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誕生日プレゼント

20


やがて、大学受験。

私、まじめだから、受験勉強はしっかりやったわ。

源氏の君は、部活を秋に卒業しても、体育祭の応援団長をやったり、

合唱コンクールで指揮者をしたり、なんだかんだで遊んでいたわ。


「ちょっとはまじめに勉強しないと、浪人しても知らないわよ?」

って、しょっちゅう忠告してたけど、

ほんと、源氏の君って、飄々として、うまく生きる男ね。


21


私は、立教大学の教育学部、英文学科が、せいぜいだったわ。

ほんとは、早稲田の商学部に入りたかったけど、だめだった。

ところが、源氏の君ったら、ほかの大学は、ぜえええんぶ、落ちたくせに、

早稲田の文学部にだけ、受かったのよ!

その一年後、早稲田の文学部も、

きちんと勉強しなければ、入れないような試験内容に変わったけれど、

私たちの受験のときまでは、小論文さえうまく書ければ、誰でも入れたの。


22


早稲田の文学部の偏差値は、八十だったけど、そんなの大嘘よ!

どんだけ勉強しようが、できようが、

入れないひとは入れないし、

逆に天才なら、なんの勉強もしなくても、他の大学全部落ちても、入れたの。

源氏の君は、その試験方式の、最後の入学生だったわけ。


なんてラッキーなのかしら。

仏様に特別に愛されてるとしか、思えないわ。

あれだけ、挫折を知らない男っていうのも、ちょっとまれね。


23


果たして、私たちは、無事に大学に入学。


源氏の君は、すぐさま、文芸サークルに入った。

私は・・・

悩んだわ。

でも、結局、

一生懸命バイトして、お金を毎月、乗馬育成のための基金に払うことに決めたの。


立教の近くの、イタリア料理屋さん、「イルキャンティー・オベスト」で、働き始めたわ。


源氏の君のバイトは、家庭教師だった。

よくもまあ、あれだけ勉強しなかったくせに、家庭教師なんてやるもんね。

彼の人生は、ハッタリとカリスマ性だけでできていたわ。


24


大学に入りたての、四月の私のお誕生日に、

源氏の君は、東京タワーに連れて行ってくれたの。

「東京タワーってね、夜の照明が暖かくて、とても綺麗なんだよ?

かなちゃん、きっと気に入ると思って」


夜の東京タワーを見るのは、初めてだったわ。


本当ね。

朱色の照明が、優しくて、とても綺麗・・・。

源氏の君は、私の手を引いて歩いていく。

私、黙ってついていったの。


「かなちゃん!着いたよ!

ここ、穴場なんだ。東京タワーの全身が見えて、かつ・・・」

振り向いた源氏の君は、急に真顔になって、私の目をじっとのぞき込んだの。


「かなちゃん・・・?

どうして、泣いてるの・・・?」


そう言われて、気がついた。

ほんとだわ・・・。

なんで、私、泣いているのかしら・・・。


「なんでもない!ほら、また、ひとつ、歳食っちゃったな、と思って」

源氏の君は、優しい瞳で笑って、

「ほんとだね。かなちゃん、十九歳、おめでとう!」

と言って、おでこにそっと、キスしてくれたの。

素敵な夜だったわ。

そう・・・涙が出ちゃうくらい・・・。

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