第11話『新たな依頼』
しばらく考える予定だったのですが諸事情で忙しくなるので書けていた分だけでも投稿します。
スマートフォンの方は横向きにすることを推奨します。
ライトが目覚めてから2週間。
体の痛みは消えており、動かしてみても差し障りはない。
食卓に探索用の装備で行くと「兄さん、まだ安静にしていてください」とリナに止められたが、生活するにも金が必要だ。
その金も無限にあるわけでもないので、ゆっくりしていることもできない。
現在、止めるリナを説得しようと奮闘中。
「兄さん、まだ生活費は残っています。なので、まだ家の中にいるべきです」
「それでも、リナ。俺の体も鈍っちゃうし」
「体の安全に比べたら、どうとでもないことですよ」
「ほら、食料も減ってきているし採集に」
「市場で買えますし、生活費も残っていると言いましたよね?」
「じゃあさ、霧に消えし大鹿の報酬を貰いに対策本部まで」
「そう言って大森林行ってから向かうつもりですよね。駄目です。許可できません」
強固なリナという壁(胸のことではない)は、玄関の前に立ちはだかる。
口先でのリナは強すぎる。
いや、ライトが弱すぎる。
ただ、それだけの話だ。
「ですので、今日も休んでいてくださいね」
終止符を打たれ、リナは無理にでもライトを部屋に戻そうとする。
玄関のドアからノックが響く。
リナは押す力を弱めると「絶対に駄目ですからね」と釘を刺す。
そして、ドアを開けると重戦士の男が現れる。これは好機だ!!!
「おはようございます、ジリウスさん」
「おはよう、嬢ちゃん。ライトはもう大丈夫か?」
「いえ、兄はまだ…」
「ジリウス、ナイスタイミング!!お呼ばれしたから、リナ留守番頼むよ」
「ちょっと、兄さん!!」
ライトはまさに矢の如く、玄関を飛び出した。ジリウスの助け舟様様だ。
その様子にリナは怒り、ジリウスは笑っている。
「あのような兄ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、病み上がりの兄貴を連れ回すようで悪いな。あれでも、この街の探索者としては上位に入る実力者だからな。けど、安心してくれ。もし、危険があっても俺がいるから任せな」
(兄さんの強さは知っている。あの大森林でいつも無事に帰ってくるのだから。そんな兄さんでも死ぬ直前で運ばれたときは改めて、あそこは危険なところなんだと思い返したのだ。兄さんがまたそんな目になってしまったら、私は今度こそ耐えられないよ。けれど、目の前のジリウスさんもまた上位の探索者。無理をしているようだったら、止めてくれるはず。なら、安心して任せてもいいかな……)
リナはジリウスに軽く会釈程度に一礼をする。
「はい、お願いします。どうかお気をつけて」
「ありがとよ、嬢ちゃん。またな」
手を振るとジリウスも手を振り返しながら、走り去っていく。
その背中を見送るとため息を吐いていた。
(もっと兄さんと一緒にいたかったな…)
朝焼けに染まる街の中で少女の顔も朝焼けのせいなのか赤く染まっていた。
「ジリウスは良いタイミングで来てくれたよ、助かった」
街の大通りに出ると、ライトはジリウスに感謝を述べた。
市場はいつものように朝から賑やかだ。
見ているこっちも元気が湧いているのは不思議だった。
そんな中ジリウスは呆れた様子で息を吐きながらも、ライトについて来ている。
「妹が心配してるってのにお前は」
「知ってるけどさ、やっぱり大森林に入らないと落ちつけないんだよね」
「そ~うかいっ、まあ俺もそう変わらないものだから何も言えねぇんだがな。それとな」
「うん?」
「俺たちに依頼があるらしい」
「俺とジリウスだけで?」
「ジュリアも一緒だ。あいつは乗り気じゃないみたいだけどな」
「えっ?俺は病み上がりだし、遠慮させ…」
そんなやり取りをしながら、『フィジタル対策本部』と掲げられた木札の建物に辿り着く。「まあ、聞いてみれば分かるさ」と無理やり、話を終わらせられる。
項垂れて渋々と中に入ると、狭くもなく広くもない待合室には何か稼げる依頼がないかと探している探索者たちが数人いる。
その中をすり抜けて、奥にある受付へと向かう。
こちらに気づいたいつものお姉さんはいつもの笑顔で話しかけてくれる。
「おはようございます。お久しぶりですね」
「おはようございます。久しぶりです」
「お怪我の方はもう大丈夫なのですか?」
「はい、動かしても痛くないのでもう大丈夫だと」
「そうですか、それは良かったです。それとジリウスさんから聞いていますか」
いつもの社交辞令を交わし、本題へと移らせられる。
目を逸らしてみるのだが、受付さんはこちらを笑顔で向けている。
ライトは知っている。
あれは怒っている時のリナと同じ偽りの張り付いた笑みであることを。
大人しく従った方が賢い選択……。
「はぁ…それで依頼って何ですか?」
「はい、さすがライトさん。実は最近林檎の採集の量が少ないんです」
あざとく、ライトを褒めると話を進める。
「男たちはこれでいい気にさせられるのだろう」とライトは気の毒に思った。
女って恐ろしい。
ライトは大蛇に睨まれた蛙の気持ちが分かった気がする。
話を戻すが、普通林檎というものは木に実るもの想像する。
しかし、フィジタル大森林はそうではない。ここは魔物がいるという世界でも珍しいところだ。
ここではある特定の魔物の糞からこの林檎は採れる。
「採集専属のチーム方々が不調とかではなく?」
「違います。林檎の数が少なくなっている原因。林檎の採れる『林檎を宿す大猿』の巣が何者かに襲撃された痕跡があり、1匹残らず殺されていたらしいです。魔物が襲撃したのだったのなら、剣で切りつけた後や槍で突いた後も残らないはず。しかし、林檎を宿す大猿を狩る冒険者は絶対にいないはずです」
「確か、『狩猟禁止指定』の魔物ですよね」
狩猟禁止指定とは生命活動を行う上で何らかの利益をもたらす魔物のことだ。
リンゴリラの糞こそがまさに珍しい果実として利益をもたらしている。
非常に濃厚なのに後味がすっきりしているという神秘的な味として、他国では高級品で売られている。
それ故に、殺した場合に課せられる罰は1年間のフィジタル大森林の出入り禁止か、金貨25枚の罰金。もしくはその両方である。
探索者にとってこれは死活問題だ。たとえ正当防衛であってもこの罰は適用されるのだ。
しかし、ばれなきゃ罰は課せられないので言わない者のがいるので報告で判明する。
報告をした冒険者は報酬として金貨3枚を貰えるので積極的に報告するものが多い。
だからこそ、誰も殺したがらない。巣を滅ぼす程殺す者も、まずいないはずだ。なのだが…
「そうなんです。しかし、探索者の仕業とは考えにくい。ですので、この調査を」
「俺たちに頼みたいと」
なるほど、確かに大惨事だ。しかし、何をどうやって調査するのか?
そこはジリウスのチームであるジュリアさんに期待しよう。
ジリウスは「俺はやってもいいが?」と言ってくる。しょうがないな。
「分かりました。その依頼受けましょう」
こう言うしかないのである。
「はい、ありがとうございます。フィジタル大森林では何があるかは分かりません。無事に帰って来ることを待っています」
結局、依頼を受けることになった。
ジリウスとお姉さんはお互いに親指を立てている。こいつら、グルだったんですね。
はい、最初から逃げ場なんてありませんでしたとさ。
(ああ、また厄介なことに巻き込まれたのではないのだろうか)
そう頭を抱えている様子を受付さんは微笑み、ジリウスはゲラゲラと笑っていた。
ライトは心の中で妹に対して、ごめんなさいと謝った。
遅かれ早かれと、言い訳を考える羽目になったのだった。
読んでいただきありがとうございます。読んでくださる方々に感謝です。
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諸事情で申し訳ありませんが、来週の水曜日からまた早く投稿できるようになると思いますので、ご了承ください。




