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プロローグ

「さすがにヤバイでしょ。」

ため息を一つつくと、冷め切ったカフェオレを飲み干してあたしは呟いた。

最近独り言が増えたな、なんて思いながら煙草を取り出してくわえた所でまたため息一つ。


これもヤバイよな。

確実に最近煙草の本数が増えてる。

これじゃ禁煙なんてとんでもないってお話でしょ。

まあ、煙草やめる気なんてさらさらないんだけど。


どれもこれもあいつのせいだ。

完全な責任転換。だけど。

あたしのため息の理由は、絶対にあいつのせいなのだ。


ああ。もうやめよう。

考えても仕方のないことは考えても仕方がないのだ。当たり前だけど。


そしてあたしは本日10何本目かの煙草に火をつけた。


これでまた煙にごまかしてため息をつく。

煙草一本分で約6回のため息。

ため息一回で一つ幸せが逃げるのなら、あたしは一日に何十個の幸せ逃がしてるんだろうね。


はあ。まいったな。



あいつ・・・と言うのはうちの会社の濱本史人の事だ。

あたしと同じ年の男で、去年から営業2課の同僚で、友達で、そして。

そして・・・なんだろ。

そして「夢見がちなトラブルメーカー」


はんっ。こんなキャッチフレーズが似合うのは25歳までだろ。


30過ぎたようないい大人のキャッチフレーズじゃないが、本当にこいつは「夢見がちなトラブルメーカー」なのだ。


そしてあたしは。

そんな「トラブルメーカー」に引っ張りまわされてるってわけ。


そして今朝も・・・あいつはやらかしてくれたって訳だ。



「澤木さん!濱本から連絡はないのか?」

朝礼後のこと。兼田部長が見積もりを作ろうかとPCを立ち上げているあたしのデスクに来て言った。


ああ。そう言えば出社してないわね。

あたしは、目の前の濱本のデスクを見ながらのんびりと思った。


だって昨日寝たの3時なんだもん。眠いし。

だいたい、今日はまだあたし会社の電話に一本も出てないぞ。


「知りませんけど・・・会社に連絡ないんですか?」

「無いから聞いてるんだ!澤木さんに連絡来てないか?個・人・的・に」

兼田部長は大きな声をさらに大きくして言った。


わざわざ「個・人・的・に」って言う区切りに嫌味を感じるのは何故だ。

こういうわかりやすい嫌味には気がつかない振りをするのが賢明だわ。


「会社に来てない連絡が、どうして私に来るんですか。知りませんよ。」

兼田部長はじろりとあたしを見ながら。

「澤木さんは濱本と仲良しぃ~だからな。知ってるかと思ってな。」


はんっ。嫌な言い方。

何が「仲良しぃ~」だ。そんなの45才のおじさんが言ってもかわいくないってーの。


あたしが冷たい目で見ながら

「知りません。」

と言うと兼田部長は

「なんか連絡あったら俺に連絡しろといってくれ。」

とだけ言って席へ帰っていった。



それにしても。

濱本の奴~とうとう無断欠勤しやがって。


あたしは携帯をジャケットのポケットに入れて立ち上がった。


お手洗いへ。


部長があたしのほうを見ていたのは、しっかり把握しながら。




















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