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仮面の下は…【未完】  作者: YUKI
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5.弟くんと彼女の狂気




 兄たちが帰った後、瑞稀は一人コーヒーを片手にソファに座り込んだ。



(……旦那様と会うのか…。…めっちゃ憂鬱…)



 死んだ目でボーッとしている瑞稀。何も聞こえぬ空間と化した。


 そんな中―…



 ――ブー ブー ……



 ローテーブルの上に置かれた瑞稀の“黒い”スマートフォンが着信を告げるバイブを響かせた。



 ――ブー ブー ……



 一向に取る気がない瑞稀。何度もかかってくる。



(……)



 沈黙に支配された空間にバイブの音だけが流れ、約五分後。微動だにしなかった無気力な彼女が動き出す。

 が、立ち上がった彼女が向かった先は隣の寝室。黒一色で統一された部屋のド真ん中に、純白のクイーンサイズのベッドが堂々と鎮座している。



(……眠い…)



 そのままベッドに倒れ込むように寝る瑞稀。リビングで今だに黒いスマートフォンがバイブを鳴らしている。



(……今は働きたくなーい)



 そしてウトウトし始める。いつも抱いているイルカの抱き枕に顔を埋めるように抱き込み、完全に寝る態勢に入った。



(…おやすみー……)



 制服のまま寝てしまう。 が――




 ――ドン ドンッ 




 何者かがマンションの扉を乱暴に叩いた。



「……チッ…」



 令嬢に有るまじき舌打ちをするが、元々寝起きが悪く誰かに起こされる事を極端に嫌う彼女を起こしたのだ。扉の前にいる人物の死は確定だろう。




 ――ドン ドン ドンッ!




 キレた瑞稀が玄関へ行くまでの間、ずっと叩かれ続ける。

 玄関に近づくにつれ、だんだんと怒りのボルテージを上げていく。




 ――ガチャ…




「ルナ!俺がどれだけ電話して――」

「てめぇ、ふざけてんのか?あ゛あ゛」



 扉の前に立っていた黒髪黒眼でイケメンの部類に確実に入るであろう男に、殺気をぶつけ怒りが爆発する瑞稀。その瞬間、怒鳴っていた男の顔が面白いくらい真っ青に。いや、もはや真っ白になっていった。



「ル、ルナ、もしかして寝てた…か…?」

「分かってんなら来んな。今何時かちゃんと理解できてる?」

「…0時半…過ぎ……」

「うん、じゃ、おやすみ」

「ちょっ!!!」



 男が止めに入るが、全く気にせず部屋の奥へと消える瑞稀。



「ちょっと待てって!!」



 寝に帰った彼女を追いかけ、男も部屋へと上がり込む。



「……不法侵入で警察呼ぶぞ」



 怒りのボルテージをまた一つ上げ、ドスのきいた声で男を睨みつけながら静かに言う。その顔がまたどこまでも無表情なのが恐怖を煽る。



「き、聞いて下さい、ルナさん」

「やだ」



 懇願する男を一刀両断する。全く容赦がない。



「き、清端のじじぃの事なんだよ!!」



 その一言で瑞稀の動きが止まる。



(…あのじじぃ、やっと動いた…の…?)



 無表情だった顔が徐々に悪魔の微笑と化している。

 ウィッグとカラーコンタクトレンズを付けていない今、白銀の長髪と蒼と紫のオッドアイで普通の人より悪魔のように見える。



(…めっちゃ綺麗な美女が怖い微笑を浮かべたらマジで怖いな…)



 腰が抜けそうな男のそんな心の声が、幸か不幸か瑞稀に届くことはなかった。






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇






(ルナって…。こんなヤツだっけなぁ…)



 ため息を付きながら思っていた。

 そして、快成がさっきから呼んでいる“ルナ”という名前。彼女が闇に紛れる時、“月宮”の苗字から“ルナ”と取った。まぁ、彼女をその名で呼ぶ者はあまりいないが。


 気まぐれにBarを経営している彼女。Barの名は“Luna(ルナ) Rossa(ローサ)”。イタリア語で”赤い月”の名を持つこの店は、表向きは高級感漂うクラシックな雰囲気のBarだが、裏では知らぬ者はいない程有名な情報屋“紅の黒猫”である。


 そしてそのオーナーであり経営者である瑞稀は、“黒猫”と呼ばれていた。



(…名前の由縁が「無理に情報を引き出せば、血の海を作り出す事になる」とか…。美女に向かって言う事じゃねぇだろ…)



 ソファに座り、微笑みながらずっと何かを考えている瑞稀。快成は彼女の目の前に座り、諦めたようなため息をついた。



(にしても、ウィッグとカラーコンタクトレンズだけでまるで別人だな)



 自分の長い白銀髪で遊んでいる。



「…なぁルナ。どーすんだ、行くか?」



 自分の世界にすっかり入り込んでしまっていた彼女に言う。

 すると、彼女は遊んでいた手を止め、微笑んでいたその口元を何か企むようにクイッと引き上げた。



(ちゃんと口で言えばいいのに…)



 ため息を付きつつ立ち上がる。



「じゃ、先に下に降りてるからな」

「うん、準備終わったら行くから」



 ソファに座ったままの彼女を残し、快成は彼女のマンションから出た。










 快成が去った後、一人ソファに座っていた瑞稀は、溢れ出る笑みを抑えることなく、狂ったように笑っていた。



(やっと、やっと…!!)



 その狂気じみた笑みのまま数分後。微笑みは浮かべているものの、やっと落ち着いたのか寝室へと行く。



(行くならやっぱ黒猫の恰好だよね)



 楽しそうに着替えを始める。それだけ見れば、彼氏とのデートに行く女の子がウキウキと服を選んでいるように見える。しかし、その瞳は血走っていた。


 手にした服は黒のショートパンツに黒のフード付きパーカー。その下に黒のワイシャツと深紅のネクタイ。そして、白銀髪を綺麗に梳き、紫のオッドアイを蒼いカラーコンタクトレンズで隠す。

 これが情報屋“紅の黒猫”であった。



「…さて、行きますか」



 フードを被り、その優艶な笑みを密かに浮かべ、マンションを出た。



「おせーぞ」



 マンションの地下駐車場。黒のプレジデントに乗った快成が瑞稀を迎える。タバコを吸いながら悪態をついていた。



「……行こうか」



 悪態をつかれても気にせず微笑み続ける瑞稀。快成は静かに車を走らせ始めた。










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