、負傷者が10人以上という報告も受けている。深刻な状況だ。そこで諸君らに集まってもらった。理由は察しただろうか?」

「ええ、それをあたし達だけで討伐するということになるわよねそれ!!」

「その通りだ。これ以上の犠牲者は出させてはならない緊急事態だ。諸君らにしか出来ない」


 昨日よりも襲われている探索者が多いことが分かった。3人以外にも4人が殺されていたのかと思うとライトは冷や汗をかいた。

 それは周りも同じで、皆々(みなみな)も不安を顔に出していた。


「皆が怖いのは分かるが、これ以上に被害が出たらどうなるかは分かっているだろう。お願いだ。皆の協力が必要なんだ。どうか引き受けてはくれないだろうか」


 レグドが頭を下げる。皆は驚き、ジークも目を見開いていた。

 そこに青年の一言が響き渡る。


「俺は参加させていただきます」


 この中で一番の若手であるライトが名乗りを挙げる。


「そうだな、俺も参加させてもらう」

「なら、私も参加するわ」


 とジリウスとジュリアもライトに続いた。そして、


「分かったわよ。私も参加するわ」

「オラも参加するだ」


 とここに来ていた探索者は全員が同意を示した。それに頭を下げていたレグドは勢いよく顔を上げる。


「本当に諸君らには感謝の言葉では足りない。目的を達成できたのなら、うんと報酬を弾もう。本当にありがとう」


 再び頭を下げ、探索者に感謝の弁を述べる。

 それに探索者たちは頷き、お互いの顔を見合った。

 今こうして霧に消えし大鹿(ミストキラー)討伐隊が結成されたのだ。

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