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フィジタル大森林の狩人〜青年は戦いの中で微笑む〜  作者: 宵永 青空
狩人と霧に消えし大鹿
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第1話『狩人の青年』

ファンタジーもの連載作品です。

まだまだ実力はありませんが、何卒よろしくお願いします。

スマートフォンで読む方は横向きにすることを推奨します。

 もう既に空の色は水色からオレンジ色へと染め上げていた。

 『魔物』が出る、大陸でも珍しい森林に1人の青年が居た。


 『フィジタル公国』の領土を7割を占める大森林。

 その大森林は『フィジタル大森林』と呼ばれている『魔域』である。


 魔域とは世界で魔物の出現を確認されている立ち入り禁止区域。

 そこに立ち入れるのは『探索者』と呼ばれる者達だけ。

 青年は探索者であった。


 大森林の中で身を潜め、息を殺していた。

 風が吹き、ガサガサとした葉の音が耳に届く。

 研ぎ澄ました眼は向こうにいる白い獲物に集中する。

 目標が動く。

 集中した意識を途切れることなく、素早く後ろの矢筒に手を伸ばす。

 弦を引き、手を離す。

 風を切る音と共に、目の前の魔物を貫いた。

「ぴぎゃっ!」という小さな悲鳴を上げ、そのまま動かなくなる。

 安堵の息を漏らし、力んでいた全身が力が抜けた。


「今日はこれくらいでいいかな」


 兎の形をした目の前の魔物は『耳長ウサギ』。

 戦闘能力は低いが、耳が発達しているため感知能力が高く、逃げ足が速い。

 最下級種さいかきゅうしゅを代表する魔物であり、狩ることが出来れば初心者卒業とも言われる魔物だ。


 耳長ウサギを討ち取ったのは『イザベリア・ライティスト』。 

 彼は祖国であるここを拠点に狩りを行う探索者であり、狩人だ。

 皆からは『ライト』の愛称で呼ばれる青年は周りに安全を確認をしてから、耳長ウサギの剥ぎ取りを行う。

 使える部位は容赦なく頂き、使えない部位は森の土へと還す。


 剥ぎ取ったものを腰に巻いているバッグの中にある麻袋に入れる。

 周りを見渡し、安全であることを再度確認。

 それから、帰り道に足を向ける。


 森を抜けると、石のレンガが幾度も重ねて造られた城壁が見える。

 その頃には、オレンジ色の空も黒い闇に染められていた。

 目の前の城壁の中でライトが生まれ育ち、祖国である街。

 フィジタル公国の唯一の街、首都『サリュダル』。


 ライトはサリュダルの門を潜ると、国の中へと今日も無事に帰ってきたと安堵する。

 夕食の時間帯の大通りは閑散としている。

 その中を歩き、ある建物前で止まる。


 『フィジタル大森林対策本部』と大きな木札にそう書かれている。

 ここは世界で魔物が確認され、魔域と認定した団体のフィジタル公国支部。

 フィジタル大森林の突如現れた『魔物』に対して研究している団体だ。


 ここで魔物から採れる素材の売却が出来る。探索者はこの売却した報酬によって生活をやりくりしており、ライトもまたその1人だった。

 新種の魔物や魔物の情報などを提供するとお金が貰えたりする。

 その情報の大半が嘘で、魔術都市で創られた嘘発見機により、判別される。

 ライトも一度目撃した情報を提供した時にお金が貰えたため、正しく機能しているといえる。


 扉を開け、中に入ると広くも狭くもない待合室に出る。

 フィジタル大森林の関しての資料が壁に貼られ、フィジタル大森林から採れる素材の依頼などが左の掲示板に貼り出されている。少数ではあるが、こういった依頼を受けて生活をしている者もいる。

 もちろん先程の話に出てきた嘘発見機もここにある。


 さまざまなもので乱雑している待合室を抜け、受付に向かう。

 歩いてくるライトを見つけ、受付嬢はカウンターで笑顔で迎えてくれる。

 青年は自分の成果が入った麻袋を笑顔の彼女に渡した。


「ライトさんですね、こんばんは。今日は……耳長ウサギ三体に、『一つ目(ひとつめ)フクロウ』二体。これは『煙りを纏いし幻鹿(スモークディア)』じゃないですか!! 中級種(ちゅうきゅうしゅ)を1人で倒すなんてさすがですね、ライトさん」


 感嘆を発し、青年を褒める受付嬢。


 魔物は”最下級種(さいかきゅうしゅ)下級種(かきゅうしゅ)中級種(ちゅうきゅうしゅ)上級種(じょうきゅうしゃ)最上級種(さいじょうきゅうしゅ)”5段階の強さで分けられる。

 右に行けば行く程、危険度が増す。

 最下級種は初心者1人でも充分に対処できる程度。

 下級種は初心者が団体で充分に倒せる程度。

 ライトが倒した中級種は初心者では全く歯が立たない。

 特殊な能力を持つ個体が多くなるために、倒すのが難しくなるからだ。

 ある程度の経験を積んだ者や熟練の者たちが団体で挑み、倒せる程度。


 故に、下級種と中級種には厚い壁が存在している。

 駆け出しか、中堅者かを隔てる1つの判断基準にも使われることも多い。


 その中級種を単独で倒した青年が褒められるのも当然だろう。

 上級種や最上級種は魔域の奥地に住んでいるのがほとんどだ。

 狩猟している探索者も、主に下級種と中級種を狙っている。

 もしも、出現した場合は上位の探索者達に討伐を頼むか、近くの他の魔域のある対策支部に連絡するようになっている。


 他の魔域のところでは、対策本部と対策支部に別れているのだが、フィジタル大森林は国自体が大きくはないために対策本部しか無い状態である。

 フィジタル大森林はかなり広範囲ではあるのだが。


 ライトは人差し指でほっぺを掻きながら、遠慮がちに話す。


「偶然、背を向けているのをたまたま矢で打ち抜いただけです。

 今日は幸運でした。それで合計でいくらになりますか」

「そうですね……耳長ウサギが1大銅と5銅。

 一つ目フクロウが5銅。スモークディアは3金と5銀。

 合計で3金と5銀と2大銅です……どうぞ。間違いないですか」

「えーと……大丈夫です、合っています」


 袋に入った貨幣を受け取り、確認が終わり腰のバッグにしまう。

 この世界の共通の貨幣。

 金貨1枚で銀貨が10枚、銀貨1枚で大銅貨10枚、大銅貨1枚で銅貨10枚の価値だ。


「よかったです。スモークディアなんて大物を相手にして、お疲れ様でした。

 今日はしっかりと休養してくださいね。無理は禁物ですよ」

「分かっています。今日も集計ありがとうございます。また来ます」

「はい、こちらこそ。ライトさん、お疲れ様でした」


 そんな社交辞令を交わし、対策本部を出る。

 空には月が昇り、すっかり夜になった。

 街の中に鐘の音が響き渡り、城門が閉まっていく。

 夜は活発になる魔物が多く、安全対策として夜から朝まで門を閉じるのだ。

 飛行系の魔物は今のところは無害なものしかおらず、それ以外では確認されていないため周りを囲う防壁は充分に機能している。


 大通りでは酒場や宿屋の明かりで爛々と明るい。

 しかし、住宅街までに歩くとちらほらと明かりはついているが、ついていない所も多くなる。そんな少し暗い街道を歩き、自宅へと戻ってきた。

 家からはお手製のシチューの良い匂いが立ち込めている。


「ただいま、リナ」

「おかえり、兄さん。怪我はないですか」

「心配しなくても、今日も大丈夫。晩御飯はシチューかな」

「もう兄さんは心配します。今日は耳長ウサギのシチューです」


 本日何回目の耳長ウサギを聞いたんだと思いながら身繕いを済ませる。

 料理が分けられている食卓の4つある椅子の1つに腰掛ける。

 リナはライトと対面するように座り、手を合わせる。


「それじゃ、森の神秘に感謝していただきます」

「はい、いただきます」


 独特の掛け声は、狩人である彼だからこそ言える。

 一口食べるごとに「美味しい」と連呼するライト。


「言葉は嬉しいですけど、静かに食べてくださいね」


 そんな妹の可愛い叱咤に大人しく従い、料理を全て平らげる。

 昼ごはんは自分で調理するため、簡素になってしまう。

 味付けも豊富な夕食は、ついつい食べ過ぎい、尚且つ美味しい。


 そんな幸せな夕食を食べ終えると眠さが襲ってくる。

 ライトが欠伸をすると、リナにベッドで寝るように促される。

 それに大人しく従い、自室のベットに寝転び眠りにへと堕ちる。

 これが、フィジタル大森林の狩人イザベリア・ライティストの日常である。




 そして、これは狩人の青年が歩いた軌跡の物語である。

申し訳ありませんが、掲載は不定期です。

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