~第一話~序章
これは、7つの黒ドレスにまつわるお話。
大昔、女王アリアンツが治める国、そこは乱もなく争いのないそれはそれは素晴らしい国でした。
しかし、その国にも終焉は訪れたのです。
1人の執事と黒ドレスの姫によって。
山岳部にある洞窟、そこに祀られ、二人の仕立て人に守られている黒ドレス。
「どうもこんにちは、ここに何用ですか?」
日本の巫女のような服装でゆらりと部屋の隅から出てきた女。
「話を聞きに?盗みに?どちらにしよ帰ってくれませんか?色染めの邪魔です」
洞窟の中に灯された蝋燭がゆらゆらと何度も揺れる、ここに入るため谷に作られた道はとても道とは言えないほど狭く、ところどころ崩れている道を歩いてきた。
「………」
「そうですか…いいでしょう、乾くまで暇ですし遊び心で話してあげます」
これは、7つの黒ドレスにまつわるお話。
大昔、女王アリアンツが治める国、そこは乱もなく争いのないそれはそれは素晴らしい国でした。
しかし、その国にも終焉は訪れたのです。
1人の執事と黒ドレスの姫によって。
周り一帯、木に囲まれた平和でのどかでひっそりとした村に火の手が。
「襲え!襲え!」
「盗める物は全て盗め、女と金いがいは倒してもかまわねえ」
逃げ惑う村人、それを追いかけとどめをさす盗賊、日々の平和な日常は一度他人に壊され、失われれば跡形もなく崩れ、消えてしまう。
「ビバ様、今日も大量です」
村を襲い、強奪のかぎりを尽くし、残りカス残さないつもりで村を襲わしたビバ。
「まだ足りんな…」
「そうですか…なら…」
「燃やせ…隠れている者共を引きずり出し、身ぐるみを剥ぐのだ」
盗賊達は一度引き、村全体を囲むように、片手に松明を持ち、再び村に近づいてくる、盗賊達の笑い声が響き渡る。
「お母さん…お母さん…」
すでに息絶えた母を抱きしめ、一つ家の中に身を潜めているが。
「来ないで…近づかないで…」
「ヒッヒッヒッ…どんな奴が出てくるか楽しみだ」
「ゆっくりと焼けよ、じゃないとタダの灰になっちまう」
そして、始まる。
「全てを焼け、手に入らぬものは全て燃えてしまえ!」
名のない村の終わりが。
そんな村に一つの馬車が村に向かっていた。
「姫様、情報によると最近荒れ始めた、ビバによるものだと思われます」
執事コメルツは姫が産まれた頃から執事として何十年と付き添っている、白髪に顔のシワが姫を見守っている年月を語るように刻まれ、老体とは思えぬ程の背筋に鋭い視線は先を見つめ両手に手綱を持ち、代々続いている名馬バビエル・エカシドを見事に操り、草原を猛スピードで走り抜ける。
「そう…で、ビバって奴はそんなに悪い奴なの」
「噂によりますと、なかなかの悪者らしいです、今度ばかりは姫様も苦戦するかと…」
「黙りなさい!私が盗賊ごときにまけるとでも?」
その時、姫が乗っているはずの馬車の中から黒い何かが飛び出しコメルツにじわじわと近づく。
「どちらにしよ、私が守り通します」
黒い物体はゆっくりと窓に滑るように入り窓が閉められ、姫の黒ドレスに戻ってきた。
「今回もいい糸が出来るといいわね」
主人公オート・フレデリック・クチュール、代々伝わるクチュール裁縫術で数々の服を作り上げ名家に成り上がり、豪邸に住んでいるが二人だけで住んで、ほとんどが空き部屋になっている。
景色が変わり辺りに木が見え始めた。
「もう少しです、そろそろ準備を…あれ?」
馬車の中は日差しが入らないようにカーテンで閉められているが、中の様子はなんとなく見える、その中に姫の姿はなかった。
強く馬車の屋根を踏み、気合いをいれる姫、着ている黒いドレスが風になびいているのか、動いているのか……装飾品の赤い線が鼓動しているかのように動いている。
「ドレス完成の為に…ひと仕事よ!急ぎなさいバビエル!エカシド!」
これが黒ドレス一作目の完成の第一歩となる。