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第三話〜罪人の糸〜

賊が村に押し入り、残虐の限りを尽くして、私の親……弟やお姉さんは私の隣で静かに寝ている、不器用な手当てが液体でにじむのはもう止まっている、どうしようもないこの悲しさを誰に伝えたらいいのか……、一つ言える事は……。

「私のそばから誰もいなくなった……」

家の扉が開く音がした、誰かが入ってきた、バリケードのつもりで椅子を置いていたが、なんの役にも立たなかった。

足音が私の隠れている暖炉に近づく。

「お母さん……お父さん……誰でもいい、助けて……」

暖炉に隠れたさいに棚を蓋にしていたが、その蓋がズルズルと音を立てて動き出したが。

「テメー!!よくも仲間を倒したくれたな、こんな燃え残りの家で何するつもりか知らねえが、仲間の仇だ!!いくぞ!」

木材が壊される音とともに乱闘の際に数々の家具が壊されている。

私は身体を震わせながら祈った。

人が倒れる音を聞くのは何度目だろう、蓋にしている棚に誰かがぶつかり棚が大きく揺れた。

「は…はは……この…この暖炉に宝が…俺の物に……」

棚が暖炉から離れ、できた隙間から荒息の賊が覗き込み、気持ちの悪い笑みを浮かばせた。

「ほら……極上品が…のこ…って……る」

そのまま倒れる賊、気を失ったのか?演技なのか?笑いながら倒れた賊を誰かが丁寧に運んだ、誰が運んだのか隙間から覗いたら、上半身裸だが鍛えられた肉体に数々の浅い傷や深い傷が残っている、だがどれ一つも血が流れていない古傷ばかり、先程の賊を無傷で倒したのだろうか?、裾が擦り切れ黒の革靴がボロボロ、英雄が立っていた。

この人は賊の仲間なのか?私は見逃してくれるのだろうか?。

賊を丁寧に並べ終えて、暖炉に歩み寄ってきた。

蓋が外され、私は果物ナイフを両手で構えた。

「誰かいるのか……」

「来ないで!」

私は相手を威嚇した、誰かも分からない相手を信用なんて今の私には出来ない。

相手が少しでも近づいたら私はナイフを振り回した、しかし、この無駄な抵抗はあっさりと振り回した両手を片手で止められた。

「落ち着きなさい、私はこの村の人々を助けに来たんだ」

私の手をしっかりと握りしめ、冷たくなっていた手が人の温もり体温を確かに感じている。

「信じても……いいの?」

相手はただ一回頷いただけ、それだけで今の私には十分だった、私は無意識に暖炉から飛び出し、相手に飛び込み泣いていた、相手はそれを嫌がらず何もいわないまま抱き上げて、家から出た。

「心配しなくてもいい、君は生きている、この賊達も」

家から出てあたり一面、数十名の賊の身体が並べられていた。

「ヒッ!!」

驚いて変な声を出してしまった、それを聞いた男が大きな口を開けて笑った。

「そうか、驚いてしまったのなら申し訳ない、だがこの騒ぎをおこした張本人を野放しには出来ない、今頃頑張って退治しているだろう」

「退治……あのビバを…そんなの出来やしない、アイツは数多くの追っ手を一人で振り切った怪物、だれも勝てない……」

歩を止め、私を下ろして、脱ぎ捨てていたタキシードを着ないで、胸ポケットから一本の黒い糸を取り出し自分の腕に結んだ。

「その退治しているのが化け物とかだったら、怪物と化け物……どっちが勝かな?」

ビバの雄叫びが村まで届いた。

「一体誰が戦ってるの?」

「オート・フレデリック・チュニク、聞いたことはないかい?」

地が揺れる。

「確か…撲滅した貴族のはず……」

「その娘が戦っているんだ、自分の作り途中のドレスで…」

「ドレスで?いったいどういう……!?」

私は男が先程腕に結んだ黒い糸が意志を持っているかのように動き出した、結ばれた糸は必死に向かいの山を指し示している。

「まだ生きているのですね、我が主よ……」

………………………

「ウオオオーー!!」

疑いたくなるほどのスタミナ、剣を振り回すたびに突風が吹く。

「どうした!そんなひょろひょろの体で何ができる!」

ビバの攻撃は時に木を一振りで切り倒し、地面に深々と刺さった刃を片手で抜き出した際に出来た地面の裂け目、樽を投げては切り刻み中に入っている酒に火をつけ、それがテントに燃え移り逃げ道をなくす。

「巨大な木偶の坊が何言ってるの?」

「ヌアアアーー!!、何も持たない女が俺様を侮辱するな!!」

対するクチュールは身に着けているドレス以外何も持っていない丸腰だが、ビバの剣を避けるときに黒ドレスの脚部が数本の束なった糸にほどけ、その束がクチュールの回避行動に助力していた。

「ほ〜ら、酒の雨だ」

ビバは穴をあけた酒樽を空に投げ上げ更にあたりを燃やした。

「やすい酒がドレスにつくじゃない、それに暑いし……」

あたりは更に燃え上がる。

「そうか、暑いか……それならもっと暑くしてやろうか?」

燃えたテントから熱された槍を取り出し投げつけてきた。

鉄の部分が真っ赤になっている槍がクチュールをかすめる、すると腕をかすめただけで怪我はしてないその腕のまわりの糸がうねり、暴れ、ほどけている。

「ただかすっただけでみっともない、ちょっと燃えただけで」

「気味の悪いドレスだな、まるで生きてるみたいだ、……ああ燃えている、思い出す、俺の住んでいた村も賊に襲われたんだ、暑かった……家が焼け、動物が焼け、友が焼け、顔が焼け、全てがこの炎のように燃え上がった、俺は人生の機転だとその時感じた、自らの体が燃え上がるように暑くなった、あの時の興奮を感じるために生き延びた俺は自らの顔を捨て、村を襲った賊の頭をこの手で葬り焼いてやった、そして更なる炎を見たいが為に俺は燃やす、人をマキに、酒で燃えあげ、家に狼煙を!!」

ビバの話を黙って聞いていたクチュールだったが、右腕部分がほどけて数本の束になった糸がビバの剣に巻きついた。

「あんたも…ただ自分の求めた物を得るために…誰もかまわず燃やしたと言うの?」

「怒ってるのか?たかが他人、村が一つ消えただけじゃないか」

ビバは剣に力を込めたが。

「う…動かない…」

クチュールのほどけている右腕からさらに少しずつほどけて、ビバの剣にまとわりついている。

「私はね…あんたみたいな他人を傷つけて、私利私欲の犠牲に家族を失った人たちを見るのが…」

剣にまとわりついている糸が剣の刃を砕いている。

「一番虫唾が走るのよ!」

剣先が糸で砕かれ地面に落ちた。

「ダハハ…、それで俺にどうしろと言うんだ?亡くなった人達を弔うか?土に埋めようか?死刑台で罪を償おうか?ダハハ…」

ビバは腰のナイフを取り出しクチュールに投げた、すぐに糸を回収して軽く避けた、まとわりついていた剣の刃はボロボロに。

「ただの糸じゃねえな……、テメーは何者だ?」

回収した糸はまた元のドレスに吸い込まれるように元どうりになおっていた。

「オートフレデリックチュニク、没落貴族の娘よ」

「オートフレデリックチュニク?……思い出した、確か俺と同じ……」

「人殺しよ」

あたり一面に燃えていたテントや木々が燃え尽き始め、ビバはボロボロの剣に酒を吹き付け点火した、自らの手が燃えているにも関わらず大きな声で笑うビバ。

「ダハハ…、その没落貴族の娘が母親のしでかした罪を償うために遠いとこからわざわざ出てきたって言うのか?こういっちゃあなんだが俺のしてることのほうがチュニクに比べたら小さい小さい、それほど貴様の親の遊び心で亡くなった人が多いんだよ」

クチュールは両腕を力を抜いてダラッと体勢を前屈みにすると、ドレスの両腕部分がほどけて、ほどけた糸は地面につくほど垂れ下がった。

「私は母の罪を償うためにきたんじゃない、あんたを倒すためにきたんじゃない、私は母が作り上げた黒ドレスを超えるドレスを作るため、糸を紡ぎにここにきたのよ」

「紡ぎに来た?ダハハ…、それじゃあその紡ぐために俺様を倒してみろ!」

ビバの巨体が剣の炎を浴びてクチュールを真っ二つにするため剣を構えて突進してきた、ビバは剣を振るつもりなどない、回転鋸に丸太を通すようにクチュールを切断するつもりだったが、クチュールは垂れ下げた糸の束を鞭のように後ろに伸ばしてから剣を双方から挟み込むように叩き込んだ。

そして使い慣れた剣が逆に切断されるようにバラバラに砕け散った。

「俺の剣が……」

ビバは立ち止まりこのまま炎で焼かれようとしていたが、自分の身体に纏っていた炎の代わりのようにあの黒い糸が巻き付いていた。

……………………………

「ひ…人殺し!?」

私は男の後ろを追いかけるようについていた。

男の名はコメルツ、私をあの賊から一人で助け出した人。

「我が主の母君にあたるチュニク様はある目的で容赦なく人をあるものに変えていったのです」

「あるもの?」

そこで、コメルツが何かを見つけた、それは馬の蹄に車輪の後、無理あり切り開かれて倒れている木々。

「まったくあの馬はてがつけられん、どうしようもない暴れ馬だ」

「それでコメルツさん…あるものとは……」

コメルツは襟に巻いている純白の布を私に渡した。

「それは……その布は我が最愛の妻と子で造られた糸で布にしたものです…」

「奥さんと子供が……一緒に造ってくれた大切な物なんですねその綺麗な布は」

コメルツは何も答えなかった、私は布をすぐにコメルツに返して、コメルツはそれを隠れるように襟元に巻いた。

その後、私はコメルツからあることを言われ約束した。

「今から見る物は見なくてもよいですが、見た後で後悔はしないで下さい」

山の頂上が赤く燃えていた、そこで私はオートフレデリック家の技を見ることとなった。

その光景はあまりにも奇怪で女神の裁きを見ているようだった、その女神は真っ白な肌とセミロングの髪に赤色の瞳、私より少し小さいその女神が指先から一本の糸を操り多くの罪を背負った罪人を黒い糸で覆い隠していた、クチュールの着ていたドレスがほどけて、すべての糸が指先の一本で操られビバの首から少しまた少しと包み込んでいた、刀身の折れた剣がビバの手元から離れ地面に落ち、持ち主は糸に持ち上げられ宙に浮く。

「体がまったく動かん……」

首胴腰腕手首脚。

ビバの体は糸に巻かれた青虫のサナギのように顔以外はのみかまれた。

「ビバ、あなたはもうこの世から消えて、新しく変身するの、そこで一つだけ聞きたいの……今の気持ちはどう?」

すっかり包まれたビバは悲しみも悔いることもしていなかった、これが村燃やしビバの最後の言葉となった。

「地獄で待って貴様が来たときは俺様が今度は裁いてやる、確実に地獄の釜の薪決定だがなこの没落貴族の生き残りが!!」

「罪人らしい一言、それじゃあ……さようなら!!」

クチュールの指が動きビバの顔も包まれた。

「私利私欲のために罪を背負いし罪人よ、その姿を新たな物となりて私に仕えよ」

ビバを包んだ糸が形を変えながら小さくなっている。

「その罪は黒く、肉は滑らかに、血は長さに、骨は束に」

何の音もしない、けれどビバを包んだ糸はビバとともに更に小さくまた小さく。

「綺麗さを求めて、不純物は絞りまた絞る、そこからできる黒い糸こそ罪人の罪を形にしたもの、オートフレデリッククチュール裁縫・黒の罪糸」

最後に糸はひねりながら伸び、クチュールが後ろを向いて指先の糸を指で引っ張ると、曲がり伸びひねられていた糸がクチュールのもとに戻り、バラけた兵隊が元の位置に戻るようにまた黒ドレスの形に戻った、そして操っていた手には黒い糸の束が握られていた。

その光景を始まりから最後まで見ていた私とコメルツさ……。

「素晴らしい、上達しましたね」

「拍手しながら出ちゃったよ」

「コメルツ遅い、いつまでかかってるの、はやくバビとエカを連れてきて」

「かしこまりました、我が主よ」

コメルツは焼け炭のテントで遊んでる馬を素手で捕まえに走った。

「ん〜なかなかいいのが出来たかな……ちょっと硬い…襟にでもしとこうかしら」

クチュールはビバで作り上げた糸を首に当てると、首回りの糸がそれを取り込み襟が出来た。

「ちょっと残った……そうだ」

次に破れた腕に当て、見事修復された。

「ふ〜……久しぶりの収穫、なかなか良かった」

私は木々の間からずっと見ていた。

「姫様、やっと捕まえました」

コメルツが手綱でまだ暴れている二頭を両手で引っ張っている。

「姫様、連れてきたのは良いんですが、キャリッジわ?」

クチュールが指差して真っ二つのキャリッジを発見、賊との戦闘で倒れなかったコメルツの膝が地についた。

「…外装…内装にもこってたのに……」

「私のせいじゃないエカとバビのせいよ」

二頭は横に首を振った。

「あ…あんた達二匹そろって」

「……姫様が手綱を取ってくれれば良かったので……」

「黙りなさい」

コメルツはため息をついた。

「姫様も馬に乗れればわざわざチャリッジを買わなくてすむんですよ」

「……分かってるわよ、ただ遅いのは嫌いなの」

「わがまま…」

「言ってない!」

奇怪な光景から一変、二人の小さな喧嘩が始まった。

「どうやって帰るつもりですか?」

「あんたが二頭一緒に乗ればいいじゃない」

「あの暴れ馬をキャレッジで固定してたからさばけてたんですよ、どっかに一頭逃げます」

「じゃあ私が乗れば問題ない訳ね」

「どうだか…」

数分後……

振り飛ばされたクチュールをコメルツが受け止めて何回目だろうか。

「あんた達!!主は誰かが分かってるの!!」

と言っても顔も向けない、近寄らないしまつ。

「あの暴走馬、帰ったら仕返ししてやる」

「どうするんです?」

「ん〜」

二人が悩み考えてすぐに思い出したコメルツ。

「……忘れてた」

コメルツは木々の間で隠れていた私をクチュールのもとに連れて行った。

「姫様、あの村の生き残りです」

近くでみると綺麗なお姫様、しかしまとっているドレスは数々の罪人の罪で縫われた品。

「でっ、この子をどうするの?」

私もビバのように糸にされるのだろうか。

「馬に乗れれば家まで送っていただいて、お礼をします、どうですか?」

コメルツがクチュールの許可なく話を進めている。

「……えっ!?それは私に聞いてるんですか?」

突然の質問に対処が遅れた。

「そうですよ……え〜と、お名前は……」

「メイト…クロース……メイト・クロースです、みんなはメイトと呼んでました」

「それではメイトさん、どうですか?」

コメルツは話を進めている後ろで。

「なにかってに話進めているの!」

と、口は動いているが声が出ていない。

「私でよければ……」

「おお!聞きましたか姫……どうしました?」

「なんでもない……」

クチュールは話から外されたと思い、着ているドレスの手直しをしていた。

「もちろん、姫様の許しがあればですが…」

チラッとコメルツの視線がクチュールに当たる。

「条件が一つだけ」

クチュールは襟元を完全にほどきバビエルの首に巻き付けた、首輪のように。

「あの馬に乗りなさい、それが出来なかったらいらない」

「姫様、こちらは頼んでる側ですよ、それにバビエルよりエカシドのほうが扱いやすいかと」

「どうなの?」

「話し聞いてないよこのわがまま姫」

バビエルは首輪が気に入らず、外そうと暴れている、手綱を巻いて固定している杭が抜けそうなほど。

「分かりました」

「良いのですか?」

「コメルツ余計な事は言わない」

メイトがバビエルに一歩一歩近くと暴れ回っていたバビエルが大人しくなっていく。

メイトはそっと手綱を手に取り、杭から外して、首輪に触れた。

「冷たい、これの元は人だった、でもあの人が糸に変えて作った物、コメルツさんが見せたあの布もまさか……」

メイトは首輪を引きちぎろうとしたが糸一本もちぎれない。

すると、横からクチュールが首輪をほどいてドレスの襟元に付け直した。

「どうも……」

「邪魔なら言ってね、貴重な糸をちぎられたら困るから」

バビエルが怒っているのか、耳が後ろに伏せて目が細くつり上がっている。

「落ち着いて、怖くない、怖くないから……」

これはバビエルに言っているのか、今の自分の心情なのか。

大人しくなっているバビエルの頭をなでながら背中に近づくと後ろから軽く押された。

「これは珍しい、あの二頭があの子になついているのか?」

「コメルツ黙ってなさい」

エカシドがメイトの背中を押して、バビエルはじっと乗るのを待っている。

「どうして主を差し置いてあの子になつくのよあの二頭わ」

クチュールが見ている中メイトは見事にバビエルに乗ることが出来た。

「それでは帰りましょう、姫様のお屋敷に」

コメルツは軽々とエカシドに乗り、クチュールを引っ張り上げて、前側に乗せ後ろにコメルツが手綱をとっている。

「人を猫みたいに持ち上げるな」

「ですが、どうやって乗るつもりだったんですか?」

「それは私の糸で背中に飛び乗っ…」

「はい帰りますよ」

「主の話を聞き流すな、この上半身裸体男がタキシードをマフラーみたいに巻いてないで着ろ!!」

コメルツはついて来るようにメイトに言うと、クチュールの糸が鞭となりエカシドを叩き、山を下った。

山から下り終えてそのまま村をコメルツはすぐに駆け抜けていったが、メイトは村に入った頃から時間がゆっくりと進んでいた。

村や家族と別れ、まぶたを閉じれば幻で家が戻り人が歩き、お話をしている、このまま閉じておきたい、家族と一緒にまだいたい。

「あっ…そうだ……」

メイトはバビエルの手綱を引っ張り、誰もいない自分の家に引き返した。

…………………………

村からそんなに離れていない草原でクチュールは身を震えさせながら怒っていた。

「あの村娘、バビエルを盗んだらただではすまさない、そして……寒いのよ!今の季節分かってるの!!」

「冬ですね、もうすぐ日が暮れます、更に寒くなるでしょう」

コメルツは後ろについて来ていると思い、村から出て森を抜けた所で気づいて、止まっている。

「そのタキシードをかしなさいコメルツ」

「何でですか?」

「少しでも寒さを防ぐ為よ…ん?」

クチュールの顔にひんやりとした粒が降ってきた。

「どうするの?……雪が降ってきたわよ!!もういや、バビエルほっといて帰りま…」

「誰かきます」

村から暗くなった森を抜けてコメルツに近づいてきたのは。

「スミマセン、家に大切なものを取りに行って遅くなりました」

「遅い!まったく……いったい何を取りに行ってたの?内容によっては褒美は下げるから」

メイトは首から何の装飾もない小さなペンダントを取り出して、中を開けて見せてくれた。

「私のお守りで家族の絵が入ってるんです」

「家族ですか、いいですね、幸せな絵をペンダントに入れてお守りにして、姫様もしてみませんか?」

クチュールは真剣な顔で。

「私に自慢の家族と言える人達がいましたかしら?」

「スミマセン、軽々しく言ってしまい……」

その後、コメルツは屋敷に馬を走らせ、後にメイトが後ろからついて行った。

クチュールの屋敷につく頃には雪も本降りになり寒くなるだろう、メイトは後ろを振り向いたが、見えるのは真っ暗な森と真っ白な雪だけだった。

もう少し書きたかったんですが季節に合わせたかったんでやめました。

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