プロローグ
「ご結婚、おめでとうございます」
この言葉を、私は一日に何度吐き出すのだろう。
私の目の前には、幸せの絶頂に酔いしれ、脳内がお花畑になっている男女が座っている。彼らは信じているのだ。結婚式こそが人生最高の瞬間であり、自分たちの愛は永遠に不滅だと。
――滑稽だわ。
愛なんてものは、所詮ホルモンが見せる一時的な幻覚に過ぎない。
かつて誠実さを売りにして倒産し、一家離散した私の実家のように、綺麗事だけで回るほど、この「ブライダル業界」は甘くないのよ。
私はフリーランスのウエディングプランナー、水指浄呂美。
私の仕事は、顧客に最高の結婚式を提供すること……だけではない。
たった一つの極上の式場。
同じ日付、同じ時間。
そこに、二組のカップルを予約する。
当然、そのままでは式は挙げられない。
だから私が手伝って差し上げるの。裏工作という名の「試練」を与え、疑心暗鬼の種を蒔き、愛の化けの皮を剥がして――どちらかが自分から「別れる」と言い出すように。
敗者はキャンセル料という名の現金を私に支払い、社会的に抹殺される。
勝者だけが、バージンロードを歩く権利を得る。
さあ、始めましょうか。
ウエディングプランナーが仕掛ける、地獄のデスバージンロード。
真実の愛以外の通過は認めない、愛の生き残りゲームを。




