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フィジタル大森林の狩人〜青年は戦いの中で微笑む〜  作者: 宵永 青空
狩人と霧に消えし大鹿
3/67

第3話『重戦士の男』

スマートフォンの方は横向きにすることを推奨します。

 街から離れて数十分。30分も経ってはいないだろう。

 街から近いこの辺りはまだライトの脅威なるものはいない。

 しかし、ライトは走っていた。

 木と木の間を上手く潜り抜け、少し開けた場所へ出た。

 その場で一番大きな木に身を隠し、息を殺した。

 追いかけてくる魔物を迎撃しようとしていたからだ。


 事の発端は人の声が聞こえたので、声の出処へ歩むことにした。

 何か困っているのかもしれないと思ったが、それがいけなかった。

 ずかずかと警戒もせずに進んでいくと声の正体に驚いた。

 三匹のキノコ型の魔物が会話をしていたのだ。

 そこに居合わせてしまったライトは案の定、追いかけ回されることになる。

 そして、現在に至る。


(それにしても、菌糸に堕ちたもの(マジックキノコ)が言葉を話すだなんて……)


 マジックキノコは人間の子供くらいの背丈で、キノコの形をしている。

 巨大キノコに成りすまし、獲物を襲うという卑怯者だ。

 分からない初心者は特に引っ掛り、年間被害者は絶えない。

 はっきり言って、外見は魔物というよりも化け物ではあるが。


「ド~コデ~スカ~」

「コノヘン二キタトオモイマスケド」

「ソウデスネ~サッキノヒトノキンノニオイガシマス」


 しかも、3体。数年間も探索者をしているが、慄然としてしまう。

 それに加え、カタコトの言語がさらに体を悪寒が走る。

 1体の戦闘能力は大したことはないが、危険を感じると胞子を出す。

 これには2種類のタイプがある。

 この胞子がどちらも厄介極まりない。

 体の自由を奪う『麻痺』、幻覚を見させて困惑させる『混乱』。

 味方、敵に関係なく放出するため、油断していけない。


「コノヘン二イマスネ~ボクニハワカリマス」


 1体が前へと出る。ライトの短剣の間合いへ近づいてくる。

 一歩、二歩、三歩目……ライトは、短剣を握り締め、大きく前に踏み出した。


「……!!ッ…」


 マジックキノコを斬り込んだ。

 怯んだ隙を見て素早く懐に入り込み、短剣を深く刺し込む。

 動かなくなるまで押さえつけ、息の根をしっかりと止める。


「アレェ? アノヒトイキナリキエテナイデスカ?」

「アッ!! ホントウデスネ。ドコイッタンデスカ、アノヒト」


 仲間が死んだということには気づいていない。

 知能は、本能に従う動物と大差がないのかもしれない。

 奇襲は成功し、余裕を持って2体のマジックキノコと対峙できる。


 音を立てないように、肩に掛かっている矢筒から矢を取り出す。

 弓の弦に引っ掛けて、後ろに伸ばす。

 狙いは、右の1体。動く気配はなく、絶好の機会だ。

「いけっ」と小声で呟き、しなっていた弓から矢が一直線に目標に向かう。

 見事身体を貫き、しばらく痙攣してから、動かなくなった。


 貫かれた仲間を見て、危険だということは察したらしい。

 頭を震わせ、白目を向いている。それは、胞子が撒き散らす時の仕草。


 (ここだと、まずい……)


 ちょうど胞子の範囲内に入ってしまっていた。

 弓矢で攻撃する余裕もなく、焦燥で頭が正常に機能しなかった。

 自然と身体が後ろへと駆け出した。いや、駆け出そうとした。


「モウ……ナンナンデスカ……」


 後ろで魔物の断末魔が聞こえた。足を止め、思わず後ろを振り返る。

 確認すると胞子を出そうとしたマジックキノコが泡を吹いていた。

 マジックキノコには剣を突き刺さり、死んでいた。

 死体の横に剣の柄を掴み、剣を引き抜いた男性が立っていた。

 見覚えがある。あの人は確か……


「えーと『ジリウス』さんですか?」

「ああ、お前か。よく2体も倒せたもんだ。

 手柄的には俺の方が高いと思うがな」

「そうですね、危ないところ感謝します。

 しかし、なんで単独ソロでやっているんですか?

 いつものチームはどうしたんですか?」


 目の前の剣を握っている男性は『ジリウス・ドーズル』。

 重戦士の格好し、兜はつけていない。

 こんな重装備にも関わらず、想像も出来ないくらいに早く動けるのは圧巻だ。

 俺もその力で今助けられたばかりだった。


 ジリウスさんは、魔法使いの女性と軽装の少年の3人でチームを組んでいる。

 仲間割れでもしたのだろうか。

 何回か出会ったときは、和気あいあいとした良い雰囲気のチームが印象的だった。


 フィンダル大森林のような魔域をより深く探索するために探索者同士で組むことを『チーム』と呼ばれている。


 ジリウスさんは上位のチームで中級種狙いの狩り専門のチームだったはずだ。

 どうしてこんな街の近辺にいるのだろうか?

 悩んでもしょうがないので直接聞いてみたのだ。


「あいつらはこの菌糸に堕ちたもの(マジックキノコ)を焼いて食べたら、腹を壊してな。

 唯一食べなかった俺なんだが、ここに来ないと暇でな。

 適当にぶらついていたら、お前が襲われているのも見つけたもんでな、

 さっきの状態ってことだ。納得したか?」

「そうなんですね。あんな仲良く見えましたから仲間割れとは思わなかったので、安心しました」

「そんなんじゃねぇよ、俺は仕方なくだな……」


 ボリボリと頬を掻いている。若干顔が赤めいているので照れているのだろう。

 そんな分かりやすいな仕草に思わず綻ばせてしまう。

 ここにはいない2人がチームを組むのも分かる気がした。

 暇そうだから奥に行って見てもいいかもしれないと思い、提案した。


「ジリウスさん、じゃあ俺と一緒にチームを組みませんか? 一時的なもので」

「ああ、良い暇つぶしになりそうだしな。そうだな、行ってやるか」


 直ぐさま快諾してくれたため、話はすぐ決まった。

 奥に行く前に、マジックキノコの剥ぎ取りをしなくてはならない。

 一応下級種に属するのでそれなりの値段になる。

 3体だと銀貨3枚×3で9枚の計算だ。


「1体は俺が殺ったから、頂いてもいいな?」

「もちろんですよ、僕は自分で倒した2体を頂きます」


 さすが上位探索者、しっかりと貰えるものは貰う。

 上位探索者は大体たかだが銀貨3枚なんてと、慢心に胡座をかいて大抵は単独ソロでやっているライトにあげるものだ。

 しかし、ジリウスは探索者の基礎をしっかりとこなしていた。

 傍から見ればケチに見えるのだが、ライトには立派な探索者に見える。


 ライトはその中の1人のジリウスと組めて良かったと感じた。

 お互いに剥ぎ取りを終え、話し合うことにした。

 結果は、中級種を仕留めて山分けとなった。


「ではよろしくお願いします、ジリウスさん」

「こちらこそな。あと、さん付けじゃなくて『ジリウス』でいいぞ」


 少し考えた後、俺はジリウスの前に手を出した。


「改めて、ジリウス。よろしくお願いします」

「おうよ。ライト、よろしくな」


 手と手を合わせ、ガッチリと握手する。

 手に少しヒリヒリとしたやんわりな痛みが残る。

 それがとても頼もしいとより想いを強くする。


 まだ今日初めて組むためか、ライトは緊張していた。

 しかし、決まった足取りは非常に軽いものだった。

 大森林の奥へとライトとジリウスは並んで歩いていく。

今回も読んでいただき、ありがとうございます。

新しく登場人物も登場させました。この男と出会い主人公に何が起こるかは考え中です。

人物について詳しく書かないのはまだ設定に迷っているので申し訳ないです。

決まり次第本編で想像しやすく書こうと思っているのでご了承ください。

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